あらゆる封印を作ったり解いたりできる天才結界士と封印から解放された魔王様 ~追放されたので、魔王の味方をする事にしました~

石狩鍋

文字の大きさ
5 / 11
第1章

第4話 港町と天才結界士と魔王

しおりを挟む
「と、当時より大きくなっている……」
「そうなのか?」
「うん、あの時は本当に小さかったのに」

 どれくらいだったのかは知らないが、マギアが驚いた顔で言うのであれば、相当な物だったのだろう。

 港町カスタロット。
 東から、西から、南から、北から――世界全土の至る所から物資や商品が運ばれる世界一の規模を誇る港町だ。
 目的の物がこの港町から探しても見つからなければ世界には存在しない、とすら形容される程栄えている。

 実は俺も初めて来たのだが、これほど大きな物だとは想像していなかった。

「……」

 マギアは何かソワソワしていた。

「少し、見ていくか?」
「ば、馬鹿いわない! 私達の目的を忘れた訳じゃないでしょ?」
「声震えてるぞ」

 いつもの図星をつかれた表情。この時の顔は本当に可愛い。
 それはさておき、確かにマギアの言う事は一理ある。のんきに観光なんてしていたら、いつ解除がバレるか分かった物ではない。

「そ、それに! この程度の港街なら、今後いっぱい見る事になるでしょ? なら今ここで、立ち止まる必要もないよ」
「ここ、世界一の規模だぞ?」
「……と、とにかく! 私達には時間がないんだ。それに、見たいのはお前だけでしょ? 魔王の命令には素直に聞く! わかった?」
「はーい」

 見たいという顔をしているのはお前でしょうが、と言いたかったが心の中で止めておく。
 実際俺も少し見て回りたい気持ちはあったからである。
 マギアに図星をつかれ返されるとは思いもしなかった。

「じゃ、船着き場にいくか」
「ええ、さっさと行くよ!」

 眼を細め、ちょっと悔しそうな顔をする。『なんで食い下がらないのか、もし反抗してくれたら見て回っても良かったのに』みたいな顔をしている。バレバレだ。
 素直になればいいのになあ、と俺は思いつつ、船着き場へと向かった。


 〇


 船着き場に行くと、そこでは船員たちが世話しなく働いている。
 積まれた荷物を降ろし、商品になるかどうかの鑑定が繰り返し行われる。
 その様子は見てて楽しいのだろうか、周りには見物人が群がっていた。

 俺達には興味もないが。

「ちょっといいか?」
「あ? どうした兄ちゃん」

 カウンターの方で作業をしていた大男に声をかける。
 なんだか機嫌が悪そうな返事だったが、スルーして話を続ける。

「ソーディリア大陸の方に行きたいんだが、船は出ているか?」
「ソーディリア大陸……あぁ、南方の大陸か。出てはいるが、今日はもう船を出さねぇぞ」
「何?」
「ど、どういうこと!?」

 マギアも意味が分からなかったのか反応する。
 今の時刻はまだ昼頃、頻度は少なくとも、夜には必ず船を出している物だと思っていた。
 なのに出せない? どういうことなのか

「何か理由でも?」
「見ての通りだ、もしかして兄ちゃんら、港町ここは初めてか? なら無理もねえか?」
「御託はいい、速く説明してくれない?」
「何だこいつは、一々口が悪いが」
「き、気にしないでくれ」

 魔王故なのだろうが、マギアはつい強く言ってしまう事が多い。
 俺はともかく、他人にはせめて言葉遣いには気を付けてほしい物だ。
 機嫌を損ねられてしまっては元も子もないというのに。

(少し黙ってな)
(魔王に向かってなんていい方を!)
(はいはい、説教は後で聞く)

 一先ずマギアを黙らせる。

「それで、出さないというのは?」
「ああ、今は船卸祭りの時期でな」
「船卸祭り?」
「ああ、周りを見れば色んな貿易船が停泊してるのが分かるだろ? 何時もより今日は沢山の品が運ばれる時期なんだ。作物はもちろん、めったに観れない宝石とかな!」
「成程」

