145 / 472
第百二十一話 作戦ターイム!
しおりを挟む
次の日、ノエルが目を覚ますと知らない天井が目に映った。
「ふわああ……」
欠伸をしながらベッドから起き上がる。すると、隣のベッドから大きないびきが聞こえてきた。
隣のベッドには気持ちよさそうに寝ているリンタロウお兄ちゃんがいる。
「可哀そうだけど、時間も無いし起こしちゃおう」
掛け布団を剥がして、リンタロウお兄ちゃんの体を揺すってみる。
「朝だよー起きてー」
「えへへ……こんなに多くの女性とお茶が出来るなんて幸せでござる……」
結構、強めに揺すってみたけど全然起きない。
「リンタロウお兄ちゃーん!起きてー!」
「うーん?」
ノエルが大声を出しながら強く揺すると、リンタロウお兄ちゃんが薄く目を開けた。
「あれ?ノエル殿?」
「朝だよ、起きて」
「もう朝でござるか」
リンタロウお兄ちゃんは大きく伸びをすると、ベッドから起き上がった。
「おはよう、ノエル殿」
「おはよう、リンタロウお兄ちゃん」
ノエルは干し肉や乾パンといった携帯食料を取り出して朝ご飯にする。
簡単な朝食を済ませたノエルはテーブルにこの辺の地図を広げる。
広げられた地図をリンタロウお兄ちゃんは不思議そうに眺める。
「何が始まるでござるか?」
「今から作戦会議をします」
「そう言えば、ノエル殿はおつかいの途中であったな。何を買ってくるのでござるか?」
「買って来るというよりも狩って来るの方があってるかも」
ノエルは地図に載っている宿を指さす。
「ここがノエル達がいる宿。で、目的地はここ」
宿から300mくらいの所にある施設を指さす。
「ここが目的地」
「何を買うのでござるか?」
「えーっとね、奴隷の子達」
「へ?」
「ここに奴隷になっちゃった子達を開放するのが今回のおつかい」
「この世界の子はそんな過酷なおつかいをするのでござるか?」
「お兄ちゃんはそう言ってたよ?」
「中々にディストピアでござるな」
納得したように頷くリンタロウお兄ちゃん。
「で、どうやって開放するのでござるか?正面から殴り込むでござるか?」
「それだと奴隷の子達を人質にされちゃう可能性があるの」
「なるほど、気付かれないように救い出す必要があるのでござるか」
リンタロウお兄ちゃんの言う通り、今回のおつかいは見つからない事が重要だ。
ホウリお兄ちゃんから、可能な限り無傷で救い出すように言われているし、何よりノエルが皆を救い出したい。大変かもしれないけど頑張ろう。
「これからどうするでござるか?」
「お兄ちゃんから内部の地図とか、見張りの時間とかは貰ってるから、作戦立てて買い出しかな?」
「まずは作戦会議でござるな。資料とやらを見せてくれぬか?」
「はいどうぞ」
ホウリお兄ちゃんから渡された資料をリンタロウお兄ちゃんに渡す。
リンタロウお兄ちゃんは資料をパラパラとめくると、すぐにノエルに返してきた。
「……文字が多すぎて頭が痛くなってきたでござる」
「フランお姉ちゃんみたいな事言ってるー」
ノエルは資料を受け取って、家で何回も見た資料をもう一回読む。
「この施設の名前はインセクト、おもちゃとか売っているお店だよ」
「表の顔と言う奴でござるな。拙者も話だけは聞いたことがあるでござる」
「そうそれ。夜は『ひごーほー』で奴隷を売っているお店になるんだって」
「この世界では奴隷の売買は非合法なのでござるか?」
「ダメだってお兄ちゃんは言ってた」
どんなことがあっても人をお金で買っちゃうのはいけない事だと思う。絶対に助けないと。
「内部はどうなっているでござるか?」
「おもちゃの倉庫の奥に、別の扉があるんだって。そこに奴隷の皆が入ってる檻があるんだって」
「目的は全員を助け出すことでござるか?」
「助け出した上で、憲兵さんに逮捕してもらう事が目的だよ」
「憲兵?警察のような物でござるか?」
「そうだよ」
ホウリお兄ちゃんが言ってた警察かな?確か憲兵と役割が同じなんだっけ。
「憲兵がいるのであれば全部任せておけばいいのでは?」
「お兄ちゃんが言うには、憲兵さんが突入すると奴隷の子達が怪我しちゃうかもなんだって」
「人質にされるかもしれぬしな。拙者達で助けた後で憲兵が突撃するのがベストでござるか」
「そう言う事」
次に資料にある写真をリンタロウお兄ちゃんに見せる。
「この髭が長いメガネのおじちゃんがリーダーさん。髪の長いお姉さんが右腕?なんだって」
「この2人を抑えれば話が早そうでござるな」
「お兄ちゃんもこの2人は絶対に捕まえるようにって言ってた」
首謀者の2人を捕まえれば何とかなるみたいだから、絶対に捕まえないと。
リンタロウお兄ちゃんは写真を見ながら口を曲げる。
「この2人を取り押さえつつ、奴隷を無傷で開放する。結構難しいでござるな」
「でも、ノエルはやりたい」
ノエルは真っすぐリンタロウお兄ちゃんを見つめる。
リンタロウお兄ちゃんはノエルを見つめ返すと、白い歯を見せながらニカッと笑った。
「拙者もノエル殿と同じ気持ちでござるよ。必ずや皆を救い出そうぞ」
「ありがとう!」
やっぱり、リンタロウお兄ちゃんに頼んでよかった。
あれ?そういえば、リンタロウお兄ちゃんに聞いてない事があったや。
「そういえば、リンタロウお兄ちゃんってステルス出来るの?」
「心配ござらん。元の世界でみっちり経験を積んでいるでござる。そう言うノエル殿はどうでござるか?」
「お兄ちゃんから色々と教わったから大丈夫!」
「そうでござったか。そういえば、ノエル殿に聞きたい事があったのでござった」
聞きたい事?なんだろう?
「なあに?」
「この世界にはステータスやスキルがあるのでござろう?」
「そうだよ」
「拙者にもスキルが使えるのでござろうか?」
「使えると思うよ?ステータスって念じたら見られるよ」
「では早速」
リンタロウお兄ちゃんは意気揚々と指を天井に向ける。
「ステータス!」
大声をあげたリンタロウお兄ちゃんはしきりに周りを見渡し始める。
「さあ!ステータスはどこでござるか!」
「目の前に出てくると思うけど?」
リンタロウお兄ちゃんは一通り周りを見渡して、不思議そうに首を傾げる。
「おかしいでござるな、それっぽい物は見当たらないでござる」
「そうなの?可笑しいなあ……」
ホウリお兄ちゃんも最初の人達もステータスあったし、地球の人もスキルを持っている筈。何がいけないんだろう?
ノエルも一緒に首を傾げていると、リンタロウお兄ちゃんが顔を伏せた。
「……拙者、スキル使えないでござるか?」
「ステータスが見られないからって使えないって決まった訳じゃないよ!何か手がある筈……」
落ち込んでいるリンタロウお兄ちゃんを励まして、ノエルは必死に頭を回す。
リンタロウお兄ちゃんはステータスじゃなくて、スキルが知りたい。だとしたら……
「そうだ!神殿に行けばスキルが分かるかも!」
「神殿?」
「うん!スキルって神殿で取れるんだけど、他人のスキルを確認出来る人もいると思う!」
「本当でござるか!?早速、行くでござる!」
リンタロウお兄ちゃんが部屋を飛び出していく。ノエルもその後を追って、部屋を飛び出したのだっ た。
リンタロウお兄ちゃんのスキルが分かると良いな。
☆ ☆ ☆ ☆
「申し訳ございません、こちらではスキルが分かりません」
神官さんがリンタロウお兄ちゃんが神殿で掛けた言葉はそれだった。
リンタロウお兄ちゃんが顔を引きつらせながら口を開ける。
「ど、どう言う事でござるか?」
「鑑定にてスキルを確認しましたが、どういう事か情報が全く出ません」
「スキル以外の情報も出ないの?」
「その通りです」
神官さんの言葉を聞いたノエルは、恐る恐るリンタロウお兄ちゃんの顔を見る。
完全に絶望しきったリンタロウお兄ちゃんは、軽く頭を下げると力なく神殿の出口へと歩く。ノエルは何て言っていいか分からず、リンタロウお兄ちゃんの後を付いて行く。
リンタロウお兄ちゃんは神殿を出ると、そのまま街の中を無言で歩き始めた。その足取りは少し押すだけで倒れてしまいそうな程に不安定だ。
えーっと、何か言わないと……、
「そうだ!リンタロウお兄ちゃん、お腹空かない?何か食べに行こうよ」
「………………」
「食べたいものはある?この辺りは王都の中心街だから美味しい物が沢山あるよ?」
「…………」
「ノエル、お金は多めに貰ってるから何でも食べられるよ?何かない?」
「……カレー」
リンタロウお兄ちゃんは生気のない顔をノエルに向けて力なく話す。
「この世界にカレーはあるでござるか?」
「ご飯に少し辛いルーが掛かってるアレ?」
「それでござる。あるのでござるな?」
「うん!ノエルも大好きだよ!」
ノエルは辺りを見渡してカレー屋さんを探す。
「あ!あそこにカレー屋さんがあるよ!行ってみようよ!」
リンタロウお兄ちゃんの手を引いてカレー屋さんの中へと入る。
店の内に入ると、独特なカレーの臭いが鼻孔をくすぐった。掛かっている音楽も独特で思わずカレーが食べたくなっちゃう。
適当な席についてメニューを広げる。
「ノエルはキーマカレーかな。リンタロウお兄ちゃんは?」
「……海鮮カレー、大盛り」
「了解!すみませーん!キーマカレーと海鮮カレー大盛り!」
ノエルは店員さんを呼んで注文を済ませる。
無言のまま数分の時間が流れる。周りにもお客さんはいない中、カレーの音楽だけがノエル達の間に流れる。
