魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第六十五話 騙して悪いが

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──────聖域──────
聖戦が行われる戦場の事を聖域という。聖域の特徴として戦場の丈夫さが他の戦場がある施設よりも高いことにある。また、秘匿性を高くするために破壊された場合でも瞬時に修復される。また、聖域の壁を破壊することが出来たのは過去500年で3人である。──────Maoupediaより抜粋




☆  ☆  ☆  ☆ 



 次の日の朝、僕らは皆で聖戦専用の施設である『聖域』に来ていました。受付でホウリさんが受付をしている間、僕は弓や矢の最終チェックをします。必要な矢は揃っていますし弓の弦も完璧です。後は僕の集中力の問題です。


「集中……集中……」
「ロワお兄ちゃん、大丈夫?お水飲む?」
「ありがとうノエルちゃん」


 ノエルちゃんからコップを受け取って中に入っている水を飲み干します。


「ふう」
「怖い顔してたけど大丈夫?」
「実はそんなに緊張していないし大丈夫だよ」
「そうなの?大事な勝負なんでしょ?」
「そうなんだけど、ミエルさんからお墨付きを貰いましたし、ホウリさんから必勝法を教えてもらいましたし大丈夫だよ」
「そうなんだ!頑張ってね!」
「うん!」


 満面の笑みのノエルちゃんに僕も笑顔を返します。
 僕が精神を集中させていると受付けを終えたホウリさんがやってきました。


「受付終わったぞ」
「カロンの奴は来ているのか?」
「まだだ。少し遅れているみたいだな」
「そうか」


 ホウリさんと話すミエルさんは緊張の面持ちです。この聖戦の結果で自分の今後が決まるのですから無理もないでしょう。僕が少しでも不安を和らげられたらいいのですが。


「ミエルさん、安心してください。僕はかならず勝ちますから」
「……そうだな、任せたぞロワ」

 
 僕の言葉を聞いたミエルさんは無理やり笑顔を作ります。僕に心配をかけないようにしているのでしょう。こうなれば早々に終わらせてミエルさんを安心させましょう。


「む?カロンが来たようじゃな」


 フランさんに言われるがまま扉へ目を向けると、ミエルさんの家で見た金髪の男、カロンさんが現れました。傍には鎧を付けたお付きの騎士であろう人達が何人かいます。
 カロンさんは僕らを見つけると真剣な表情で受付へと向かって行きました。


「意外じゃな、ミエルを見つけたら速攻でちょっかいを掛けに来るのもと思っておったのじゃが」
「確かにな。あいつの性格上、私を見かけて話しかけに来ない筈がない。何かあったのか?」
「あいつも後がないからな。余裕がないんだろう」


 確かに勝負に負けたらカロンさんの目的からは遠のきます。カロンさんもこの戦いに必死なんですね。ですが僕も負けません。なんてったって必勝法があるんですから。


「ロワ様、受付までお越しください」
「はい!」


 名前を呼ばれた僕は意気揚々と受付へと向かいます。受付に着くと不愛想なカロンさんと笑顔の受付のお姉さんが居ました。お姉さんは恭しく一礼して口を開きます。


「カロン・ボーン様とロワ・タタン様でお間違いないでしょうか」
「ああ」
「間違いないです」
「かしこまりました。これから控室にご案内いたしますが、その前に今回の聖戦の内容を確認いたします」

 
 そういうと、お姉さんは一枚の紙を取り出して読み始めました。


「今回のルールは模擬戦、相手の体力を半分以下にした方の勝利となります。降参はありで持ち込みのアイテムに制限はございませんがステータスを上昇させるアイテムの使用は禁止になります」


 対戦の内容は事前にホウリさんから聞いてましたので特に驚きはないです。僕らが黙って聞いている中でお姉さんの説明は続きます。


「ロワ・タタン様が勝利された場合、カロン・ボーン様はミエル・クラン様の所属する団体には所属できなくなります。カロン・ボーン様が勝利した場合はミエル・クラン様はカロン・ボーン様と婚姻を結ぶことになります。お間違いないでしょうか?」
「間違いない」
「間違いないです」
「かしこまりました。では、控室にご案内いたします」


