魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百九十二話 ぷはー 今日もいい天気

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 とある日の夜。わしはノエルを除いた3人を部屋に呼んでいた。
 ロワは椅子に、ミエルはベッドに座っている。ホウリは壁に寄りかかってわしの方を見ている。


「お主らに大事な話がある」
「どうせノエルのことだろ?」
「そうじゃよ」


 わしの言葉に3人がやっぱりという表情になる。


「やはりか」
「呼ばれた時からそうだと思ってました」
「なんじゃ。分かっておったか」


 顔や態度に出ておったか?まあ、話が早くて助かるか。


「スイーツパーティーから数日経つが、ノエルはわしの事を許してくれん。どうすれば良いじゃろうか?」
「沢山謝るとかですかね?」
「数百回は謝った。じゃが、ノエルは全く許してくれん」
「多すぎだろう」
「謝罪も多すぎると、相手の怒りを買うぞ?」
「数百回は多いのか?」
「多いですね」
「そうじゃったのか……」
 

 思いもよらない事実に膝から崩れ落ちる。わしがやって来たことは全部無駄じゃったのか?


「ショックを受けすぎだ」
「フランはノエルを溺愛している。ノエルのことになると暴走するくらいにはな」
「ですがどうします?」
「何かプレゼントでもするか?」
「なるほど!プレゼントか!」


 プレゼントで誠意を見せる。単純じゃが効果的じゃろう。


「そうと決まれば即行動!」
「ちょっと待て」


 扉に向かって駆けだそうとしたらホウリに肩を掴まれた。


「なんじゃ」
「何をプレゼントするつもりか言ってみろ」
「魔国の半分じゃ」
「ダメに決まってるだろ。こんな時にだけ魔王の倫理観になるんじゃねぇよ」
「そうなのか?わしがあげられる一番大きなものなんじゃが?」
「子供に国を渡してどうするのだ」
「ノエルちゃんが欲しいものをプレゼントするのはどうですか?」
「ノエルの欲しいもの?」


 可愛い洋服はわしが沢山あげておるし、お菓子も美味しい物を食べさせている。他に欲しいものといえば……


「そういえば、ノエルがお城に行きたいと言っておったのう。そうじゃ!魔国の城よりも大きい城をプレゼントじゃ!」
「いちいちスケールが大きいな」
「流石にお城をプレゼントは止めた方がいいと思いますよ?」
「というか、プレゼントをしてもノエルは突っぱねると思うぞ?」
「謝罪もプレゼントもダメ?ならばどうすれば良い?」
「仕方ないな」


 ホウリが天を仰ぎつつ壁から背中を離す。


「俺がノエルに働きかけて2人で話せる状況を作る。そこでじっくりと話し合ってくれ」
「おお!恩に着る!」
「勘違いするなよ?俺は話し合いが出来る場を用意するだけだ。仲直りできるかはフランとノエル次第だ」
「分かった!」


 今回のホウリの手を借りることになった。なんじゃか借りを作ったような気もするが今更じゃな。


☆   ☆   ☆   ☆


 次の日の昼、わしはキッチンでノエルを待っておった。わしはエプロンと三角巾を身につけておる。目の前には小麦粉や卵、砂糖などの材料がある。
 今日はノエルとクッキーを作る予定じゃ。何か作業をして置いた方が話しやすいというホウリの心遣いじゃ。
 わしは壁にかけている時計を見ながらそわそわする。今から会うのはノエル。毎日会っておるはずなのに緊張する。
 深呼吸をして、また時計を見る。すると、背後の扉が開く音がした。


「……お待たせ」


 キッチンに入って来たのはエプロンと三角巾を身につけたノエルじゃった。いつもならすぐにカメラにその姿を収めるんじゃが、今はそんな気にはならない。


「う、うむ。それでは始めるか」
「うん」

 ノエルがボウルにバターを入れて混ぜ始める。わしは卵を割って黄身と白身を分ける。いつもならお喋りしながら作るが、今は沈黙が支配しておる。
 気まずい中、わしとノエルはもくもくとクッキーを作る。
 ……ダメじゃ、このままでは何も進展しない!気持ちを強く持つんじゃ!フラン・アロス!
 意を決したわしは重い空気を吹き飛ばすように明るい口調で話す。


「最近、学校はどうじゃ?」
「楽しいよ」
「そうか」


 再びキッチンに重い沈黙が支配した。
 ……気まずい!なんじゃこれは!思春期の娘と父親か!
 いや、まだじゃ!まだわしは諦めん!


「ノエル」
「……なあに?」
「わしはノエルが好きじゃ」
「…………」


 ノエルは無言で少しだけわしの方へ視線を向けたが、すぐに目の前のボウルに視線を戻した。


「じゃが、その好きと言う思いがノエルに嫌な気持ちにしてしまった。ホウリ達にも注意されてた筈なんじゃがな」
「…………」
「わしの行動を正当化するつもりは無い。わしが悪いのは重々理解しておる」
「…………」
「じゃが、わしはこのままノエルと仲が悪いままなのは嫌なんじゃ」
「……ノエルも」


 ノエルはポツリとそんな事を呟く。わしが思わずノエルの方を向く。
 ノエルは目の前のボウルに視線を向けながら、話を続ける。


「ノエルもフランお姉ちゃんが大好き」
「本当か!?」
「うん」


 小さく頷くノエル。その様子をみてわしの目から涙が溢れ出す。


「う……うっ……」


 泣いたわしをノエルが抱きしめてくれる。わしもノエルの温もりを感じながら抱きしめる。


「済まなかったな……」
「ううん。ノエルもゴメンね」


 一通り泣いた後、わしとノエルは離れた。


「仲直りも出来たことじゃし、クッキー作りを再開するか」
「うん!」


 弾けるような笑顔でノエルは頷く。


「ノエルと仲直りできたのもホウリのお陰じゃな」
「お礼にホウリお兄ちゃんにもクッキーあげようか?」
「そうじゃな」


 たくさん作ってホウリに渡せば礼の代わりになるか。ホウリを喜ばせるには頑張らねばならぬのう。


「バター混ぜ終わったよ」
「黄身と白身の分離も終わったぞ」
「じゃあ混ぜ混ぜしようね」


 バターと砂糖、卵黄をボウルに入れて混ぜ合わせる。


「ふんふんふーん♪」
「楽しいのう」
「そうじゃな。そういえば、ホウリに何か言われたんじゃろ?」
「うん。怒っているのは分かるけど、許さないとフランお姉ちゃんと喧嘩したままだよって。嫌なら話くらいは聞いた方が良いって」
「ホウリがそんなことを言っておったのか」


 やはりホウリは神じゃな。クッキーとは別に高級菓子もプレゼントするか。


「あ、そういえば、フランお姉ちゃんが写真をむやみに見せないようにする方法は無いか話し合った方が良いんじゃないとも言ってたよ」


 前言撤回。ホウリの奴は悪魔じゃな。


「むう、やはり他の者に写真を見せてはダメか?」
「ダメ!恥ずかしいし!」
「そうか……」
「……でも1枚だけだったら良いかも?」
「本当か!?」


 全く見せられないのは厳しいと思っておったところじゃ。


「ならば、厳選した1枚を選らばんとな」
「普通の格好の奴だからね?」
「勿論じゃ」


 どれが良いかのう。制服姿か私服か。今みたいなエプロン姿も良いのう。


「それじゃ、いっぱいクッキーを作ろうね」
「うむ。世界一のクッキーを作るぞ」


 こうして、わしはノエルと仲直りできたのじゃった。
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