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第四十七話 これからハンティングに行く
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────季節────
異世界にも四季というものが存在しており、順番も春夏秋冬と同じになっている。暦もおおむね同じで一年は372日で12ヵ月となっている。魔物も季節の影響を受けるため、季節によって出現しない魔物もいるため、ドロップ品を求めて大規模な狩りが行われることがある。──────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
「ハンティング?何をするんだ?」
「簡単だ。これと同じものをホテルの中から探してもらうだけだ」
ホウリは懐から金色のコインを取り出す。
「それだけか?」
「それだけだ。制限時間である2時間でこれを手に入れた奴が勝ち。簡単だろ?」
「へー、面白そうな事しているんだね」
ホウリの説明を聞いたミルさんがコインを眺める。
「よかったら参加します?」
「いいのかい?君たちの勝負だろう?」
「お互いのメンバーが良いなら。スターダストはどうだ?」
「わしは良いぞ」
「私も異論無い」
「僕もいいですよ」
「楽しそう!ノエルもやりたい」
スターダストは特に異論無しか。銀の閃光はどうだ?
「俺は良いぜ。ホウリに目にもの見せてやる」
「ナップは本当にホウリ君が嫌いなのね。あ、私はいいわよ」
「俺たちも!」
「問題ない!」
「だそうだよ」
銀の閃光も問題なしか。ライバルが増えてしまうことになるが構わない。まだポイントがない私は全力で勝ちに行くだけだ。
「細かいルールを説明する。全員、最初に食べた海鮮丼の器の底を見てくれ」
ホウリに言われるがまま海鮮丼の器の底を見てみる。器の底は赤く塗られているだけで変わった様子はない。
「確認したな?同じ色の奴とペアを組んでくれ」
成程、ペアを分ける為に器の底にクジを仕込んであった訳か。随分と用意がいいな。
「黄色はわしとペアじゃぞー」
「緑は俺とペアだ」
皆が順調にペアを作っているな。私も早くペアを見つけないと。
「赤の奴はいないか?」
「私が赤よ」
赤い器の底を見せながら微笑んでいるシース。私のペアはシースか。女同士だと気が楽だし都合がいい。それに……、
「僕のペアはナップさんですね。よろしくお願いします」
「おう、一緒にホウリをぶっ潰そうぜ!」
「あははは……」
シースがロワとペアになって惚れたりでもしたら大変だ。本当に良かった。
「ペアが分かったら手錠で手を繋いでくれ」
ホウリから渡された手錠で私の左手とシースの右手を繋ぐ。鎖の距離は約1メートル。あまり離れることは出来ないな。
「手錠なんて良く持っておったのう」
「拘束するときに便利なんだよ。色んな事に想定して長さが違う物を色々と用意している」
「ホウリ君はどんな事を想定しているの?手錠って一個持っているのもかなり変だよ?」
言われてみれば色んな長さの手錠を持っているのは変だな。……ホウリに毒されてきている自分が嫌だ。
結局、ペアは私とシース、フランとボローネ、ロワとナップ、ノエルとパンクとなった。だが、ミルは底が白の器を片手にウロウロとしている。
「そういえば白の人いない?僕は白なんだけど」
「スターダストの参加者が4人だから銀の閃光も4人にしか参加できません。白のミルさんは俺のアシスタントをしてもらいます」
「僕も参加したかったけど仕方ないか」
残念そうなミルだったが文句ひとつ言わずに頷く。これがナップだったら小一時間は文句を言ってホウリに返り討ちにあってただろう。
「手錠とホテルの設備は破壊禁止。攻撃系のスキルも使用禁止。フランはMPの使用自体を禁止する」
「それじゃフラン君がかわいそうじゃないかな?」
「心配は有難いが問題はない。今までの勝負でも似たような物じゃったしな」
フランをよく知らない奴がそう思うのも無理はない。だが、フランを知ってる身としてはMPを使われたら勝ち目が薄くなるから英断と言わざるおえない。
「ホテルの中から探すのよね?このホテルは5階建てで結構広いけどヒントとかないのかしら?」
「勿論ある。この『スターダストシール』が貼られている部屋を探してもらう」
「間違ってもスタッフ部屋に入らないようにか。それ以外のヒントはないのか?」
「あるぞ。こいつだ」
ナップの言葉の後に、ホウリが一つの白い箱を取り出す。箱の蓋には『スターダストシール』が貼られている。
「各部屋にこの箱がある」
「その箱にコインがあるという事ですね」
「ただし、無計画に箱を開くと……」
ホウリが言葉を切って真顔で私達を見てくる。数秒の沈黙の後、フランがしびれを切らしたように聞く。
「何が起こるんじゃ?」
「…………(ニコッ)」
途端に不安が大きくなってきた。このままダッシュで実家に帰りたい。
「この勝負降りていいか?」
「ダ~メ☆」
なるほど、これが殺意か。三日ぶりだな。
「ちなみに、コインが入っていなくても役立つアイテムが入っていることがあるから積極的に開けた方がいいよ」
「とりあえず1発殴らせろ」
ナップの言葉に私は全面的に同意する。絶対に分かってて煽ってきてるだろう。
「ホウリとミルは」
「何をするんだ?」
「俺たちは狩人となって皆を追いかける。捕まったらここで10分待機してもらう。待機している間はコインの取得権利はなくなる」
「失格ではないんだな」
「あくまで遊びだからな。待ち時間が長くなっても面白くないだろう」
ハンティングするのはホウリとミルか。勝負の名前を『エスケープ』に変えた方がいいんじゃないか?
