魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第五十九話 テンション上がるニャー!

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─────猫─────
この世界にも猫はおり、体の造りや習性は地球のものと全く同じになっている。猫は街の中にも多数存在しており、野良猫も見かけることが出来る。なぜ猫はいるかというと神が猫派なため、わざわざ猫を創ったのだという。そのためこの世界には犬は居ない。────────Maoupediaより抜粋



☆  ☆  ☆  ☆ 




「うーん、このテリーヌは美味しいです」
「この鳥の炭火焼きも美味い。うちのシェフ顔負けだな」
「一度食っただけで同じものが作れるとは、便利な男じゃ」
「それは誉め言葉として受け取っておく」


 ある日の昼、私たちはホウリが作ったフルコースに舌鼓を打っていた。メニューはエンゼおじちゃんの家で出たフルコースと同じ、ロワが味わえなかったからホウリが気を利かせてくれたみたいだ。味に関してはうちのシェフと同等、いやそれ以上だった。この男、真っ向勝負以外は何でも出来るのだな。
 私たちがフルコースを堪能しているとホウリがエプロンを外しながら外出の準備をする。


「俺はそろそろ行く。後片付けは任せたぞ」
「うむ、行ってまいれ」
「いってらっしゃーい」


 ホウリは支度を手早く済ませると、急いで家から出ていったのだった。その様子を見ていたロワは心配そうに呟く。


「王都に来てからホウリさんは忙しそうですね」
「しょうがないだろう、時間が無い中で情報収集や物資調達をしているのだからな。申し訳なく思うのならば私たちに出来ることをやればいい」
「そうですよね」


 ロワが笑顔になってデザートのリンの実のシャーベットを口に運ぶ。だが、この空間に一人だけ浮かない顔をしている人物が居た。


「どうしたんだフラン?」
「この料理の食材はホウリが用意したんじゃよな?」
「そうだな、前のフルコースと同じものを作るためにホウリが用意した」
「その他にも色々な物を準備したりしているな?」
「そうですね」


 フランは皿の上にスプーンを置くと真剣な表情で私たちを見据えてくる。


「わしは常々気になっておった」
「なにが?」
「ホウリが普段何をしておるかじゃ」
「確かにな」


 ホウリの情報収集能力の高さや顔の広さの秘密は何か、気にならないと言えば嘘になる。


「気にはなりますがどうするんですか?」
「奴の後をつけようと思う」
「それは無理だろう」


 ホウリの後をつけるのは不可能に近い。どれだけ気配を消そうとしてもすぐに気付かれてしまい撒かれるてしまう。私も何度かホウリの後をつけてみたが、全て1分も立たずに気付かれた。あの速度は私の尾行の技術が拙いだけでは説明が出来ない速さだ。


「仮に姿を消せたとしてもホウリに見つからない自信は無いぞ」
「そうですよ、止めておきましょう」


 私たちが反対するとフランは不敵に笑った。


「ふっふっふ、わしを誰だと思っておる?世界最強である魔王、フラン・アロスじゃぞ?不可能な事などない」
「何か考えがあるのか?」
「もちろんじゃ。皆で手を繋いで円を作ってくれ」


 私たち四人は席を立って手を繋いで円を作る。


「そのまま目をつぶるんじゃ」
「こうか?」


 私たちはフランに言われるがまま目をつぶる。すると、


「うわぁ!」
「おー!すっごーい!」


 私たちを上から見下ろしている光景が頭に広がった。なんだこれは!?


