愛され方を教えて

あちゃーた

文字の大きさ
24 / 27

2:7

試験場には少し離れたところに4人が座っていた。
少し緊張しながらも前を見据えて剣を構える。

目の前にあるのは鉄の塊のようなもの。
木刀では切ることは絶対に不可能だ。

とりあえずこの物体に素振りをして木刀を当てればいいんだよな?

ずっと姿勢を正し、目を瞑って深呼吸する。
大丈夫だ。
俺ならできる。
元死にたがりの剣術を見せてやる。
ダゼンも相手をしてくれたんだ。
そうだ、鉄の塊をダゼンだと思うことにしよう。
訓練の時みたいに、思いっきり剣先にスピードも力ものせて振れ。

ふぅーっと息を吐き、目を見開いて剣を振り下ろす。

ブンッッッッと空気を切る音がした。
次の瞬間、カーーーーーーーーンと耳をつんざくような音が鳴る。

「…素晴らしいですね」

近くにいた試験官がパチパチと手を叩く。

手元を見ると木刀は折れることなく鉄の塊に触れていた。
木刀をそっと離してみると若干鉄の塊に凹みのようなものができていた。

これだけの威力と速度を出したんだ。
とりあえず試験は大丈夫だと思っていいだろう。

拍手をして褒めてくれた試験官にぺこりと頭を下げる。

「ありがとうございます」

「今までで一番素晴らしかったですよ、君は貴族ではないそうですが剣術はどなたから習ったんですか?」

「今同じように試験を受けているダゼンという者から習いました」

「あなたよりもすごいということですか?それは期待が大きいですね」

「はい、期待しておいて損はないかと」

「ふふっ、楽しみにしておきます、それでは退室して下さい」

最後にもう一度頭を下げ、試験場をあとにした。

変に緊張したが、思うようにできて満足だ。
ダゼンを待って屋敷に帰ろう。

待合室に戻ることは試験の関係上できない為、学校の門付近でダゼンが終わるのを待つ。

ダゼンのやつ、なかなか出てこない。
いつになったら出てくるんだと門から中を見渡せば、終わった人たちがちょこちょこと出てきていた。

その中の一人。
人一倍目立つ容姿をした人物を目にした瞬間、目にも止まらない速度で顔の向きを変えた。

り、リータだ!

大丈夫だ、奴は一平民の俺になんて興味も湧かないだろうし、このままやり過ごせばいい。

はやく、はやく通り過ぎてくれ。

ドクンッドクンッと心臓が嫌な音を立てる。
今会えばどうすればいいのか分からない。だが、関わっていいことがあるはずがない。

スッと俺の頭上に影が差した。
影はそのまま動くことなく俺の頭にさしかかっているまま。

「おいお前」

最悪だ。

「はい」

諦めて上を見上げる。
リータではない他の受験者かもと希望を抱いたが見事に打ち砕かれた。

「さっき待合室の隅にいただろ?貴族…ではないよな?」

「はい、近くの市街地に住む平民です。」

「ふーん、その割には…」

グイッと奴の顔が鼻と鼻が触れそうなほど近づく。
過去のことを思うとぶん殴ってやりたいが、下手なことをしたら俺が捕まる。
グッと拳を握って殴りたくなる衝動を抑える。
リータはそんな俺にお構いなしに顔を近づけたまま、まじまじと俺を見た。

「綺麗な顔してんな」

「…………は?」

一瞬何を言われたか分からなくて素っ頓狂な声が出た。

き、綺麗な顔?

過去に誰からも容姿について触れられたことはない。

戻ってからはお父様とお兄様に可愛い可愛いと言われてはいるがあれは絶対に何か特殊なフィルター越しに俺を見ているからに他ならない。

「すげー綺麗な顔してる、特にその目、気に入った」

何を言ってるんだこいつ?
お前に気に入られても嬉しくもなんともない。

少し目つきを鋭くして睨みつけてみたが、機嫌が悪くなるどころか嬉々として顔を喜ばせているではないか。

「綺麗なピンク色だ、お前で2人目だ、その瞳を持っている人を見るのは」

あっそう。

急にペラペラと喋り出すリータに対して露骨に返事をすることなく睨み続けているのだが効果はないようだ。

ドンッと壁に手を置いてリータは俺を自分と壁との間に挟み込む。

「お前、俺のものになれ」

「いや、なりません」

無視するにできないことを言われ反射的に声が出た。

本当に何言ってるんだこいつ!?

「平民のお前は知らないだろうが俺は第二王子だ、俺のものになっていて損はないぞ?」

「間に合ってます、結構です」

王族相手に不躾だろうが関係ない。
そもそもお前は絶対に敵だ。

「お前綺麗な顔のくせに生意気だな、名前はなんていうんだ?」

「教えたくないです」

「なら王族の命令だ、名前を教えろ」

その口裂いてやろうか?
若干イラつきつつ、どうやって乗り切ろうかと頭を巡らせていた時。

「待たせた、リハルト」

「だ、ダゼン!!!」

最悪だ。

試験が終わったのであろうダゼンがいつの間にかそばに立っていた。
そしてもっと最悪の事態に気づく。
ダゼンはまだ俺のことを偽名のリトではなくリハルトって呼んでいるではないか。
まずい、非常にまずい。

「へぇ、リハルトっていうのか?」

ニタニタと笑いながらこちらを見るリータ。
この状況をどう打破しようかとあれこれ考えているうちにダゼンがサッと俺とリータの間に入り込む。
それを見たリータがぴくりと不機嫌そうに片眉を上げた。

「何だお前、邪魔だ」

「リ………トが嫌がってる。」

今更ながらに気がついたらしい。
あのダゼンが冷や汗を流しながら俺の名前を訂正した。
今まで意識してなかった俺も悪いから責められない。
が、露骨な訂正にもっとましなやり方あっただろとツッコミを入れたくなる。

「リハルトじゃねぇのか?リト?お前、さっきの会話を聞いててわざと名前間違えたのか?どっちが本名だ?」

「知らない。」

「知らないわけねぇだろ、言え!」

「言わない。」

「てめぇ…」

こうなったら、本名がバレるよりかは名前を出してしまった方がいい。
バチバチと口論していた2人に叫ぶ。

「リト!!!俺はリトだ!!」

あなたにおすすめの小説

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定 (pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)

【完結・続編別立】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。