「次に反則行為にした場合について説明する」
「失格ではないのか?」
フランの言葉にホウリは首を振って答える。
「銀の閃光がいる以上、失格にしてもダメージが少ない。という訳で、別の罰を考えた」
「どんな罰なんじゃ?」
「こんな罰だ」
ホウリは懐からそれぞれの名前が書かれた8枚の封筒を取り出して、一人1枚ずつ配る。
私は自分の名前が書いた封筒をホウリから受け取る。
「開けて中身を確認してくれ」
言われるがまま封筒を開けて中を確認すると一枚の紙が入っていた。嫌な予感がするが開けないわけにもいかない。私は折りたたまれた紙を広げそこに書かれた文字を確認する。
『3年前に王都で起きた爆発事件はミエル・クランとラッカ・オレオの仕業である』
文字を読んで内容を理解した瞬間、私の全身から血の気が引いていくのを感じた。とっさに誰にも見えないように紙を胸に抱え周りを見渡す。全員、驚愕の表情や恐怖の表情をしている。確実に墓場まで持っていくような内容が書かれているな。
これを渡してきたホウリはというと、ニヤニヤと笑いながら私たちの方を見ている。そんなホウリを睨みながら、ナップが睨みつけながら話す。
「……どこでこれを知った?」
「守秘義務だ」
「……ちっ!」
「ここまで来たら分かると思うが反則行為を行った場合……」
紙の内容を読み上げるだな。スターダストのメンバーだけならまだしも出会ったばかりの他人に知られrのは流石にダメージが────
「人国と魔国問わずに情報をばらまく」
予想の遥か上を行くひどさだった。
マズイマズイマズイマズイ、わざとじゃなかったとはいえ、これが国に知られたら叱責だけじゃすまない!最悪、一生檻の中で過ごす羽目になるかもしれない。それだけは何としても阻止しないと!
「そういう訳だから、反則するなら覚悟を持ってやるように」
「たかが遊びに人生賭けられないわよ……」
これで間違っても反則をする訳には行かなくなった。行動は慎重にしないと。
「この勝負は2時間経つか誰かがコインを手に入れたら即終了する。それまでは反則しないように気を付けろよ。また、散らかしたら片付けるように。何か質問ある人は?」
誰も口を開かないのを確認したホウリは手を打つ。
「それじゃ、ハンティング開始!」
ホウリが言うや否や、ホウリとミルが私たちに襲い掛かってきた。
「はっはー!早速捕まえてやるぜ!」
「やるからには容赦しないよ!」
逃げる時間も無しか!ミルから伸びてきた手を寸での所でかわし、シースの手を引く。
「逃げるぞ!」
「分かってるわよ!」
急いで部屋の出口に向かって走るとホウリがニヤリと笑いながら立ちはだかってきた。
「まずは遅い奴から捕まえる、定石だよなぁ!」
「くっ!」
このままだと捕まってしまう。どうにか、かわさないと。
捕まるまで残り数ミリ、私が捕まる覚悟を決めるとホウリは突然体を反転させた。ホウリの手の先を見てみるとフランとボローネがホウリに捕まっていた。
「くっ!バレておったか!」
「お前の考えていることはお見通しだ。この中で一番遅いミエルが捕まっている隙に脇を抜けるつもりだっただろうが、甘い甘い」
悔しがってるフランを横目に私たちは部屋を脱出する。
「とにかくここを離れるわよ!」
シースに言われるがまま、私は全力で足を動かす。
階段を上がったり、降りたりを繰り返してさっきの部屋から全力で離れる。
「はぁはぁ、ここまで来たら大丈夫ね」
「まさか、いきなり襲ってくるとはな。フランがいなかったら確実に捕まっていたな」
「あら?ミエルちゃんは息が切れてないわね?」
「鍛えていてな。スタミナには自信がある」
騎士団で随分と鍛えられたから、この程度で息が切れることはない。だが、敏捷性は低いから追いかけられたら確実に捕まる。早く探索を進めないと。
「手ごろな部屋から見ていこう」
「そうね。見つかる前にコインを探さないと」
目の前にあるシールが貼られた手ごろな部屋に入ってみる。
部屋の中に入って最初に目に入ったのはシングルのベッドだった。その他にはいくつかの引き出しがある机や服が立てかけられるクローゼットがある。窓からは徐々に傾きつつある太陽が見える。数時間後には海に沈む夕日が見られることだろう。
「私はクローゼット周辺を調べるわ」
「ならば私は机を調べよう」
二人で分担して探索を進める。私は机の引き出しを次々と開けてみるが何も見つからない。
「こっちはない。そっちはどうだ?」
「ダメね。こっちにも箱はないわ」
その後も私たちは部屋を調べてみるが、コインどころか箱すら見つからない。
「この部屋はハズレね。次行くわよ」
「ああ」
部屋を出て次の客室に入る。ホテルだから当たり前だが、さっきの部屋と変わらない間取りだ。
「さっきと同じでいいわね?」
「問題ない。さっさと済ませよう」
手分けして先ほどと同じところを探す。そういえば、このホテルの客室は何室あるんだろうか?多すぎると探しきれない可能性が出てくる。
「大体、300室だったかしら」
私の疑問にシースが答える。
「詳しいな。来た事があるのか?」
「毎年、夏にはここにバカンスに来てるわね。このビーチは海が奇麗だしホテルも居心地がいいから私たちは気に入っているの」
このホテルは結構値が張る筈だが、毎年来ているのか。このパーティーは意外とお金持ちなのか?
「一応A級パーティーだしね。毎年バカンスに来られるだけのお金はあるわ」
「うらやましいな。うちのパーティーも貧乏という訳ではないが、結構キツキツらしくてな」
主にノエルに関する出費が多いらしいが、それは言わなくてもいいだろう。
「あなたも結構大変なのね」
「リーダーがああいう奴だからな。金意外にも色々と苦労している」
出会いからして地雷爆破だからな。覚悟をしていたとはいえ、犯罪の片棒を担がされているし、苦労の種は尽きない。
シースは探索している手を動かしながらため息を吐く。
「私のパーティーも結構大変ね。リーダーは頼りになるけど、ほかの奴らは癖が強くて苦労するわ」
「特にナップには苦労しそうだな」
「まあね。ボローネとパンクは脳筋なだけなんだけど、ナップはああいう性格でしょ?結構苦労しているのよね」
他の冒険者に因縁付けたり、態度が悪かったりすることが容易に想像できる。シースやミルは苦労しているだろうな。
「パーティーメンバーといえば、ロワ君とはどうなの?」
「何が?」
「ロワ君の事好きなんでしょ?」
私は思わず持っていたアメニティグッズを床にばら撒く。
「なななななな、なにを言っているんだ!」
「見ていたら分かるわよ。あれで隠しているつもりだったの?」
「……私ってそんなに分かりやすいのだろうか?」
「そりゃあもう。気づいていないのはロワ君とナップくらいね」
あの脳筋戦士コンビにもバレていたのか。恥ずかしくて顔から火が出てきそうだ。
「お姉さんとして相談にのってあげるから詳しく話を……あら?」
「どうしたんだ?」
突然黙りこくったシースの元へ視線を向けると、シールが貼ってある白い箱を持っていた。
「これってホウリ君が持っていたものと同じものよね?」
「そのようだ」
私はシースから箱を受け取る。箱は思ったよりも重く、コイン一枚の重さとは思えない。
とりあえず、私は箱をベッドにおいて隅々まで観察する。
「……結構重かったけど、開けていいのかしら?」
「ホウリは役立つアイテムが入っていることもあると言っていた。コインでないとは思うが、役立ちアイテムかもしれない以上は開けざる負えないだろう」
私は意を決して箱の蓋に手を掛ける。
「……あけるぞ」
「……うん!」
大きく深呼吸をして一気に蓋を開け放つ。
「……これは?」
箱の中には懐中電灯のような形の物が入っていた。明かりが点灯する所が黒いカバーに覆われているから、懐中電灯ではないみたいだ。
「箱に入っている紙、説明書じゃない?」
シースに言われて箱の中に紙が入っていることに気が付き、開いて読んでみる。
『ネットランチャー:側面のスイッチを押すことで拘束用のネットが発射される。ハンターに放つことで動きを一定時間止められる』
ハンターの動きを止められるのか。これは便利だ。
「あら、結構良いものね。これでハンターが来ても対処できるわね」
2人同時には対処できないから万能ではないが、対抗手段があるのは心強いな
「この部屋はこんなものか?」
「そうね、次の部屋に行きましょう」
私はネットランチャーをアイテムボックスに入れて客室を出る。すると、廊下の曲がり角に誰かが立っているのが見えた。あれは……ロワ?