「これは視覚と聴覚を周りに飛ばせるスキルじゃ。普通はこの家の範囲程度しか視界を飛ばせぬのじゃが、わしにかかれば王都を隈なく見ることが出来る」
「飛ばした視覚と聴覚を別のスキルで私達の頭に流し込んでいる訳だな」
「その通りじゃ。これならば万が一にもバレることはないじゃろう」
「凄いです!早くホウリさんを追いかけましょう!」
「その前に、目を開けると送っている光景と目で見ている光景が混ざって気持ち悪くなるから気を付けるんじゃぞ」
「分かった、気を付けよう」

 
 視界は玄関を通り過ぎたかと思うと表の通り出た。


「ホウリさんは……いませんね」
「少し遅かったか」
「心配いらん、高い所から探せばよい」
「それはどういう────」


 私がしゃべり終わる前に視界が一気に空へと上昇する。


「うおっ!びっくりした!」
「凄いですよ!通りが一望できます!」
「ホウリを見つけたら場所を教えてくれ。視界を動かしてホウリを追跡する」
「了解」


 隈なく見てみるが、昼過ぎという事もあり通りには人が多い。この中からホウリを探すのは骨が折れそうだ。


「ホウリ、ホウリ……」
「見つかりませんね」
「あ、パン屋の前にいるのホウリお兄ちゃんじゃない?」


 ノエルの言葉に全員がパン屋に注視すると、ホウリが通りを歩いているのが見えた。


「お手柄じゃ、ノエル」
「へへーん」


 得意げなノエルの声を聞きながら視界が一気に地面まで下降する。身体が無事だと分かっていても急な下降は内臓が寒くなるな。なるべく控えてもらいたいものだ。
 視界はホウリの後ろに急接近すると、ホウリから2、3mの距離で尾行を始める。


「ふぅ、これで尾行が出来ますね」
「ホウリお兄ちゃんはどこに行くのかな?」
「わしの予想は裏路地の情報屋で怪しげな取引をしているのではないかと思う」
「普通に街で聞き込みとかですかね」


 各々で勝手な予想をしているとホウリがとある店に入っていった。店の看板には『ヒートメタル』と書いてある。家の近くにある安めの食堂だ。この時間であれば食事をする客でにぎわっているだろう。


「お昼ご飯食べるのかな?」
「そういえばホウリさんはお昼を食べてませんでしたね」
「とりあえず入ってみるぞ」


 食堂の中に入ってみると予想通り客でにぎわっていた。


「チャーシュー麺おまち!」
「ホイコーローまだなんだけど!」
「すみませーん!タンタンメンとチャーハン追加で!」
「はいよ!」


 客の話声や笑い声、注文を取る声で店内は満たされている。だが、どこの席にもホウリの姿はない。


「ホウリはどこだ?」
「うーん、あ!キッチンにいる人、ホウリお兄ちゃんじゃない?」


 ノエルの言葉通り、キッチンにはホウリらしき人物が中華鍋を振っていた。そいつに近付いてみると、まぎれもなくホウリであることが確認できる。
 ホウリが料理を作っていると店長が大慌てでキッチンに入ってきた。


「ホウリ君!天津飯とタンタンメンとチャーハンとホイコーローとチャーシュー麺追加で!」
「分かった、全部料理出来ているので持っていってくれ」
「助かるよホウリ君」
「礼は客足が減ってから聞いてやる」


 そう言うと、ホウリは4つのコンロに鍋を置き同時に調理を始める。一つの鍋には卵を入れてかき混ぜて、卵に火が通る合間に別の鍋にホイコーローの野菜を投入する。ホイコーローを炒めつつ、ラーメンに乗せるチャーシューを手際よく切る。


「よくもあれだけの料理をいっぺんに出来るのう」
「チャーシューを片手で切るのって相当難しい筈だ。それを鍋を炒めながらするとは……」


 右手と左手で別々の作業をしているため、あっという間に料理がすべて完成する。まるで手品を見ているような気持になるな。
 ホウリは出来上がった料理をお盆の上に乗せて、席へと運んで行った。


「配膳もするのか」
「かなり忙しそうですね」
「じゃがホウリの顔には汗1つ浮かんでおらん。まだ余力があるのかのう?」


 あれだけやってまだ余力があるのか。末恐ろしい奴だ。
 私たちが観察しているしている間にもホウリはせわしなく働いている。


「タンタンメンとチャーハンお待ち!」
「お、ホウリじゃねえか。どうしたんだ?」
「店長がバイトが来れないから店を開けられないって嘆いていたからランチタイムだけ手伝ってるんだ」
「へー、お前も大変だな」
「他人事みたいだが、俺が居なかったらお前らも飯が食えてないんだからな?感謝しろよ?」
「ははー、ホウリ様ー」
「嘘くせえ」