 僕らはお姉さんに連れられるがまま、控室へと向かったのでした。


☆  ☆  ☆  ☆ 


「見学の方はこちらへどうぞ」


 ロワとカロンが控室へ案内された後、俺達は見学席へと案内される。
 見学席へとつながっている廊下を歩いていると、唐突にフランから声を掛けられた。


「ホウリ、一つ良いか?」
「なんだ?」
「さっき言っておった必勝法とはなんじゃ?」


 俺は後ろを歩いている騎士たちを一瞥するとフランに念話の合図を送る。


『どうした?』
『後ろに対戦相手の仲間がいるだろうが。表立って説明できるか』
『む、それもそうか』


 俺の言葉を聞いたフランも後ろの騎士たちを一瞥する。騎士たちは必勝法という言葉を聞いてからこちらを睨むように見ていた。カロンの奴に伝えられるとも思えないが用心するに越したことはないだろう。


『とりあえず説明は全員にするからミエルとノエルにも繋いでくれ』
『了解した』


 数秒後、頭の中にミエルとノエルの声も響いてきた。


『どうしたの?』
『なにかあったのか?』
『大した用事じゃない。ロワに教えた必勝法って奴を伝えておこうと思ってな』
『必勝法?昨日の夜ご飯で言ってたことか?』
『ああ、見れば分かると思うが一応な』


 廊下を抜けるとそこには戦場になる丸く大きな広場があった。広場の半径は約80mと大きくそれを見下ろす形で観客の席がある。コロッセオの観客席と言えば分かりやすいだろうか?


「ロワ・タタン様の応援はこちらの席へ。カロン・ボーン様の応援はこちらの席へお進みください」


 それぞれの観客席へと移動しとりあえずは騎士たちと距離を取る事が出来た。だが、聞き耳のスキルがある可能性もあるから念話を続ける。


『カロンの弱点は精神力の低さにある』
『他も高いとは言えんじゃろ』
『ステータスやスキルは並程度はあるんだよ。だが、精神力は並以下だ』
『確かに奴は昔からそうだったな。学生の頃は教官に「騎士に大切な物は精神力だ!もっと気持ちを強く持て!」って叱られていたな』
『つまりはその精神力を突くと?』
『そういう事だ』


 俺達が話していると戦場にロワとカロンが入場してきた。両者とも真剣な面持ちだがカロンの方が心なしか緊張の色が強い。両者が指定の位置へ着くとそれぞれが弓や盾を構えて戦闘態勢になる。


「これよりカロン・ボーン対ロワ・タタンの聖戦を開始する」


 アナウンスが響き渡り聖域の壁に両者の顔とHPを表すバーが表示される。HPが減るごとにバーが減っていき半分以下になると負けになるって訳だ。観客にもどちらが優位か分かりやすいシステムになっている。


『して、肝心の必勝法とはなんじゃ?』
『精神力が低いってことは心が折れやすいって事だ。だったら勝てないと思わせて降参させた方が手っ取り早い』
『その方法は?』


 両者が武器を構えると再び聖域にアナウンスが響き渡る。


「それでは────始め!」


 開始の合図と同時にロワが矢筒から青く輝く1本の矢を取り出して弓へと番える。同時にカロンは盾と大剣を構えながらロワへ向かって走り出す。


『まずは純正トリシューラを構える。そしてMPを込めて……』


 ロワは向かってくるカロンに向かって弓を引き絞りトリシューラにMPを込めていく。トリシューラの青い輝きが次第に強くなっていき輝きが最高潮に達した瞬間────


『カロンの背後の壁を思いっきりぶち抜く』
(ドゴォォォォン!)