ロワもこちらに気が付いたのか手錠が付いていない方の手を大きく振る。
「おーい、ミエルさーん!無事ですかー!」
「勿論だ!ナップはどうした!」
「ミルさんから逃げて疲れたみたいで、休んでます」
「はぁはぁ、シース!ミルってあんなに早いのか!」
「当たり前でしょ!ミルはバフ系スキルのエキスパートよ!ちょっとやそっとで逃げ切れる訳ないじゃない!」
ロワの手錠の鎖は曲がり角の奥に続いている。鎖の角度からナップは座り込んでいるみたいだ。
「ミエルちゃん、申し訳ないんだけどナップの様子を見てもいいかしら?あんな奴でも仲間だし心配なのよ」
「私は構わない」
シースの希望からナップの様子を見にロワの方へと向かう。
「ロワ、何があったんだ?」
「探索をしていたら、ミルさんに見つかってしまいまして。必死に逃げて撒きましたがナップさんがつかれてしまって」
「バフ系のエキスパートからよく逃げ切れたな」
「僕たちもよくわからないんですけど、必死に逃げている内にいなくなってまして」
曲がり角までたどり着いた私たちはナップの様子を見る為に角を覗く。
「ほら、この水でも飲んで落ち着きなさ……い?」
曲がり角を覗いた私たちの目にはありえない光景が広がっていた。
「ナップが……いない?」
曲がり角の先にはナップはおらず、手錠が廊下の椅子に乗っているだけだった。
驚いた私たちはロワの方へ視線を向けると、いつもと同じようにやさしい目元で微笑んでいた。いつも見ている筈だが、今は不気味で恐ろしい。
ロワはいつもと変わらない、やさしい声で私たちに語り掛ける。
「まったく、不用心にも程がありますよ……なあ、ミエル?」
「!?」
状況を理解した私は咄嗟に飛びのこうとしたが、既にロワに手を掴まれていた。
「くっ!騙したな!」
「知ってるか?騙される方が悪いんだぜ?」
そう言うと、ロワは首筋に手を当て、皮を一気に引きはがす。皮の下にはロワではなくホウリの顔があった。
「え?……え?」
まだ事態を飲み込めていない様子でホウリの顔を見ているシースに説明をする。
「ロワはこいつの変装だ。さっきのナップの声もホウリのモノマネだ」
「……あっはっは、なるほど!これは一本取られたわ!」
手を叩いて大笑いするシース。騙されてもここまで大笑いできるなんて、なんて心が広いんだ。
「とりあえず、さっきの部屋で10分間待機だ。この砂時計で時間を計って、10分経ったら出ていいぞ」
「……分かった」
見事に騙された私たちは、ホウリから砂時計を受け取り、寿司を食べた部屋へと向かうのであった。
☆ ☆ ☆ ☆
「ホウリの奴、卑怯な手段を……」
「でもさ、あそこまでクオリティが高いと笑っちゃわない?」
私たちは部屋に置かれていたお茶菓子を食べつつ10分経つのを待っていた。
「そういう問題じゃない」
「あら、ミエルちゃんもしかして……」
シースは私の顔を見つめてニヤニヤと笑う。
「騙された事に怒っている訳じゃなくて、変装を見破れなかった自分に怒っているんじゃない?」
図星を付かれた私は茶菓子の包みを剥いでいた手が止まる。そんな私にシースはお茶を飲みながら話す。
「気にしない方がいいわよ。あれは技術力が高すぎるわ。遠目どころか近付いても気が付かない程よ。私の見立てが正しければ、ホウリ君は何年も変装の修行をした天才ね」
「……それでも、私はロワの事を間違えたくないんだ」
私の言葉を聞いた後、シースは驚愕の表情になったがすぐに柔らかい笑みへと変わる。
「ミエルちゃんって本当にロワ君の事が好きなのね」
「ゴホッゴホッ、何を言っているんだ!」
お茶が気管へと入り思わずむせてしまう。そんな私の手を握ってシースはまっすぐ私の目を見てくる。
「そのまっすぐな思い、気に入ったわ。私に出来ることがあったら何でもいってね」
「あ、ありがとう……」
思わずシースから目を背けると板場に置いてある海鮮丼の器が目に入った。その瞬間、私はとある違和感を覚えた。違和感の正体を探るためにシースに質問をする。
「シース、海鮮丼を食べた時なんだが」
「海鮮丼?美味しかったわよ?」
「食べている時じゃなくて、その前の事が聞きたい」
「その前?」
私の言っていることが分からないのか首を傾げるシース。
「ああ、その海鮮丼、誰から受け取った?」
「誰ってミルだけど?」
ミル、確かホウリと一緒にハンターをやっているんだったな。そういえば、説明の時にも少し違和感があったな。
考え込んでしまった私にシースが心配そうに話しかけてくる。
「いきなり黙っちゃってどうしたの?」
「……なんというか、のどに小骨が刺さったような違和感があって」
そうだ、終了条件も少しおかしい。なぜホウリはあんな事を付け足した?