 客と話しながらも開いた容器を回収したりとホウリの手は動き続けている。その様子を見ていたロワが不思議そうに呟く。


「うーん、忙しそうに働いていますけど情報収集しているようには見えませんね」
「ホウリ曰く、人と親しくなっておけば情報が入りやすくなるみたいじゃ。今は客や店長の好感度を稼いでおる段階なんじゃろ」
「そんなものか」


 勝手なことをワイワイと言い合いながら私たちはホウリの働きぶりを眺めるのであった。


☆☆1時間後☆☆


「おつかれさーん」
「はいはい、おつかれ」


 客足が無くなった店内でホウリは煙草をふかしている店長と話をしていた。


「いやー、バイトが全員来れないと聞いた時はどうなるかと思ったね」
「本当だよ、俺が居なかったら営業できてなかったぜ?」
「そこは本当に感謝しているよ。けど良いのか?本当に給料もらわないで?」
「困ったときはお互い様だろ?俺が困っている時に助けてくれればいい」
「そうか。ならお言葉に甘えて」

 
 店長は煙草の煙を吐くと、キンキンに冷えたビールを呷る。


「かあ、仕事終わりのビールは格別だな」
「そういえば、前に店に来た時も忙しそうだったよな?確か有名人が来てたとか?」
「そうなんだよ、次の闘技大会で優勝候補と言われている人が来てな。その時もバイトがさぼっていて大変だったよ」


 店長は仕事が終わってリラックスしているのか、饒舌になっている。なるほど、仕事終わりの状況を狙ったのか。こういう感じで情報を得ていく訳だな。
 ホウリは店長と10分程話した後に店を後にした。


「情報収集もちゃんとしていたんですね。安心しました」
「当たり前じゃろうが。ほれ、さっさと追うぞ」


 店から出たホウリの後を再度追う。すると外は少しだけ日が傾いていおり、人通りは少なくなっていた。そんな中、ホウリは悠々と通りを歩いていく。


「今度はどこにいくんでしょうかね?」
「今度はケーキ屋さんで働くとか?」
「流石にもう食べ物屋で働く事はないじゃろ」


 私達がいろんな考えを巡らせていると、ホウリは大通りから外れて路地裏に入っていった。


「関係ないですが、こういう路地裏に入るとワクワクしません?」
「確かにのう。冒険をしている感じがたまらなく良い」
「私も偶に路地裏に入ることがあるのだが、いい雰囲気の雑貨屋を見つけると気持ちが高ぶってくるものだ」
「そうだったんですか。時間が出来たら皆で探検でもします?」
「ノエルもしたーい!」
「すべてが終わったらそれも悪くないのう」


 夕日で真っ赤に染まっている路地裏をホウリが歩いているを見て、私たちはお喋りに花を咲かせる。
 すると、ホウリが急に立ち止まり視線がとある一点に向いた。視線の先を見てみると、木の箱の上で一匹の白い猫が昼寝をしている所だった。


「かわいー、撫でてみたい!」
「そうですね、毛並みもふわふわで気持ちよさそうです」
「野良猫にしては綺麗すぎるのう。飼い猫か?」


 フランの言う通り、猫の首には首輪がついており、円柱状の名札が付いている。どこかの飼い猫に間違いないだろう。
 ホウリが猫に近付くと、猫はゆっくりと目を覚ました。猫が目覚めた事に気が付いたホウリはゆっくりと猫に近付き、猫の目の前に手を伸ばした。猫はホウリの匂いをしばらく嗅いだ後、足にスリよってきた。ホウリは猫に手を伸ばすと顎の下やお腹を優しく撫でまわした。


