上 下
6 / 28

七部構成とは その2

しおりを挟む
①の情景描写では、(     )に書かれた通り登場人物、中心的な役割を果たすもので言えば主人公の日常生活とその心境が描かれる。



ここでは、彼または彼女はその内的側面において何か問題、または欠点を抱えており、それを自らの力で解決できずに困窮している様子が描かれることになる。

ストーリーが進むに従い、この問題または欠点は順を追ってその様相を変えていくことになり、やがてそれらの解決や克服へと繋がっていく運命を持っている。



②の小さな出来事の発生、つまり主人公の日常を根本から揺らがせる事件の発生には、ストーリーの大きな主軸となる流れに乗っていくために、あえて主人公を窮地に陥れる状況を作り出し、場所を失わせる性質を持っている。これによって、主人公は自身の内面に否応なしに向き合うことになり、その内的解決の方法を求めて、既存の環境から抜け出すことになる。実際のストーリーにおいて表現するなら、ここが主人公にとって「冒険の始まり」であり、「未知への探求」という地点に立つ、長き道のりのスタートということになる。



③の出来事への関与、これはいずれストーリーにおける出来事の主流となるメインの流れに主人公を巻き込むために、彼または彼女の場所を失わせた時、起きた事件と主人公の内面を関連付けるような、自然とした「リンク付け」の意味合いとしての機能を果たす。つまり、「なぜ、自分は巻き込まれることになったのか?」という主人公自身の問いかけが事件の真相を探っていく動機となり得るのだ。もちろん、単に巻き込めばいいという類いではなく、そこに主人公が巻き込まれなければならなかった必要性を前提として考える過程も生まれてくる。それだけでなく主人公にそう考えさせる環境または状況の構築も必要になってくる。



大抵の場合、その原因はストーリー上で展開される変化、つまり出来事の変遷の流れを解決へと導く「キーポイント」となるもの―実際のストーリーで言うなら例えば世界を救うアイテムのようなものだ―を主人公が所持、またはそれを手に入れるきっかけとなりうるものを所持しているパターンが頻繁に扱われる。先ほどの「トランスフォーマー」で言えば、オールスパークの在り処が刻まれた先祖のメガネを主人公が所持している、といったようにだ。このようにハリウッドではどちらかというと後者のパターンがよく使われる。



お気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、このキーポイントとなるツールの登場は、実は前回書いた三つのタイムラインのうちに出てきた「キーポイント」そのものである。物語を収束させるためのカギとなるものはこの時点ですでに謎として提示されていることになるわけだ。



なぜ、そのキーポイントとなるツールを直接所持することではなく、そこへと導くためのきっかけとして用いられることが多いのか?



それは端的に言えば、主人公を冒険させるためであり、ストーリーの中で出来事が起こる真相、つまり真髄に近づくためのプロセスとして必要だからだ。換言すれば、ストーリーという話の流れが起こる以上、その出来事が起こる真因が順番に明かされていくことで、そこで初めてそのキーポイントであるツールの必要性が生じるプロセスが必要不可欠だったと読者に理解してもらうためだ。



別の表現をすれば、メインイベントが起きてから初めてその用途が明かされるという話の順番に従うために、主人公に直接それを追求するための道のりを歩かせる必要があるからだ。



余談ではあるが、こういった順番を踏まえることがまさにストーリーという「変化」に醍醐味を持たせる何よりの基礎知識となる。



話を元に戻そう。



この項目がストーリーにおいて開始された時、主人公はメインとなる話の流れの潮流にすでに乗っており、これと平行してその潮流となるメインの出来事は別個に進行していくことが多い。後に紹介する「メインイベント」というものだ。

それは主人公に真相を追求させる動機を強めるだけでなく、主人公がストーリーの真髄、言ってみれば話のテーマとなる核心的部分に接近していくためのプロセスを読者に分かるようにして展開していく前倒しの役割も併せ持っている。そのプロセスこそが、主人公が巻き込まれなければならなかった必要性が明かされるための準備段階として表層化していくことになるわけだ。
しおりを挟む

処理中です...