「……もしかして?」
「何か気が付いたの?」
「シース、パーティーの中で頭のいい順位を聞かせてくれ」
「そうねぇ、ミル、ナップ、ボローネ、パンク、私って所かしら?意外かもしれないけど、私以外のみんなは頭の回転は良いのよ?」
「なるほど」
ホウリは基本的には平等の精神が強い。ということは、やっぱり……。
「もしかしたら、コインの在りかが分かったかもしれない」
「本当!どこにあるの!」
「コインの在りか、それは……」
次回に続く
異世界にも四季というものが存在しており、順番も春夏秋冬と同じになっている。暦もおおむね同じで一年は372日で12ヵ月となっている。魔物も季節の影響を受けるため、季節によって出現しない魔物もいるため、ドロップ品を求めて大規模な狩りが行われることがある。──────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
「ハンティング?何をするんだ?」
「簡単だ。これと同じものをホテルの中から探してもらうだけだ」
ホウリは懐から金色のコインを取り出す。
「それだけか?」
「それだけだ。制限時間である2時間でこれを手に入れた奴が勝ち。簡単だろ?」
「へー、面白そうな事しているんだね」
ホウリの説明を聞いたミルさんがコインを眺める。
「よかったら参加します?」
「いいのかい?君たちの勝負だろう?」
「お互いのメンバーが良いなら。スターダストはどうだ?」
「わしは良いぞ」
「私も異論無い」
「僕もいいですよ」
「楽しそう!ノエルもやりたい」
スターダストは特に異論無しか。銀の閃光はどうだ?
「俺は良いぜ。ホウリに目にもの見せてやる」
「ナップは本当にホウリ君が嫌いなのね。あ、私はいいわよ」
「俺たちも!」
「問題ない!」
「だそうだよ」
銀の閃光も問題なしか。ライバルが増えてしまうことになるが構わない。まだポイントがない私は全力で勝ちに行くだけだ。
「細かいルールを説明する。全員、最初に食べた海鮮丼の器の底を見てくれ」
ホウリに言われるがまま海鮮丼の器の底を見てみる。器の底は赤く塗られているだけで変わった様子はない。
「確認したな?同じ色の奴とペアを組んでくれ」
成程、ペアを分ける為に器の底にクジを仕込んであった訳か。随分と用意がいいな。
「黄色はわしとペアじゃぞー」
「緑は俺とペアだ」
皆が順調にペアを作っているな。私も早くペアを見つけないと。
「赤の奴はいないか?」
「私が赤よ」
赤い器の底を見せながら微笑んでいるシース。私のペアはシースか。女同士だと気が楽だし都合がいい。それに……、
「僕のペアはナップさんですね。よろしくお願いします」
「おう、一緒にホウリをぶっ潰そうぜ!」
「あははは……」
シースがロワとペアになって惚れたりでもしたら大変だ。本当に良かった。
「ペアが分かったら手錠で手を繋いでくれ」
ホウリから渡された手錠で私の左手とシースの右手を繋ぐ。鎖の距離は約1メートル。あまり離れることは出来ないな。
「手錠なんて良く持っておったのう」
「拘束するときに便利なんだよ。色んな事に想定して長さが違う物を色々と用意している」
「ホウリ君はどんな事を想定しているの?手錠って一個持っているのもかなり変だよ?」
言われてみれば色んな長さの手錠を持っているのは変だな。……ホウリに毒されてきている自分が嫌だ。
結局、ペアは私とシース、フランとボローネ、ロワとナップ、ノエルとパンクとなった。だが、ミルは底が白の器を片手にウロウロとしている。
「そういえば白の人いない?僕は白なんだけど」
「スターダストの参加者が4人だから銀の閃光も4人にしか参加できません。白のミルさんは俺のアシスタントをしてもらいます」
「僕も参加したかったけど仕方ないか」
残念そうなミルだったが文句ひとつ言わずに頷く。これがナップだったら小一時間は文句を言ってホウリに返り討ちにあってただろう。
「手錠とホテルの設備は破壊禁止。攻撃系のスキルも使用禁止。フランはMPの使用自体を禁止する」
「それじゃフラン君がかわいそうじゃないかな?」
「心配は有難いが問題はない。今までの勝負でも似たような物じゃったしな」
フランをよく知らない奴がそう思うのも無理はない。だが、フランを知ってる身としてはMPを使われたら勝ち目が薄くなるから英断と言わざるおえない。
「ホテルの中から探すのよね?このホテルは5階建てで結構広いけどヒントとかないのかしら?」
「勿論ある。この『スターダストシール』が貼られている部屋を探してもらう」
「間違ってもスタッフ部屋に入らないようにか。それ以外のヒントはないのか?」
「あるぞ。こいつだ」
ナップの言葉の後に、ホウリが一つの白い箱を取り出す。箱の蓋には『スターダストシール』が貼られている。
「各部屋にこの箱がある」
「その箱にコインがあるという事ですね」
「ただし、無計画に箱を開くと……」
ホウリが言葉を切って真顔で私達を見てくる。数秒の沈黙の後、フランがしびれを切らしたように聞く。
「何が起こるんじゃ?」
「…………(ニコッ)」
途端に不安が大きくなってきた。このままダッシュで実家に帰りたい。
「この勝負降りていいか?」
「ダ~メ☆」
なるほど、これが殺意か。三日ぶりだな。
「ちなみに、コインが入っていなくても役立つアイテムが入っていることがあるから積極的に開けた方がいいよ」
「とりあえず1発殴らせろ」
ナップの言葉に私は全面的に同意する。絶対に分かってて煽ってきてるだろう。
「ホウリとミルは」
「何をするんだ?」
「俺たちは狩人となって皆を追いかける。捕まったらここで10分待機してもらう。待機している間はコインの取得権利はなくなる」
「失格ではないんだな」
「あくまで遊びだからな。待ち時間が長くなっても面白くないだろう」
ハンティングするのはホウリとミルか。勝負の名前を『エスケープ』に変えた方がいいんじゃないか?
