14 / 70
本編
11
しおりを挟むフォーリア公爵領へと到着すると、私は屋敷へと向かい、お母様とお父様に挨拶をします。
「お父様、お母様、お久しぶりです」
「あらまぁ……エリス、長旅ご苦労さま」
「ここまで来るのに疲れただろう。
もう休みさない、エリス」
お父様とお母様はどうしても私を関わらせたくないらしいです。
こうもあからさまなのはどうなのでしょうか?
「いえ、その前にお聞きしなければいけないことがありますから。
……もちろん、説明してくださいますよね?」
私は笑顔で圧力をかけます。
お父様とお母様はそんな私に対し焦ったような表情を浮かべ、視線をさまよわせています。
「……うむ。それは、だな……」
「えーと、ね……?」
これではいつまでかかるか分かりませんね。
「お父様、お母様……私は反乱を起こしたことを怒っているわけではありません。
ただ、反乱を起こす前にあのバカ王子の名を地に落としたかったのです」
私はこの程度で終わらせることについて怒っているのです。
ただ、反乱だけで終わらせてしまえばあのバカ王子は何も苦しまないでしょう?
私の大切な者を傷付けたあのバカにはその程度でやられてしまっては困るのです。
「それもそうだな……。
時期をもう少し遅らせるか」
「えぇ、そうね。
まずは、噂を流しましょうか。
今流れているものに加えもう一つ……。
あの二人はフォーリア公爵家を怒らせた。
あの二人のせいでフィーリン商会は店舗を撤退しようとしている、とでもね」
本店の撤退に関しては本当のことなので嘘とも言えませんね。
フォーリア公爵家を怒らせたのは本当のことですし。
アリスの件は既に多くの人達に知れ渡っているようですし、説得力もあります。
「お父様、アリスはどちらにいるのでしょうか?」
「客室を用意している。エリスを案内してあげてくれ」
「承知致しました。エリスお嬢様、こちらにどうぞ」
「えぇ。
お父様、お母様、失礼致します」
私は退出すると、メイドの案内でアリスのいる客室へと向かいます。
アリスは私がここにいることに驚くでしょうね。
そう考えると思わず笑みが零れます。
「アリス、怪我は大丈夫ですか?」
「エ、エリス様!?
何故ここにいらっしゃるのですか……!?」
「アリスが重症を負ったと聞きましたから。
それより、傷の具合はどうですか?」
案の定、アリスは私の登場に狼狽えています。
ですが、その肩に見える包帯から見て、肩から首元辺りまでやられたのでしょうね。
……女性を傷付けるなど、許されることではありません。
アリスに傷が残りでもしたらどう責任をとってくれるのでしょうね、あの王子は。
少なくとも、私は許すつもりはありません。
たとえ、アリスが許そうともそれは変わらないでしょう。
「問題ありません。
エリス様にご心配していただく程の傷ではありません」
嘘ですね。
包帯が巻いてある範囲からしてかなりの傷のはずですし、まだ血が滲んできているのは、それだけ深い傷だったということです。
にも関わらずその言葉とは、本当に困ったものです。
「……分かりました。では、明日また来ます」
「はい。ありがとうございます、エリス様。
ご心配お掛けしてしまい、申し訳ありません」
アリスは私にお礼の言葉と共に謝罪の言葉を投げかけました。
私としてはそんな言葉は要らないのですが……。
「アリス、申し訳ないと思うのでしたら早く回復して仕事に復帰してください。
あなたがいないと困りますから」
「っ……はい!」
アリスは嬉しそうに微笑みました。
この言葉で合っていたようです。
私はアリスのいる客室から退出すると、ルーファスにすぐに商会の方へ連絡し、腕の良い医者を送るように頼みました。
王都からここまではさほど時間はかからないので明日までには来てくれると願いましょう。
「お嬢様、危険なことはしないでくださいね!」
「ルエル……危険なことはしません。
ちゃんと考えていますから」
「それでもです!
お嬢様は私達のようなメイドのためにご自身が傷付いても良いというような考えですから心配なんです!」
私の幼い頃のこともよく知っているルエルは、今回も私が無茶をすると思っているようです。
あのバカ王子と関わってすぐの頃はそれこそ、倒れる寸前のところまで自分を追い詰めましたし、それが悪いのでしょうが。
今は自分だけでどうにかしよう、などと馬鹿げた考え方はやめたのでもう無茶はしませんが。
そう言ってもルエルは聞いてくれません。
「もう……それは昔の話でしょう?
今はそんなことしません」
「お嬢様のそういう言葉だけは信用出来ません!!」
……元はと言えば私が悪いのですからここはルエルの好きにさせておきましょう。
どうせ、今からはお母様やお父様と情報交換をする予定でしたし。
結局その日一日、ルエルは私から離れることはありませんでした。
どれだけ心配性なのですか。
0
あなたにおすすめの小説
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる