歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました

上日月

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近くて、遠い④

拓真の言葉はそのあとも全然止まらなくて、私までこの言葉たちには真剣に向き合わないと、って思えてくる。

「俺は鈴子がいなきゃ、一生恋とか知らないまま、生きてたと思う」

(……拓真が生きる世界ではそれが当たり前だ。何のしがらみもなく、自由に人を好きになることなんて出来ない。それは分かる。でも、何で?私なの?)

突然の出来事に思考と感情は置き去りにされていた。拓真はそんな私に寄り添うように、ゆっくりとその言葉をくれた。

「鈴子だから。恋、できたんだ」

(……いや、そんな、急に、恋とか言われたって……)

「俺がここに来れるのは、今日で最後になる。鈴子は良いの?これが最後になっても」

(いやだ、いやだ、いやだ………

ああ、そっか。私は拓真みたいになりたかったわけでも、何者かになって拓真を超えたかったわけでもない。ただ、もっと一緒にいたかったんだ。離れたくないって思うのが、好きってことなの?これが、恋なの?)

「ちゃんと言葉にしてくんなきゃ。こればっかりは、いくら付き合いの長い俺にもわかんないよ?」

私は俯きながら手にグッと力を込めて、必死に自分の内にある言葉を捻り出した。

「……ごめん。なんか、私、拓真のこと、好きっぽい……」

すると、拓真は俯いた顔を覗き込みながら、うんと大きくなった手を、私の頭にポンと落とした。

「もーう。バカだなあ……好きにごめんとかないだろ?」

もう、私はさっきみたいに、拓真のほころんだ顔を真っ直ぐとは見れなくて、俯いたまま、視線だけを、わずかに上げてみせる。

「ほんと、そういうとこ、昔のまんま……」

「お前は……うん。すごく、大人になった」

(え?何?髪?メイク?私、大人になれてるの?)

ずっと拓真だけが先へ、先へと進んでいる感じがしていた。だから、その言葉がこのまま飛び立っていけそうなくらいに嬉しくて、私はまた幸せを噛み締めるように視線を落とした。

「じゃあ、また、連絡するから」

椅子を引く音も、ガラガラとドアが開閉する音も、すごく遠く聞こえた。

そして時計の針がまた一つ、また一つと動くたびに、すべての音がはっきりしてくる。たった五分の間に起きた出来事が、まるで夢みたいに信じられない。

でも、普段なら私の鼓動は、こんなに、まるで暴れ回っているみたいに、早いわけがない。試しに頬を触ってみると、今の季節では考えないくらい、このまま火が出そうなほどの熱さだった。

(私、本当に好きって、言っちゃったんだ……)

今日、生まれて初めて、好きな人に好きだと伝えた。やっぱり、どうしても信じられないと、そう伝えた自分の口まで手で封じた。

(え?ちょっと、待って。連絡?連絡するって言ったよね?いや、いや、いや!そこは、まず連絡先交換からじゃん~!?)
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