愛され方を教えて

あちゃーた

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一軒家の庭。

芝生が生い茂る緑の上で騎士は相変わらず無表情で何も喋らずこちらを見ていた。

俺にどうしろというんだ…?

ここまで寡黙だと逆に感心する。
会話することは諦めメイドが用意してくれた木刀を掴む。
すると、騎士も動き出し同じように木刀を手に持った。
そしてそのままブンッブンッと素振りをしてこちらを見る。

「あの、騎士様、何をすればいいんですか?」

同じく騎士はブンッブンッと素振りをしてこちらを見てくる。

真似をしろと…?
俺が過去に剣術をやっていなかったらこんな訓練できたものじゃないだろうな。

若干呆れながら同じように姿勢を正し、勢いよく木刀を振り下ろす。 

ブンッ。

生い茂っていた草が舞い上がる。

過去の感覚がまだ完全には戻っていないが、それでも威力とスピードはそこそこ出ている。

次は何をするべきかと騎士を見ると驚いた顔で固まっていた。

「…………!」

「次は何をすれば?」

俺の声にハッとした騎士は持っていた木刀を向き合う形で構える。

「………かかってこいってことですか?」

コクン。
騎士が頷いたのを合図に俺は思いっきり木刀を構えて飛びかかった。

カンッ。
カッカッカッカンッッッッ。

木刀がぶつかる音が鳴り響く。

右足に重心を乗せて体を捻り、勢いよく脇を狙うも素早くかわされる。
だが姿勢が崩れたらこちらのものだ。
前から木刀で突いてやる。
「はっ!」と力を込めて相手の腹に向かって木刀を突き刺す。
が、カンッと音を立ててその攻撃すら防がれる。

こいつ、相当強い。

カンッ。
カンッ、カッ、カッカッ、カンッ、カンッ!!!

しばらく激しい音が鳴っていたが勝敗がついた。

「っ、くそ!」

咄嗟に木刀を後ろに振り回した時、この体では体重が足りず遠心力に負けてしまった。
そのままズルっと片足のバランスが崩れ姿勢が崩れる。
その隙を騎士は見逃さず、ブンッと頭上から影がさす。
来たる痛みに備えぎゅっと目を瞑るがやってきたのはコンッという軽い音だった。

「………」

目を開けると木刀で俺の頭を小突いたまま、じーっとこちらを見る騎士がいた。
とりあえずその姿勢のまま、両手をあげる。

「…負けです。」

負けたけど、楽しかった。
久しぶりにこんなに剣を振れた。

思わず笑顔になってしまう。
すると、その様子を見ていた騎士がうっすら唇をあげた。

笑った…!?
が、すぐにいつもの無表情に戻り、ペコリと礼をしてスタスタと屋敷に入っていく。

俺も同じように屋敷に帰るとメイドが「どうでしたか?」とそわそわしながら聞いてきたので「大丈夫そうだ。」と答えておいた。

それから、入学試験まで騎士と木刀を打ち合った。
相変わらず騎士は喋らないが、負けるたびにこうすればいい、ああすればいいと実践で教えてくれているような気がする。

いっときは気まずかった騎士との時間が楽しみになっていった。

リガー帝国の歴史についてはメイドからみっちり教わりつつ、他の科目も並行して復習していった。

あっという間に月日が経ち、ついに入試直前となった。

騎士との模擬戦はいつものように負けた。
しばらく会えなくなるから勝ちたかったな、なんて思いつつ「ひとまず今日で最後だ、ありがとう。」と感謝の気持ちを伝えておく。

そのまま屋敷に戻って明日の入試に備えよう。
そう思い、屋敷に戻ろうとした時。

「俺も受ける。」

何も喋らないはずの騎士が、声を発した。
驚いて騎士の方を振り返る。

無表情な顔でいつものようにこちらをじーっと見ている。

「俺も、受けたい。」

聞き間違えじゃなかった。

初めて聞く低めの声に驚きつつ、言葉の意味を考える。

俺も、受けたい?
入試のことか??

「いや、アルタード学園の入学試験は12歳から15歳までしか受けられない…」

「俺は、15だ。」

まじかよ。
今度は違う意味で驚きつつ、騎士がなぜ急にそんなことを言い出すのか見当もつかず頭を抱える。

「15で貴族の護衛をしてるなら相当優秀なはずだ。一般的な騎士団員じゃないから死ぬ危険も少ないし給料もいいし。何が目的なんだ?」

わからないなら聞けばいい。
一体全体何がしたいんだコイツは…。

若干呆れながら答えを待つ。

騎士は少し間を置いた後、口を開いた。

「あんたと剣を打ち合うの、好きだ。あんたのこと気に入ってる。剣を打ち合ったら友達だ。騎士団の友達が言ってた。」

「…………友達?」

思ってもない言葉に面食らう。

「俺、敬語はうまく話せない。だからずっと黙って貴族の護衛をするしかなかった。今までの護衛対象はすぐに怒って俺を首にしてた。けど、あんたは違う。それに剣も強い。気に入った。だから友達だ。あんたと学校行ってみたい。」

今まで騎士が喋らなかったことに合点がいくと同時にストレートに言葉をぶつけられて戸惑う。

友達って言われたのは初めてだ。

むず痒い。
だけど嬉しい。

騎士は相変わらず無表情だったけど、その瞳はいつもと違って何かを酷く切望しているようだった。

考えたのは少しの間だった。

「分かった…、一緒に受けよう。」

俺は過去にできることのなかった友達に手を差し出した。

一緒に通えるなら心強いし何より…。

俺も友達と学校を過ごしてみたい。
過去とは違う道を歩みたい。

「俺ダゼン。あんたはリハルト…様?」

様をつけるのが苦手そうな様子に思わず吹き出す。

「ふっ、本当に敬語はダメそうだな、リハルトでいい。よろしくダゼン」

差し出した手をダゼンが手を握り返す。

これからの学校生活を思うと、過去とは違う物語が始まりそうでなんだか無性にわくわくした。

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