回復術師ですが仕事と婚約者候補に追われています!

紗砂

文字の大きさ
8 / 39

7

しおりを挟む


ついに、王都へ戻る日がやってきた。
この4日間、色々とあったが収穫も多かった。
私の専属が2人増えたり回復術師の卵が増えたり……。


「ルーディア…またいつでもとはいかないと思うが…戻ってこい」

「ラナも一緒に帰ってきなさい。
じゃあ、元気でね。
ルーディア、ラナ…行ってらっしゃい」

「お父さん、お母さん…またすぐに会うことになると思うけど…。
また手紙を出すよ。
それと、体には気をつけてね?
……絶対、ラナと一緒に帰ってくるから。
まぁ、カーフィスは知らないけど」


カーフィスとは一緒に帰れるかは分からないという意味で口にした言葉だったが私はいつも通りに笑った。


「おい!?」


カーフィスの声を聞かなかったことにして私は別れの挨拶を交わす。


「お父さん、お母さん…行ってきます」

「行ってきます…!」

「あぁ…行っておいで。
必ず、無事に帰ってくるんだぞ」


お父さんとお母さんは私とラナを抱きしめてから送り出した。






























そして、王都に着くとライ先輩が出迎えてくれた。


「ルー、おかえり」

「ただいま戻りました、ライ先輩」


ライ先輩は挨拶を早々に切り上げると私の後ろに隠れているラナに目をやった。


「で、その子が回復術師の?」

「はい。
ラナと言います。
ラナ、こちらはライ先輩。
回復術師としては先輩なの」

「……よろしくお願いします?」

「よろしく」


ライ先輩は明るい笑みを浮かべたが、後ろからの足音にビクリと体を震わせた。


「ライ?
部屋に居ると言っていただろう?
探したじゃないか」

「げっ……トール…」


ライ先輩があからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
それなのに、相手の男は凍えるような冷たい笑みを浮かべているだけだった。


「…ライ先輩」


まるで逃げる様な体制をしているライ先輩に咎める様な視線を送る。
それに気付いたライ先輩は私の肩をガシッと掴んだ。
いつもよりも強いその力がライ先輩の必死さを示しているようで怖かった。


「…ルーディア、コレはおかしい。
頭のネジが数本外れているんだ。
そうでなければ僕を選ぶはずがない」

「…またそんな事を言っているんですか…。
トール様、私達はこれで失礼致しますのでライ先輩とごゆっくりとお過ごしください」


この方はトール様と言って、ライ先輩の契約者だ。
ライ先輩も突き放そうとはしているもののそこまで嫌そうという訳でもない。
まぁ、トール様が変わり者なのは認めるが。

だが、ライ先輩への想いは本物だ……と、私は思う。

だからこそ私は密かに応援をしていた。


「えぇ、そうさせていただきます……。
あぁ、そういえば…ルーディア様、陛下がお呼びでしたよ」

「……まさか、私にも回ってきたのですか?」

「さぁ…私の知るところではありませんので…」


トール様は国内有数の権力者である公爵家の息子だ。
絶対何か知っているとは思うが、わざわざここで問い詰める気力も起きなかった。

きっと話は私の婚約者についてなのだから。


「……カーフィス、アルト、あなた達はしばらく部屋で休んでいなさい。
ユリアには悪いけれど付いてきてもらいます」

「ん、分かった」

「はい」

「私でよろしければ…」


それぞれ私の言葉に返事を返すと私はユリアを連れて国王の執務室へと向かった。


部屋の前で息を整えると意を決して扉をノックした。
すぐに返事があり、中へ入るとソファに座らされる。
そして、私の婚約者候補だという者の写真を見せられた。


「候補者は4人、シェードと、レイト、ジェラルド、グランだ…」


シェード…まさか殿下まで候補の中に入っているとは。
殿下はこの国の第二王子だ。
ただし、第一王子が武闘派で将来は騎士団長になるという発言が元となり第二王子のシェード殿下が王太子となっている。


「何故殿下まで……」

「本人たっての希望でな……」


そう口にする国王の表情は苦労人の顔であった。
……お疲れ様です、と思わず言いたくなるほどには。

私が部屋を出ると、そこにはシェード殿下がいた。


「……殿下、余程お暇な様ですね」

「そうでもないがな。
父上の話はどうだった?」

「どうもこうも予想通りです。
婚約者候補の話をされました」

「だろうな」


私は文句の1つでも口にしてやろうかとも思ったがやめておいた。
それは、シェード殿下自身も婚約者を決めなければならず、大変な思いをしていると知っていたからだ。


「まさか、殿下まで候補に入っているとは思いませんでした」

「だろうな。
お前は特別鈍いからな」 


鈍い…どこが鈍いと言うのかが分からない。
あぁ、殿下の女嫌いという噂の事だろうか?
噂は当てにならないからな。


「大丈夫です、殿下。
殿下は少し腹黒くて態度が極端なだけです」

「おい待て。
ルーディア、お前今何を考えた!?」

「私は分かっていますから」

「おい!
変な方向に話を進めるのはやめろ!!」


怒られてしまった。
殿下は溜息を1度ついてからいつになく優しげに微笑むと私の前で膝をついた。


「ルーディア…俺はお前の事が好きだ。
愛している…。
だから、俺を選べ。
ルーディア」


私はそんな殿下の告白に固まった。

「…………は?え?
…冗談は好きではありません」

「私も嫌いだ。
まぁ、その返事は待ってやる」

「え……嘘、では…?」

「そんな訳あるか。
候補とはいえ、ようやくここまで来たんだぞ。
そんなつまらん嘘を口にしてどうする?」


そして私はそんな殿下の言葉に現実逃避したのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました

水上
恋愛
【全18話完結】 「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。 そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。 自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。 そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。 一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...