「次に反則行為にした場合について説明する」
「失格ではないのか?」
フランの言葉にホウリは首を振って答える。
「銀の閃光がいる以上、失格にしてもダメージが少ない。という訳で、別の罰を考えた」
「どんな罰なんじゃ?」
「こんな罰だ」
ホウリは懐からそれぞれの名前が書かれた8枚の封筒を取り出して、一人1枚ずつ配る。
私は自分の名前が書いた封筒をホウリから受け取る。
「開けて中身を確認してくれ」
言われるがまま封筒を開けて中を確認すると一枚の紙が入っていた。嫌な予感がするが開けないわけにもいかない。私は折りたたまれた紙を広げそこに書かれた文字を確認する。
『3年前に王都で起きた爆発事件はミエル・クランとラッカ・オレオの仕業である』
文字を読んで内容を理解した瞬間、私の全身から血の気が引いていくのを感じた。とっさに誰にも見えないように紙を胸に抱え周りを見渡す。全員、驚愕の表情や恐怖の表情をしている。確実に墓場まで持っていくような内容が書かれているな。
これを渡してきたホウリはというと、ニヤニヤと笑いながら私たちの方を見ている。そんなホウリを睨みながら、ナップが睨みつけながら話す。
「……どこでこれを知った?」
「守秘義務だ」
「……ちっ!」
「ここまで来たら分かると思うが反則行為を行った場合……」
紙の内容を読み上げるだな。スターダストのメンバーだけならまだしも出会ったばかりの他人に知られrのは流石にダメージが────
「人国と魔国問わずに情報をばらまく」
予想の遥か上を行くひどさだった。
マズイマズイマズイマズイ、わざとじゃなかったとはいえ、これが国に知られたら叱責だけじゃすまない!最悪、一生檻の中で過ごす羽目になるかもしれない。それだけは何としても阻止しないと!
「そういう訳だから、反則するなら覚悟を持ってやるように」
「たかが遊びに人生賭けられないわよ……」
これで間違っても反則をする訳には行かなくなった。行動は慎重にしないと。
「この勝負は2時間経つか誰かがコインを手に入れたら即終了する。それまでは反則しないように気を付けろよ。また、散らかしたら片付けるように。何か質問ある人は?」
誰も口を開かないのを確認したホウリは手を打つ。
「それじゃ、ハンティング開始!」
ホウリが言うや否や、ホウリとミルが私たちに襲い掛かってきた。
「はっはー!早速捕まえてやるぜ!」
「やるからには容赦しないよ!」
逃げる時間も無しか!ミルから伸びてきた手を寸での所でかわし、シースの手を引く。
「逃げるぞ!」
「分かってるわよ!」
急いで部屋の出口に向かって走るとホウリがニヤリと笑いながら立ちはだかってきた。
「まずは遅い奴から捕まえる、定石だよなぁ!」
「くっ!」
このままだと捕まってしまう。どうにか、かわさないと。
捕まるまで残り数ミリ、私が捕まる覚悟を決めるとホウリは突然体を反転させた。ホウリの手の先を見てみるとフランとボローネがホウリに捕まっていた。
「くっ!バレておったか!」
「お前の考えていることはお見通しだ。この中で一番遅いミエルが捕まっている隙に脇を抜けるつもりだっただろうが、甘い甘い」
悔しがってるフランを横目に私たちは部屋を脱出する。
「とにかくここを離れるわよ!」
シースに言われるがまま、私は全力で足を動かす。
階段を上がったり、降りたりを繰り返してさっきの部屋から全力で離れる。
「はぁはぁ、ここまで来たら大丈夫ね」
「まさか、いきなり襲ってくるとはな。フランがいなかったら確実に捕まっていたな」
「あら?ミエルちゃんは息が切れてないわね?」
「鍛えていてな。スタミナには自信がある」
騎士団で随分と鍛えられたから、この程度で息が切れることはない。だが、敏捷性は低いから追いかけられたら確実に捕まる。早く探索を進めないと。
「手ごろな部屋から見ていこう」
「そうね。見つかる前にコインを探さないと」
目の前にあるシールが貼られた手ごろな部屋に入ってみる。
部屋の中に入って最初に目に入ったのはシングルのベッドだった。その他にはいくつかの引き出しがある机や服が立てかけられるクローゼットがある。窓からは徐々に傾きつつある太陽が見える。数時間後には海に沈む夕日が見られることだろう。
「私はクローゼット周辺を調べるわ」
「ならば私は机を調べよう」
二人で分担して探索を進める。私は机の引き出しを次々と開けてみるが何も見つからない。
「こっちはない。そっちはどうだ?」
「ダメね。こっちにも箱はないわ」
その後も私たちは部屋を調べてみるが、コインどころか箱すら見つからない。
「この部屋はハズレね。次行くわよ」
「ああ」
部屋を出て次の客室に入る。ホテルだから当たり前だが、さっきの部屋と変わらない間取りだ。
「さっきと同じでいいわね?」
「問題ない。さっさと済ませよう」
手分けして先ほどと同じところを探す。そういえば、このホテルの客室は何室あるんだろうか?多すぎると探しきれない可能性が出てくる。
「大体、300室だったかしら」
私の疑問にシースが答える。
「詳しいな。来た事があるのか?」
「毎年、夏にはここにバカンスに来てるわね。このビーチは海が奇麗だしホテルも居心地がいいから私たちは気に入っているの」
このホテルは結構値が張る筈だが、毎年来ているのか。このパーティーは意外とお金持ちなのか?
