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甲斐編
閑話・卵食べたい
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卵食べたい。
もっと言うと私は、温泉卵が食べたい。
ここは、温泉街、下部温泉の帰り道だ。大きな街とは言えないが、それでも湯治などで有名なだけあってそこそこの賑わいを見せている。
だが温泉卵はどこにも売っていない。
仕方ないんだよな、温泉卵、と言うかそもそも食用の卵が世間に流通したのは1603年から江戸時代ごろと言われている。
鶏自体は結構前から流通しているのに、この安土桃山時代では「卵を食することを肯定する文化」は出回って無いんだ。
その理由として、794年~の平安時代に伝えられた『日本霊異記』には、「鳥の卵を食べると悪いこと(祟り)が起きる」などといった記述が残っている。
仏教もそれに深く関わってくる、たまごを食べること=殺生とされていおり事実、江戸時代より前の文献には、「たまごを食べた」という記録があまり残されていない。
それほど卵食は罪だったのだな、アホらしいことこの上無いが。
私の予想だが、史実で一向宗は信長によって勢力を大きく縮小されている。縮小された一向宗、ひいて仏教勢力に変わり大きな宗教勢力になったのがキリスト教だ、勿論キリスト教では西洋文化に則り卵の食事が大っぴらに許されている。
カステラとかもその1つだな、まぁ普及はそんなにしていないからまだ庶民にとっては高級品の1つだろう。
さて、そんな訳では卵はこの日本で未だ忌み嫌われているものの1つだ、当然だな。仏教勢力が幅をきかせ、キリスト教が広まって無いんだから。
これは単純に知識として覚えていたことだが、卵が高級品というイメージを脱却したのは昭和30年ごろからだ。
卵に含まれる栄養価が重視しだされ、今では庶民の食べ物として定着している。
食いたいんだよなぁ、卵かけ御飯とか食ってみたいよ。最近我慢をしなくなって来たせいかなおさら食べたくなって来ている。
この時代に転生してから食えなくなったものは山程ある、チョコレート、ハンバーグ、ステーキ、自分で試行錯誤して作ろうともしてるんだが上手くいかない。
仕方が無いんだ、台所で料理を作ると言うのはあまり評判がよろしく無い、醤油とかは作れたんだがなぁ。
城主になったら色々と出来ることは広まったのだが、それでも風聞があるので止められている。
と言うか妻に止められた、その辺りはおいおい話すとしよう。
「ご隠居様?」
「あぁ幸村か、なんだ?」
「いえ、何かお考えのようでしたので」
「うむ、少しな。」
勿論、幸村にも教えられん。困ったものだ、1人でコッソリやらねばならん。
だがそんな期間は無い、幸村を撒くということはできなくは無いが幸村は悲しむだろう。論外だな、私は人でなしでは無いのだ。
やはりフロイスか、南蛮の商人に頼んで持ってきてもらおう。
温泉卵を知っているかどうかはわからないが、卵さえ手に入れば良いのだ。問題無い筈だ、いずれ機会があれば呼んでやろう。
◇◇◇◇
「おぉ、フロイス!感謝するぞ」
「いえ、ご隠居サマ、この程度、ありません、造作も」
フロイスがいつものようにそう答える、幸村も慶次も困り顔だ。そりゃそうだ良く分からない小包を護衛対象が受け取っているのだからな。
フロイスもそんな2人を見て困惑している、いや本当すまん、ごめんよ...
で、ここからどうやって2人きりになるかなんだよな。
今までの旅を振り返ることにする。
今更なのだが、護衛が完全に外れたことなどほとんど無かったような気がする。
護衛と言うか供回りは基本的に幸村がしてくれていた。
慶次はこの旅で食糧や宿の手配をしてくれる人間だ、幸村だと舐められる可能性もあるからな、慶次の方が良い。
と言う訳で幸村と一緒にいることが多かった。
なるほど...
うん、これは2人から逃げるのは不可能だ。
撒くしか無い!
人でなしになるのは嫌だが、私は卵が食いたいんだ。もう我慢できない、なんとか上手い感じで撒けないかな?
撒くには外部の人間の手助けがいる、そう、フロイスの!
フロイスは戦闘は出来なさそうだが気は効きそうだ、故に私の要望を察してくれるだろう。
私はフロイスに必死で目配せをする。
頼むフロイス、2人をどうすれば引き離せるか教えてくれ!
