戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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越後動乱編

やらかした

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「ご隠居様、鬼小島弥太郎様が示し合わせた場所に到着しました。弥太郎様はこちらに向かって来ております!」

 やべぇ...弥太郎殿より先に到着しちまったよ。

 なんで先陣の弥太郎殿より中後陣の我々が先に着くんだよ...おかしいだろ?

 一体どうしてこうなったのか、私にもわからない。

 慶次も、私について来てくれた兵士たちもやる気ありすぎんだろ...

 足軽は鬼のような形相で大地を風の如く走り、馬はその身を風に変え猛る。めちゃくちゃな行軍速度だった、中国大返しってこんな感じなんだろうな。

 ちょっとって言ったよな、私!?

 ほんの少しで良かったんだ、私が道を間違えたから少しだけ早く着こうとしただけなんだ。

 なのになんでどの上杉勢よりも早くついて陣地構築も終わってんの、しかも士気も高いし。

 絶対におかしい、長くもそれなりに険しい道を通った筈だ。士気と言うものは一般的に兵の体力に直結する。

 体力が無くなれば元気が無くなる、自明の理って奴だな。

 だが兵はやる気十分、私が気を使って兵に座っても良いとふれを出す始末だ。

 戦の最中に息切れでもされたらたまらないからな。

 その後、謙信殿も到着された後に来たのが弥太郎殿だ。謙信殿が到着する少し後か同じくらいにこの地に到着するよう時間を調整していたのだが完全に狂ってしまった。

 怒ってるだろうなぁ...

 ちなみにこの陣内には柿崎影家殿もいる、困った話、いや困らないのだがこの男は道を間違えたと言って戯けた私を全く責めなかった。

 それどころか私が言うことなすこと全て真顔で頷くばかりだ、うんごめんね本当...絶対怒ってるよね?

 上杉勢のヤクザみたいなメンツの中でも更に厳つい若頭みたいなこの男は、何かに納得するように顔を頷けていた。

 正直めちゃくちゃ怖い。

 「輝宗様!何故勝手に道を変更なさったのですか!!」

 怖い人増えた...

 陣内にドカドカと入り込み、顔から出る汗を拭きもせず現れたのは鬼小島弥太郎殿だ。黒い全身鎧がてかてかと光っている。

 ちなみにこの陣中にいる面子は護衛を除けば3人だけだが、鎧姿では無いのは私だけだ。

 「すまんな、道を間違えてしまった。」

 「間違えたなど、そんな理由の筈もありますまい!あれ程の我々にお教え下さればご助力も叶ったものを!」

  カンカンだ、顔は真っ赤でいかにも血糖値がヤバそうな顔をしている。

 仕方ない、頭を下げるしか無いか?

 こう言ってはなんだが私の謝罪スキルは見事なものだぞ?

 「そのぐらいにしておけ、自らの未熟を輝宗様にぶつけるな。上杉の恥ぞ。」

 そう思っていた私に飛んで来た援護は、影家殿からだった。

 「何を申されますか!」

 「何を申されるも何も無い、輝宗様は軍の全権こそ握っておいでだが細かい指示は我らに一任下さった筈だ。」

 「それは戦場での指揮の話だろう!輝宗様は初陣故我らに指揮を任せるしか無いのだ!」

 「?そんなこと誰が言ったのだ。」

 「!!」

 弥太郎殿の目が頼りなさげに動く、あれなんで弥太郎殿と影家殿の言い争いになってるんだ?

 私が怒られる奴じゃ無いの?

 「戦場へと至る道筋、先陣ならば軍の為を考え最も適当なルートを見定めるが役目。それを前から決まっていたからと言って怠りそれを輝宗様の非にするとはどういうことだ!」

 それは...まぁ、そうなんだけどさ。

 「この道筋は確かに軍議において決まっていたことだ、だが決められたことにのうのうと従うのが貴様の役割か?違うであろう!」

 「そ、それは・・・・」

 影家は既に激昂していた、その威圧に弥太郎の身が竦む。

 私は平静な顔を装っているが内心冷や汗ものだ、人と言うものは自分が当事者では無いうちは修羅場でも落ち着いてられるものなのだな。

 「納得...行きませぬ!」

 あ、弥太郎殿行っちゃった。

 「申し訳ありませぬ、輝宗様。身内の恥を晒し申した。」

 「いえいえ、気にしておりませぬ。」

 「弥太郎も20の半ば、殿も経験を積ませる為に某の側につけたのでしょうが先陣を任せるのは荷が重かったようです。」

 「うちの慶次や幸村も歳は近い、良い経験になります。」

 「輝宗様、貴方はうちの弥太郎を鍛えて下さる為にこうして下さったのでは?この失敗は弥太郎にとっては厳しい経験でしたが軍全体の損失はありませぬ。」

 「なんのことやら、とんとわかりませぬなぁ。」

 「感謝しますぞ、某もこの戦が最後になるやも知れませぬからなぁ・・・・」

 そう言って、上杉最強の猛将、柿崎影家は笑った。

 影家殿はもう歳は60を超えている、この世界で60は十分に爺だ。

 平均寿命が50の世界だぞ?なんで戦場に立ってるのかというぐらいだ、余程この戦が心残りと見える。

 終わらせてやりたいなぁ...

 「輝宗様、今川より使者が来ております。」

 「使者?」

 影家殿と和やかな雰囲気になっていると、使者が来たと陣地に駆け込んで来た。

 今川からの使者?あ、お藤が行ってたのかな?

 最近見ないと思ってたんだ。

 「ご隠居様、遅参、申し訳ありません。」

 「気にするな、息子の役に立ってくれているという証拠だ。使者と聞いたがどういうことだ?」

 お藤が上杉方で正式な使者として現れたことは無い、その気になれば春日山城なんてガバガバも良いとこだからだ。

 「ご隠居様の武者鎧を準備するのに手間取りまして。」

 「げっ」

 そこにあったのは、南蛮鎧だった。

 高級な赤マントに施された金色の刺繍と真っ黒な鎧は私には派手すぎて少し...敬遠したい代物でもある。

『南蛮鎧』

 織田信長が装備していたとされるその鎧は、銃弾をも弾くとされる安土桃山時代の当世具足の一種。西洋から輸入された甲冑(南蛮具足)の胴に、草摺、袖等を付ける等の改造を施した。前後2枚の鉄板から成り、胴の下端が尖り、前面中央部が鋭角的に盛り上がっているのが特徴だ。

 時代劇とかで信長が着けているイメージが強いが、徳川家康も着用していると言われており家臣に下賜もしている。

 以上、解説ハンゾー知識終わり。

 「ご隠居様の偉大さを示すには少し華美さが足りぬかも知れませんが、これもまたご隠居様の慎ましさなのでしょう。」

  いや、これで華美さ足りないの?そういやお前黄金の茶室とか作ってたな。

 派手好きは相変わらずか。

 「我らも来ておりますぞお藤殿、ご紹介が無いのは些か傷つきますな。」

 「俺らがいなくてどうするんだ!やってやるぜぇ!!」

 「左近!十兵衛!」

 そこにいたのは、明智十兵衛光秀と島左近。

 私の忠実な家臣たちであり、この戦国最強クラスの武人2人が、私の前に姿を現していた。
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