「一応A級パーティーだしね。毎年バカンスに来られるだけのお金はあるわ」
「うらやましいな。うちのパーティーも貧乏という訳ではないが、結構キツキツらしくてな」
主にノエルに関する出費が多いらしいが、それは言わなくてもいいだろう。
「あなたも結構大変なのね」
「リーダーがああいう奴だからな。金意外にも色々と苦労している」
出会いからして地雷爆破だからな。覚悟をしていたとはいえ、犯罪の片棒を担がされているし、苦労の種は尽きない。
シースは探索している手を動かしながらため息を吐く。
「私のパーティーも結構大変ね。リーダーは頼りになるけど、ほかの奴らは癖が強くて苦労するわ」
「特にナップには苦労しそうだな」
「まあね。ボローネとパンクは脳筋なだけなんだけど、ナップはああいう性格でしょ?結構苦労しているのよね」
他の冒険者に因縁付けたり、態度が悪かったりすることが容易に想像できる。シースやミルは苦労しているだろうな。
「パーティーメンバーといえば、ロワ君とはどうなの?」
「何が?」
「ロワ君の事好きなんでしょ?」
私は思わず持っていたアメニティグッズを床にばら撒く。
「なななななな、なにを言っているんだ!」
「見ていたら分かるわよ。あれで隠しているつもりだったの?」
「……私ってそんなに分かりやすいのだろうか?」
「そりゃあもう。気づいていないのはロワ君とナップくらいね」
あの脳筋戦士コンビにもバレていたのか。恥ずかしくて顔から火が出てきそうだ。
「お姉さんとして相談にのってあげるから詳しく話を……あら?」
「どうしたんだ?」
突然黙りこくったシースの元へ視線を向けると、シールが貼ってある白い箱を持っていた。
「これってホウリ君が持っていたものと同じものよね?」
「そのようだ」
私はシースから箱を受け取る。箱は思ったよりも重く、コイン一枚の重さとは思えない。
とりあえず、私は箱をベッドにおいて隅々まで観察する。
「……結構重かったけど、開けていいのかしら?」
「ホウリは役立つアイテムが入っていることもあると言っていた。コインでないとは思うが、役立ちアイテムかもしれない以上は開けざる負えないだろう」
私は意を決して箱の蓋に手を掛ける。
「……あけるぞ」
「……うん!」
大きく深呼吸をして一気に蓋を開け放つ。
「……これは?」
箱の中には懐中電灯のような形の物が入っていた。明かりが点灯する所が黒いカバーに覆われているから、懐中電灯ではないみたいだ。
「箱に入っている紙、説明書じゃない?」
シースに言われて箱の中に紙が入っていることに気が付き、開いて読んでみる。
『ネットランチャー:側面のスイッチを押すことで拘束用のネットが発射される。ハンターに放つことで動きを一定時間止められる』
ハンターの動きを止められるのか。これは便利だ。
「あら、結構良いものね。これでハンターが来ても対処できるわね」
2人同時には対処できないから万能ではないが、対抗手段があるのは心強いな
「この部屋はこんなものか?」
「そうね、次の部屋に行きましょう」
私はネットランチャーをアイテムボックスに入れて客室を出る。すると、廊下の曲がり角に誰かが立っているのが見えた。あれは……ロワ?