 トリシューラは一筋の青い光になりカロンの背後の壁に大穴を開ける。穴から控室の壁をもろとも貫いて外の景色が確認できる事からトリシューラの威力の凄まじさが実感できる。カロンは破壊された背後の壁を呆然と見つめている。


『その後にカロンに向かってこう言う』


 ロワはトリシューラの複製をカロンへと引き絞り叫ぶ。


「次は当てます!」


 聖域に限らず戦闘の施設の壁は丈夫に作られており戦闘中に破壊されないようになっている。聖域は何かを賭けて戦闘をするという特性上、普通の戦闘の施設の壁よりも3倍は固い壁で作られている。そんな壁を何枚もぶち抜く威力の攻撃を目の当たりにしたんだ。呆然とするのも無理はないだろう。
 その光景をみたフランは感心したように念話を使わずに話す。


「なるほどのう、確かにこれを見せられてまだ戦おうと思う者は多くはおらんじゃろう」
「この威力を耐えられるのはフランかミエルだけだ。心を折るのにこれ以上の手段は無いだろう」


 俺達が話している間に破壊された壁が自動で修復されていく。その様子を見ていたノエルは興奮したようにピョンピョンと跳ねる。


「凄い!壁が勝手に直ったよ!」
「聖域の壁は特別製じゃからな。後は闘技大会の闘技場に自動修復機能があるぞ」
「じゃあ、闘技大会でも壁が直る所が見られるの?」
「そう簡単に壊れるものじゃないから期待はするな」


 そんなに簡単に破壊されてたまるか。 
 修復された後もカロンは呆然と壁を見つめている。その様子を見ていたミエルは確信したように頷く。


「勝負ありだな。カロンには戦う気力はない」
「そうだな」


 ロワも同じことを考えているのか引いていた弓を下す。対するカロンも盾と大剣を下ろす。誰が見ても勝負は見えている、全員が同じことを思った瞬間、


「……うおぉぉぉぉ!」


 カロンが再び大剣を構えてロワに向かってきた。


「へ?」


 何が起こったのか分からずに突っ立っているロワへ大剣が振り下ろされる。


「うわっ!」


 ロワは大剣が命中する瞬間にバックステップで距離を取ろうとする。だが、完全には避け切れず左の肩へ大剣を受ける。


「な!?なぜ戦おうとする!?なぜ闘志が衰えぬ!?」
「しかも私が見た時よりも素早い!それにロワは左肩を負傷しているからヒールシュートも使えない!一気に形勢が不利になったぞ!」


 フランとミエル目の前の光景に驚愕する。そして、フランは俺の胸倉をつかむと壁へと叩きつける。


「ホウリ!トリシューラを使えば必ず勝てるのではないのか!」
「当てが外れたな。あの様子を見る限りカロンもかなりの覚悟を持っているみたいだ。それこそ死ぬ以上の覚悟をな」
「簡単に言うが、この勝負にはミエルの今後が掛かって……まさか」


 俺の反応を見てある出来事に思い当たったのか、フランの手に力がこもる。


「この状況、ホウリが仕組んだ事か?」
「さあな」
「貴様!」


 フランがもう一度俺を壁に叩きつける。衝撃で肺の中の空気が無くなり意識が無くなりそうになる。そんな俺を見下ろしてフランは軽蔑の視線を向ける。


「この戦いの意味が分かっておるのか!ここでロワが負けたらミエルは!」
「分かってる」


 呼吸を整えて俺は立ち上がる。


「確かにカロンがまだ闘志が失わないのは俺の仕業だ」
「なぜだ!」
「ロワのためだ」


 俺は戦場で戦っているロワを指さす。


「確かにロワは強くなった。普通に戦えばカロンに負ける事は無いだろう。だが、それによってロワの悪癖が出てしまった」
「ロワお兄ちゃんの悪癖?」
「ロワには相手が格下の場合に油断する癖がある」


 グランガンで俺がロワを戦った時も俺の事を格下と思い込んで油断していた。あの時と同じように今回もカロンを格下と侮り勝負に挑んだ。これは将来命取りになりかねない危険な癖だ。


「誰が相手でも油断せずに戦う。それが出来ないとあいつは近いうちに大切な物を失うだろう」
「……じゃが、それを教えるのは今回の戦いでなくてもよいのではないか?」
「ミエルという大切な仲間が掛かっている今回の戦いじゃないとダメだ。じゃないとあいつは本気にならない」
「ええい!まどろっこしい!まずは貴様が何をしたかを全部話せ!」