フロイスは私の様子がおかしいことに気づいたようだ、何度か私の様子を確認し、確認し...
ニッコリと困ったように笑った。
あぁぁぁぁぁ気を使わせてしまったぁぁぁぁぁ!!!!
すまんフロイス、全く伝わっておらん!
「ご隠居様...どうかされましたか?」
声をかけられた、うんごめん見苦しいわな。
鏡など無いのでわからないが、私は今逆海老反りをして悶えている。
相当見苦しいだろう。
そんなことを思い、体を起こした瞬間、視界が白に染まった。
担がれた、煙玉だと気づいた瞬間に私は柔らかい感触に包まれて運ばれ出す。
お姫様だっこをされているようだ、私も良い歳なんだから、恥ずかしいな。
この感触、お藤か。
風切り音が聞こえ、爪のようなものが顔を掠めた。なんだ今の熊みたいな手は!
慶次かな、近くにいたのはフロイスだが、彼は宣教師だ、戦うことは不得手であろう。
だが慶次が刀や槍を使わないとは...
それに位置的にもおかしいよな、フロイスの方から飛んで来たぞ。
まぁ煙に紛れて方角を間違えたのだろう。
「ご隠居様、貴方様の望みを叶えて差し上げましょう」
声をかけられた気がした、顔を上げると、お藤がいた。
やっぱりお藤か、お藤何してんの?
お藤に連れてこられたのは、下部の温泉であった。私は小包を持ちながらお藤に運ばれていただけであった、私と幸村が歩いた半分ぐらいの刻で着いたな。
流石は忍び、強いわ。
「お藤、良く私の考えがわかったな。」
「ご隠居様のお考えなら、なんでも。ご隠居様が温泉に行きたそうな顔をしておられたので、何をするかまでは私には計りかねますが...」
そんな顔あるのか?まぁいいや。
流石、と声を上げて肩を叩く。お藤も嬉しそうだ。
それにしても、慶次と幸村とフロイスを置いてきてしまった、大丈夫なのかな?
ま、フロイスはともかく慶次も幸村も優秀だ、そのうちここにたどり着くだろうよ。
「さて、では早速温泉卵を作ろうか!」
もっと言うと私は、温泉卵が食べたい。
ここは、温泉街、下部温泉の帰り道だ。大きな街とは言えないが、それでも湯治などで有名なだけあってそこそこの賑わいを見せている。
だが温泉卵はどこにも売っていない。
仕方ないんだよな、温泉卵、と言うかそもそも食用の卵が世間に流通したのは1603年から江戸時代ごろと言われている。
鶏自体は結構前から流通しているのに、この安土桃山時代では「卵を食することを肯定する文化」は出回って無いんだ。
その理由として、794年~の平安時代に伝えられた『日本霊異記』には、「鳥の卵を食べると悪いこと(祟り)が起きる」などといった記述が残っている。
仏教もそれに深く関わってくる、たまごを食べること=殺生とされていおり事実、江戸時代より前の文献には、「たまごを食べた」という記録があまり残されていない。
それほど卵食は罪だったのだな、アホらしいことこの上無いが。
私の予想だが、史実で一向宗は信長によって勢力を大きく縮小されている。縮小された一向宗、ひいて仏教勢力に変わり大きな宗教勢力になったのがキリスト教だ、勿論キリスト教では西洋文化に則り卵の食事が大っぴらに許されている。
カステラとかもその1つだな、まぁ普及はそんなにしていないからまだ庶民にとっては高級品の1つだろう。
さて、そんな訳では卵はこの日本で未だ忌み嫌われているものの1つだ、当然だな。仏教勢力が幅をきかせ、キリスト教が広まって無いんだから。
これは単純に知識として覚えていたことだが、卵が高級品というイメージを脱却したのは昭和30年ごろからだ。
卵に含まれる栄養価が重視しだされ、今では庶民の食べ物として定着している。
食いたいんだよなぁ、卵かけ御飯とか食ってみたいよ。最近我慢をしなくなって来たせいかなおさら食べたくなって来ている。
この時代に転生してから食えなくなったものは山程ある、チョコレート、ハンバーグ、ステーキ、自分で試行錯誤して作ろうともしてるんだが上手くいかない。
仕方が無いんだ、台所で料理を作ると言うのはあまり評判がよろしく無い、醤油とかは作れたんだがなぁ。
城主になったら色々と出来ることは広まったのだが、それでも風聞があるので止められている。
と言うか妻に止められた、その辺りはおいおい話すとしよう。
「ご隠居様?」
「あぁ幸村か、なんだ?」
「いえ、何かお考えのようでしたので」
「うむ、少しな。」
勿論、幸村にも教えられん。困ったものだ、1人でコッソリやらねばならん。
だがそんな期間は無い、幸村を撒くということはできなくは無いが幸村は悲しむだろう。論外だな、私は人でなしでは無いのだ。
やはりフロイスか、南蛮の商人に頼んで持ってきてもらおう。
温泉卵を知っているかどうかはわからないが、卵さえ手に入れば良いのだ。問題無い筈だ、いずれ機会があれば呼んでやろう。
◇◇◇◇
「おぉ、フロイス!感謝するぞ」
「いえ、ご隠居サマ、この程度、ありません、造作も」
フロイスがいつものようにそう答える、幸村も慶次も困り顔だ。そりゃそうだ良く分からない小包を護衛対象が受け取っているのだからな。
フロイスもそんな2人を見て困惑している、いや本当すまん、ごめんよ...