「いいな、ホウリお兄ちゃん」
「流石に手慣れてますね」
「警戒心が全くない所を見ると、何度か触れ合っているのかもしれぬのう」


 こんな可愛い猫と何度も触れ合っているなんて羨ましい!……今度こっそりと連れて行ってもらうとしよう。
 ホウリは何分か猫と触れあうと、ポケットから猫のえさを取り出して木箱の上に置いた。すると、猫は木箱の上に飛び乗って、置かれたえさを夢中で食べ始める。その光景を満足そうに見たホウリは路地裏の奥へと歩いていった。


「ホウリにこんな趣味があったとはな。意外だ」
「毎日頑張っていますし、このくらいの楽しみがあってもバチは当たりませんよ」
「ねーねーミエルお姉ちゃん、この家でにゃんこ飼いたいんだけどダメ?」
「ママが猫アレルギーだから難しいな」
「そっか……」


 猫を堪能したホウリは路地裏を抜けて別の大通りへと入っていった。日が地平線に消えていく時間帯ということもあり、仕事帰りの人達が多く見受けられる。


「そろそろ夜ですね、次はどこに向かうんでしょうか?」
「そうじゃな、バーとかで聞き込みをするとかかのう?」
「それかっこいいですね。僕も今度やってみましょう」
「顔に布を付けた怪しい輩とはだれも飲みたがらぬと思うがのう」
「布を取るぐらいだったらバーには近付きません」


 エンゼおじいちゃんの家の事がまだトラウマになっているらしい。立ち直るのには時間がかかりそうだな。
 私たちはやいやい言いながらホウリの行方を追うと、今度は小さな店の前で立ち止まった。看板には「bar ルナトリガー」と書かれている。


「ほらのう!わしの言った通りじゃ!」
「いや、まだバーテンダーになるという可能性もあるぞ」
「どちらにせよ入ってみればわかりますよ」


 ホウリの後に続いてbarの中へと入る。barの中は広すぎず狭すぎずといった大きさで、照明は明るすぎず落ち着いた雰囲気だった。かすかに聞こえるジャズも雰囲気にあっている。店内にはバーテンダーが一人とカウンターに数人の客がいるがホウリの姿は見当たらない。


「この店であってますよね?」
「ああ、全員がこの店に入ったのを確認したから間違いないだろう」
「じゃあ、ホウリお兄ちゃんはどこにいったの?」


 私たちが頭を傾げていると、一人の女性客がbarの奥の個室へと入っていった。


「フラン、今の見たか?」
「ああ、十中八九あの個室にホウリがいる。ついていくぞ」


 女性客が入っていった個室の中へと視界を移動させる。すると、案の定ホウリと女性客が四角いテーブルをはさむ形で対面していた。


「何をしとるんじゃこいつは」
「見てたら分かるんじゃないですか?」


 私たちがかたずをのんで見守っていると、女性客がおもむろに口を開いた。


「彼氏に浮気されているんですけどどうしたらいいんでしょうか?」


 ……これってもしかしなくても?


「これ恋愛相談ですよね?」
「恋愛限定かは知らぬが相談室みたいじゃな」


 barの奥で相談室やっているのか!?色々とやりすぎではないのか!?
 私たちの驚愕をよそにホウリは女性客に質問する。


「詳しく話を聞かせてくれないか?」
「実は……」


 女性客は堰を切ったように話し始めた。
 ホウリは黙って話一通り聞くと笑いながら口を開いた。


「つまりは、彼氏が他の女性と歩いているのを見ちゃった訳だ」
「そうなんです!彼氏に直接聞こうかと思ったんですけと、怖くて聞けなくて……」
「確かに怖いよね。その女性に見覚えは?」
「前に同級生って紹介された人でした」
「なるほどね。二人はどこに?」
「色んな宝石店に行ってました。夜にはこの店にも来ていたんですよ」