 俺の話に焦れたミエルがイラついたように話す。


「分かった。俺が何をしたかを話そう」


 そんなこんなで俺は昨夜の事を話し始める。


☆  ☆  ☆  ☆ 


 ロワがカロンを軽く見ていると感じた俺はカロンがいる別荘へと向かった。
 カロンの屋敷は両親が騎士団の重役であることもあり、普通の騎士よりも数倍は大きい別荘に住んでいた。それでもカロンの両親から訪問の許可をもらった俺はメイドに案内されるがままカロンの部屋へと向かう。
 カロンの部屋へと着いたメイドは扉をノックして部屋の中に声をかける。


「カロン様、お客様がお見えです」
「……今夜は誰も通すなと言ったはずだが?」
「急ぎで重要な用があるというお客様でしたのでお通しいたしました」
「……ともかく今夜は帰ってもらえ」


 声を聞くだけでも相当グロッキーである事が伺える。俺はメイドに下がるようにジェスチャーをして部屋の中へ声をかける。


「カロン、俺が分かるか?」
「その声は!?」


 俺が声をかけた瞬間、カロンは大慌てでドアを開け放った。
 カロンは俺の姿を確認すると強い憎しみを込めて睨みつけてくる。


「貴様ぁ!何の用だ!」
「お前の両親にお前を元気付けるように言われてな」
「黙れ!貴様と話すことはない!」
「へえ、じゃあ明日まで負けるかもしれない恐怖に怯えている訳だ。俺はロワが勝てばそれでいいから正直お前の事なんてどうでもいいし、言われた通りに変えるとするか。じゃあな、明日を楽しみにしているぜ」
「……待て」


 俺が廊下を引き返そうとすると、カロンに呼び止められる。


「どうした?」
「一つだけ聞かせろ、貴様は何の為にここへ来た?」
「さっきも言ったろ、両親にお前を元気付けるように言われたんだよ。お前の両親には色々と世話になっているしアドバイス位はしようと思っただけだ」
「……とりあえず部屋に入れ」
「じゃあお言葉に甘えて」


 誘われるがまま俺はカロンの部屋へと入る。カロンが椅子に座ったのを見て俺は壁にもたれかかる。


「それで、何をアドバイスしてくれるんだ?」


 不機嫌そうなカロンに俺は話し始める。


「その前にカロンが考えている事を当ててやろう」
「俺の考えている事だと?」
「そうだ、お前はロワに喧嘩を売った瞬間は弓使いの相手なんて楽勝だと思っていた。つい最近までは」
「………………」


 俺の指摘にカロンは何も言わずに俯く。そんなカロンを気にせずに俺は話を続ける。


「聖戦の為に王都に来たお前は自分が喧嘩を売った相手、ロワの事を知った」
「…………」
「相手はなんと弓神の使い手らしい。そうなると自分の優位は危うい。そう思ったお前はロワの情報を集めた。大したことない相手と思いたかったんだろ?」
「…………」
「だが結果は最悪、騎士神を持つミエルとも対等に渡り合える相手らしい。そんな相手に勝てる訳無い、そう思ったお前は対策をたてる訳でもなく怯えて日々を過ごした。そうだろ?」


 カロンには聞きたくない真実かもしれない。だが、それを理解しないと始まらない。


「滑稽だよな。勝てると思った相手が実は強くて勝てない。しかも周りの人間に聖戦の事を触れ回ったせいで逃げることも出来ない。今のお前は怯えるしか出来ない」
「……貴様に何が分かる?」


 黙って俺の話を聞いていたカロンは俯きながら振り絞るように言葉を発する。そして、勢いよく椅子から立ち上がると俺を睨みつけながら胸の内を叫ぶ。


「小さいころから周りの期待の中で頑張って!だけどどれだけやっても出来なくて!父さんや母さんの興味
が俺から離れていって!虚勢を張ることでしか自分を保てなくて!そんな気持ちがお前に分かるのか!」