で、ここからどうやって2人きりになるかなんだよな。
今までの旅を振り返ることにする。
今更なのだが、護衛が完全に外れたことなどほとんど無かったような気がする。
護衛と言うか供回りは基本的に幸村がしてくれていた。
慶次はこの旅で食糧や宿の手配をしてくれる人間だ、幸村だと舐められる可能性もあるからな、慶次の方が良い。
と言う訳で幸村と一緒にいることが多かった。
なるほど...
うん、これは2人から逃げるのは不可能だ。
撒くしか無い!
人でなしになるのは嫌だが、私は卵が食いたいんだ。もう我慢できない、なんとか上手い感じで撒けないかな?
撒くには外部の人間の手助けがいる、そう、フロイスの!
フロイスは戦闘は出来なさそうだが気は効きそうだ、故に私の要望を察してくれるだろう。
私はフロイスに必死で目配せをする。
頼むフロイス、2人をどうすれば引き離せるか教えてくれ!
フロイスは私の様子がおかしいことに気づいたようだ、何度か私の様子を確認し、確認し...
ニッコリと困ったように笑った。
あぁぁぁぁぁ気を使わせてしまったぁぁぁぁぁ!!!!
すまんフロイス、全く伝わっておらん!
「ご隠居様...どうかされましたか?」
声をかけられた、うんごめん見苦しいわな。
鏡など無いのでわからないが、私は今逆海老反りをして悶えている。
相当見苦しいだろう。
そんなことを思い、体を起こした瞬間、視界が白に染まった。
担がれた、煙玉だと気づいた瞬間に私は柔らかい感触に包まれて運ばれ出す。
お姫様だっこをされているようだ、私も良い歳なんだから、恥ずかしいな。
この感触、お藤か。
風切り音が聞こえ、爪のようなものが顔を掠めた。なんだ今の熊みたいな手は!
慶次かな、近くにいたのはフロイスだが、彼は宣教師だ、戦うことは不得手であろう。
だが慶次が刀や槍を使わないとは...
それに位置的にもおかしいよな、フロイスの方から飛んで来たぞ。
まぁ煙に紛れて方角を間違えたのだろう。
「ご隠居様、貴方様の望みを叶えて差し上げましょう」
声をかけられた気がした、顔を上げると、お藤がいた。
やっぱりお藤か、お藤何してんの?
お藤に連れてこられたのは、下部の温泉であった。私は小包を持ちながらお藤に運ばれていただけであった、私と幸村が歩いた半分ぐらいの刻で着いたな。
流石は忍び、強いわ。
「お藤、良く私の考えがわかったな。」
「ご隠居様のお考えなら、なんでも。ご隠居様が温泉に行きたそうな顔をしておられたので、何をするかまでは私には計りかねますが...」
そんな顔あるのか?まぁいいや。
流石、と声を上げて肩を叩く。お藤も嬉しそうだ。
それにしても、慶次と幸村とフロイスを置いてきてしまった、大丈夫なのかな?
ま、フロイスはともかく慶次も幸村も優秀だ、そのうちここにたどり着くだろうよ。
「さて、では早速温泉卵を作ろうか!」
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