 ホウリは頷きながら女性の言葉に耳を傾ける。すると、それを見ていたロワが不安そうに喋り出した。


「……これって僕達が聞いてもいいんでしょうか?」
「確かに他人のプライベートを聞くのは良くない気がするな」


 ある程度の内容は聞いてしまったが、今からでも聞かないようにした方が……


「ロワ、ミエル、シュレディンガーの猫は知っているか?」
「知っている。簡単に言えば箱を開けるまで猫が死んでいる状況と生きている状況の二つが存在しているという話だろう?」
「……ああ、その話でしたか。知ってます知ってます」


 確実にロワは知らなかったな。
 私の言葉にフランは満足そうに話し出す。


「状況を確認するまではどっちか分からんという事じゃな」
「何が言いたい?」
「つまり、相手がわしらを確認できぬならば、わしらは居ないのと同じという事じゃ」
「いや、そのりくつはおかしい」
「そうですよ!バレなくてもこういった事は止めるべきです!特に浮気といったデリケートなことは……」
「ちょっとまて、その認識は間違っておるぞ」
「へ?どういう事だ?」
「見ておったら分かる」


 言葉の意味が気になった私達はフランの言葉通り、女性の相談を聞くことにする。
 女性は一通り話し終わると机に突っ伏して泣きだしてしまった。


「もう嫌!愛していたのに裏切られるだなんて!私耐えられない!」
「本当に裏切られているんですかね?」
「ぐすん……どういう事?」
「失礼ですが、もうすぐ誕生日か何かがあるんじゃないですか?」
「なんでわかるの!?」
「やっぱり」


 女性の言葉で何かを確信したのか、ホウリは笑いながら話を続ける。


「恐らく、彼氏さんは誕生日のプレゼントを選んでいるのでしょう。一緒にいた女性はプレゼントを選ぶのに付き合っていたと考えるのが妥当ですね。この店に来たのも夜にあなたと来るためでしょう」
「……そんなの想像じゃない」


 女性の言葉にホウリは笑いながら首を縦に振る。


「確かに想像です。しかし、浮気されているというのも想像にすぎません。そうですね?」
「…………」
「僕からのアドバイスとしては、彼氏さんと話し合ってみることをお勧めします。どちらの場合もあり得ますが、確かめないと不信感だけが募りますからね」
「もしも浮気されていたら?」
「その時は……」


 ホウリはいたずらっぽく笑って胸に手を当てて話す。


「また僕に相談しに来てね」
「……分かった。私、彼氏と話してみる。ありがとう」


 女性は流していた涙を拭うと笑顔で部屋から出ていった。


「なるほど、浮気は女性の勘違いだったという事ですね」
「話を聞く限りではな。本当に浮気されておる可能性もあるじゃろうが、それはわしらは知らんでもよい」
「確かにな」
「それにしても、話を聞いただけでそこまで分かるとは流石はホウリさんです……ん?ホウリさん何か書いてませんか?」


 ロワの言う通り、女性客が出て行った後、ホウリは紙を取り出して何かを書いている。


「何を書いているんでしょうか?」
「少し近くに寄ってみるか」


 フランが視界を移動させ、紙に書かれた文字を見えるようにする。さて、何が書かれているかな……


『フラン、ロワ、ミエル、ノエルへ。流石に相談室に来るのはやり過ぎだ。今日はここまでにしておけ』


 文字を読んだ瞬間、私たちの全身に寒気にも似た何かが通り抜ける。そして、視界は暗くなりホウリやbarの景色は見えなくなった。目を開いた私たちは何を言う訳でもなく、お互いの顔を見合わせる。
 数分間、全員黙っていたが、フランが口を開いた。


「バレたのか?」
「気配も完全に無いんですよね?なぜ気付かれたんですか?」
「分からぬ、じゃが一つだけ言えることがある」


 フランは青白い顔になり体を細かく震えながらも話を続けた。


「以降、ホウリの後をつけようなど思わぬほうが良い」


 この日以降、パーティー内では『ホウリの後を追うべからず』という暗黙のルールが追加された。
 また、私たちは片付けていない食器類を帰ってきたママに見つかってしまい、こってり絞られるのであるが、それは別のお話。
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