 叫びまくって疲れたのか肩で息をするカロン。そんなカロンに俺は笑顔を作ってこう答えた。


「知るか」
「な!?」


 俺の答えが予想外だったのか、カロンが言葉に詰まった。俺は笑顔のままカロンに近付いて話を続ける。


「お前は勘違いしている」
「何がだ!」
「お前の生い立ちや気持ちは今の状況にまったく関係がない」


 カロンの言葉をバッサリ切り捨てる。


「ロワに喧嘩を売ったのは両親のせいか?ロワの事を知った後に対策をたてなかったのはお前の気持ちが理解されなかったからか?違うな、今の状況は他でもないお前のせいだ。お前の行動が今の状況を作り出しているんだ」
「…………」


 俺の言葉にカロンが力なく椅子へと座り込む。


「……じゃあどうすればいいんだよ。俺はどうすれば」
「厳しい事言ったが、ここからはアドバイスだ」


 俺はベッドに腰かけて生気を失ったカロンに話す。


「お前はロワについて色々と調べたと思うが、ステータスや強さ以外で知っている事はあるか?」
「いや、あまり知らない」
「だろうな。だから俺がロワの弱点を一つだけ教えてやる」
「あんな奴に弱点なんてあるのか?」
「ああ、どんな奴にも弱点はある」


 俺の言葉を聞いたカロンの顔にわずかながら生気が戻る。


「奴の弱点はなんだ!」
「精神面」
「へ?」
「精神面だよ」


 何を追っているか分からないという表情のカロンに説明を続ける。


「正直、ロワはお前を舐め切っている。平たく言えば油断しているってことだな。そこに付け入るスキがある」
「具体的にはどうしたらいい?」
「そこは自分で考えろ。ロワの情報は一通りあるんだろ?」


 俺の言葉を聞いたカロンはがっかりしたように俯く。これだけだとまだ厳しいか。だったら、もう少しだけ情報を渡しておこう。


「もう一つだけ情報を渡しておく。ロワには切り札として高威力の矢がある。だが、それは1発きりだ。どうにかして使わせた後はお前にも勝ち筋はある」
「だが、もしもその矢を喰らってしまったら……」
「それは考えるな」


 俺はカロンの言葉をぶった切る。


「お前は明日の試合に負けたら全てを失う。そうなったら死んだも同然だろ?」


 カロンへと近付き、カロンの胸に拳を当てる。


「だったら、本当に命かけてみろ!自分の手で自分の過去を清算しろ!どんなに厳しくても最後まであがけ!」


 俺の言葉にカロンは目を丸くする。そして、カロンの目には投資が宿っていく。もうこいつは大丈夫だな。


「俺はもう行く。お前はこれからどうする?」
「決まっている。今分かっているロワの情報を洗い出して対策を立てる」
「そうか、じゃあまた明日」


 そういうと俺はカロンの別荘を後にした。


☆  ☆  ☆  ☆ 


「アホか!敵に塩を送ってどうするんじゃ!」


 昨夜の説明が終わった後、再びフランに胸倉をつかまれる。俺は呼吸も満足に出来ない中で弁解をする。


「心配するな、仮にロワが負けたとしても手は打ってある」
「どういう事だ?」


 俺は昨夜の説明にとある情報を付け加える。その情報を聞いたフランの手から力が抜けていき、壁に叩きつけられることなく解放される。そして、表情が呆れたものへと変わっていく。


「貴様な……どれだけ卑怯なんだ?私が言うのもなんだが、カロンがかわいそうになったぞ?」
「追い詰められてるとはいえ、卑怯な手を使いまくっている相手だ。だったらこっちも遠慮はしない」
「そうじゃったな、お主はそういう奴じゃったな」


 仲間から冷たい視線を受けながら俺は戦場へと視線を向ける。


「はあ!」
「くっ!」


 左肩を怪我しているロワとすかさず攻めまくるカロン。状況的には圧倒的にロワが不利だ。


「切り札も無い、弓を使うのも厳しい。さて、どうするロワ?」
「それは黒幕のセリフじゃ」
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