 通りで騒がしいわけだ。人が多いのも、今日に限った事なのだろう。

「なら、仕方ないな」
「え!?」
「おう、悪いな。折角の祭りだ、ゆっくり見ていくといいぜ」
「助かる」

 何か反論したげな顔をしたマギアを引きずり、俺はカウンターを離れた。


 〇


「どうして諦めるの!? 無理にでも出してもらえばいいじゃない!」
「無理に言っても出してもらえないだろうし、強引に言い聞かせたとしても、それが騒動になったらどうするんだ?」
「そうは言っても、私達には時間が」
「なあ。少しは落ち着こうぜ? 散々言ってるが、俺達の旅は捕らえられたら終わりなんだ。俺は安全性を取りつつ急いでいるだけだ。今日がだめなら、明日一番にここを出る。それでいいだろ?」
「い、一理あるけれど」

 苦虫を噛みながら、どうも納得のいかないって言いたそうな顔をする。
 そりゃそうだろう、魔王なんだから。

「パートナーはお互いの信頼が大事、だろ?」
「……」
「お前は俺をパートナーに選んだんだ。選ばれた俺も当然お前を信用する。しないと殺されるからな」

 互いを疑い、ギスギスした関係を続ければ、当然何方かに何時か見限られる。
 その結果先に行動を起こすのはマギアに決まっている。魔法でもなんでも使って、俺を殺しにかかってくるだろう。

「だから、お前も俺を信用してくれ。これは、お前の安全を優先しての事だぜ?」
「私の?」
「ああ」
「……はあ、分かった。交渉事は任せる」

 反論できないのか、マギアは顔を後ろに向けながら、そう返事する。
 納得してくれたようで何よりだ。実際殺されるんじゃないかとヒヤヒヤした。

「ならいい。それじゃあ、船も出ない事だし、観光しながら時間でも潰しますか」
「しょうがないわね。少しぐらい付き合ってあげるわよ」
「本当はお前が一番回りたいくせに」
「う、うるさいわね! 燃やすよ!?」
「ごめんごめん」

 そう言ってはいるが、マギアの表情はちょっと嬉しそうであった。


 〇


「な、なにこれ……甘ッ! 口が何かに包まれて溶けていく感じの……罠か! 罠なのか!?」
「食べ物に罠ってどういうことだよ」

 作物や宝石、織物の露店を巡っていた俺達は、ふと見つけた店に入り、ケーキなる物を食していた。
 俺は何度も食べた事ある為左程反応はしないが、マギアの反応は尋常ではなかった。
 美味いのか不味いのかのどっちかで言ってほしい物だ。

「クライン……」
「どした?」
「これを7個程買い置きして! 毎日1個は食べるよ!」
「7日しかもたねぇじゃねぇか」

 ちょっと遠慮したな?

「い、一週間も食べればさすがに飽きるし……」
「絶対嘘だ」
「わ、分かんないじゃない!」

 マギア程の性格だ。7日後には確実に『もっと寄越せ』と駄々こねてくるに違いない。
 魔王特権で、俺に対しては何しても許される、と言って財布をくすねた後、無断でケーキを買いに行くのがオチだろう。

 でも

「……精々3個だな」
「ケチ」
「懐が死ぬ」
「金を稼げばいいじゃない。それか盗むか」
「後者はアウトだ」

 一々発想が危ない。

「金を稼ぐ、か」
「方法はあるの?」
「ああ、面倒ではあるがな」

 冒険者ライセンスを開き、これをブンブンと左右に振る。
 マギアは頭にハテナを浮かべている。

「こういう町には大体中央に依頼ボードとかが置かれていてな。冒険者であるなら誰でも受けられる。そこから金になりそうな依頼を探して、達成する。そうすりゃ多少金にはなるが」
「人間たちの手助けをするって事? 気に入らないわね」
「なら、ケーキはお預けだぞ」
「そ、それは!」

 顔を少し赤らめながら、激しく動揺している。
 脳内で葛藤でもしているのだろうか?
 天使がココハシタガウベキヨーって言うのに対し悪魔がオマエハマオウダープライドヲマモレーとでも言っているのだろうか? よくあるテンプレだ。
 その様子はとても微笑ましい。

 ――そして数分の葛藤の末。

「……し、仕方ないわね! 特別だよ? 特別!」
「天使の勝利か」
「天使?」
「何でもない」

 背に腹は変えられない、とはよく言ったものだ。
 さすがの魔王も甘い物には勝てなかったようだ。

「んじゃ、依頼ボードに行くか、速く食えよ?」
「も、もう少し味わってから……」
「ガキか」
「なんて?」
「何も?」

 その後結局、俺達が店を去るのは1時間後であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...