ロワもこちらに気が付いたのか手錠が付いていない方の手を大きく振る。
「おーい、ミエルさーん!無事ですかー!」
「勿論だ!ナップはどうした!」
「ミルさんから逃げて疲れたみたいで、休んでます」
「はぁはぁ、シース!ミルってあんなに早いのか!」
「当たり前でしょ!ミルはバフ系スキルのエキスパートよ!ちょっとやそっとで逃げ切れる訳ないじゃない!」
ロワの手錠の鎖は曲がり角の奥に続いている。鎖の角度からナップは座り込んでいるみたいだ。
「ミエルちゃん、申し訳ないんだけどナップの様子を見てもいいかしら?あんな奴でも仲間だし心配なのよ」
「私は構わない」
シースの希望からナップの様子を見にロワの方へと向かう。
「ロワ、何があったんだ?」
「探索をしていたら、ミルさんに見つかってしまいまして。必死に逃げて撒きましたがナップさんがつかれてしまって」
「バフ系のエキスパートからよく逃げ切れたな」
「僕たちもよくわからないんですけど、必死に逃げている内にいなくなってまして」
曲がり角までたどり着いた私たちはナップの様子を見る為に角を覗く。
「ほら、この水でも飲んで落ち着きなさ……い?」
曲がり角を覗いた私たちの目にはありえない光景が広がっていた。
「ナップが……いない?」
曲がり角の先にはナップはおらず、手錠が廊下の椅子に乗っているだけだった。
驚いた私たちはロワの方へ視線を向けると、いつもと同じようにやさしい目元で微笑んでいた。いつも見ている筈だが、今は不気味で恐ろしい。
ロワはいつもと変わらない、やさしい声で私たちに語り掛ける。
「まったく、不用心にも程がありますよ……なあ、ミエル?」
「!?」
状況を理解した私は咄嗟に飛びのこうとしたが、既にロワに手を掴まれていた。
「くっ!騙したな!」
「知ってるか?騙される方が悪いんだぜ?」
そう言うと、ロワは首筋に手を当て、皮を一気に引きはがす。皮の下にはロワではなくホウリの顔があった。
「え?……え?」
まだ事態を飲み込めていない様子でホウリの顔を見ているシースに説明をする。
「ロワはこいつの変装だ。さっきのナップの声もホウリのモノマネだ」
「……あっはっは、なるほど!これは一本取られたわ!」
手を叩いて大笑いするシース。騙されてもここまで大笑いできるなんて、なんて心が広いんだ。
「とりあえず、さっきの部屋で10分間待機だ。この砂時計で時間を計って、10分経ったら出ていいぞ」
「……分かった」
見事に騙された私たちは、ホウリから砂時計を受け取り、寿司を食べた部屋へと向かうのであった。
☆ ☆ ☆ ☆
「ホウリの奴、卑怯な手段を……」
「でもさ、あそこまでクオリティが高いと笑っちゃわない?」
私たちは部屋に置かれていたお茶菓子を食べつつ10分経つのを待っていた。
「そういう問題じゃない」
「あら、ミエルちゃんもしかして……」
シースは私の顔を見つめてニヤニヤと笑う。
「騙された事に怒っている訳じゃなくて、変装を見破れなかった自分に怒っているんじゃない?」
図星を付かれた私は茶菓子の包みを剥いでいた手が止まる。そんな私にシースはお茶を飲みながら話す。
「気にしない方がいいわよ。あれは技術力が高すぎるわ。遠目どころか近付いても気が付かない程よ。私の見立てが正しければ、ホウリ君は何年も変装の修行をした天才ね」
「……それでも、私はロワの事を間違えたくないんだ」
私の言葉を聞いた後、シースは驚愕の表情になったがすぐに柔らかい笑みへと変わる。
「ミエルちゃんって本当にロワ君の事が好きなのね」
「ゴホッゴホッ、何を言っているんだ!」
お茶が気管へと入り思わずむせてしまう。そんな私の手を握ってシースはまっすぐ私の目を見てくる。
「そのまっすぐな思い、気に入ったわ。私に出来ることがあったら何でもいってね」
「あ、ありがとう……」
思わずシースから目を背けると板場に置いてある海鮮丼の器が目に入った。その瞬間、私はとある違和感を覚えた。違和感の正体を探るためにシースに質問をする。
「シース、海鮮丼を食べた時なんだが」
「海鮮丼?美味しかったわよ?」
「食べている時じゃなくて、その前の事が聞きたい」
「その前?」
私の言っていることが分からないのか首を傾げるシース。
「ああ、その海鮮丼、誰から受け取った?」
「誰ってミルだけど?」
ミル、確かホウリと一緒にハンターをやっているんだったな。そういえば、説明の時にも少し違和感があったな。
考え込んでしまった私にシースが心配そうに話しかけてくる。
「いきなり黙っちゃってどうしたの?」
「……なんというか、のどに小骨が刺さったような違和感があって」
そうだ、終了条件も少しおかしい。なぜホウリはあんな事を付け足した?
「……もしかして?」
「何か気が付いたの?」
「シース、パーティーの中で頭のいい順位を聞かせてくれ」
「そうねぇ、ミル、ナップ、ボローネ、パンク、私って所かしら?意外かもしれないけど、私以外のみんなは頭の回転は良いのよ?」
「なるほど」
ホウリは基本的には平等の精神が強い。ということは、やっぱり……。
「もしかしたら、コインの在りかが分かったかもしれない」
「本当!どこにあるの!」
「コインの在りか、それは……」
次回に続く
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