無言の時間に耐えかねて話題を探していると、店員さんがカレーを持ってきた。
「おまたせしました」
店員さんはテーブルにカレーを置くと、そのまま厨房まで下がっていった。
目の前には美味しそうに湯気を立てているキーマカレーと海鮮カレー、早く手を付けたくて仕方がない。
我慢できずにスプーンを持って手を合わせる。
「いただきまーす」
「……いただきます」
リンタロウお兄ちゃんも表情は暗いけど、スプーンを持ってカレーを食べ始めた。よかった、食欲はあるみたいだ。
安心したノエルは目の前のキーマカレーを口の中に入れる。
「うーん、おいしー!」
お肉の旨味とスパイスの香りがとても良く会っている。スプーンを動かす手が止まらない。
ノエルが夢中になって食べていると、向かいに座っているリンタロウお兄ちゃんの異変に気が付く。最初は少しずつゆっくりと食べていたが、徐々に早くなっている。
リンタロウお兄ちゃんはノエルよりも早く最後の一口を食べ終わる。
「はー、美味しかったでござる」
幸せそうにお腹を撫でるリンタロウお兄ちゃんを見て、ノエルは安心する。どうやら元気が出たみたいだ。
ノエルも最後の一口を食べ終わり、手を合わせる。
「ごちそうさまー。あー、美味しかった」
「ノエル殿、すまないでござる。気を使わせてしまったでござるな」
「別にいーよ。元気になってよかった」
「いつまでもクヨクヨしていてはノエル殿にも申し訳ないでござるしな。もう大丈夫でござる」
そう言うと、リンタロウお兄ちゃんが白い歯を見せながらニカッと笑った。よかった、いつものリンタロウお兄ちゃんだ。
「よし、元気もでたでござるし、準備を進めるでござる!」
「おー!」
美味しいご飯を堪能したノエルとリンタロウお兄ちゃんはカレー屋さんを後にする。
うーん、でもなんでリンタロウお兄ちゃんはスキルやステータスが見られないんだろう?まあ、終わってからホウリお兄ちゃんに相談すればいっか。
「ふわああ……」
欠伸をしながらベッドから起き上がる。すると、隣のベッドから大きないびきが聞こえてきた。
隣のベッドには気持ちよさそうに寝ているリンタロウお兄ちゃんがいる。
「可哀そうだけど、時間も無いし起こしちゃおう」
掛け布団を剥がして、リンタロウお兄ちゃんの体を揺すってみる。
「朝だよー起きてー」
「えへへ……こんなに多くの女性とお茶が出来るなんて幸せでござる……」
結構、強めに揺すってみたけど全然起きない。
「リンタロウお兄ちゃーん!起きてー!」
「うーん?」
ノエルが大声を出しながら強く揺すると、リンタロウお兄ちゃんが薄く目を開けた。
「あれ?ノエル殿?」
「朝だよ、起きて」
「もう朝でござるか」
リンタロウお兄ちゃんは大きく伸びをすると、ベッドから起き上がった。
「おはよう、ノエル殿」
「おはよう、リンタロウお兄ちゃん」
ノエルは干し肉や乾パンといった携帯食料を取り出して朝ご飯にする。
簡単な朝食を済ませたノエルはテーブルにこの辺の地図を広げる。
広げられた地図をリンタロウお兄ちゃんは不思議そうに眺める。
「何が始まるでござるか?」
「今から作戦会議をします」
「そう言えば、ノエル殿はおつかいの途中であったな。何を買ってくるのでござるか?」
「買って来るというよりも狩って来るの方があってるかも」
ノエルは地図に載っている宿を指さす。
「ここがノエル達がいる宿。で、目的地はここ」
宿から300mくらいの所にある施設を指さす。
「ここが目的地」
「何を買うのでござるか?」
「えーっとね、奴隷の子達」
「へ?」
「ここに奴隷になっちゃった子達を開放するのが今回のおつかい」
「この世界の子はそんな過酷なおつかいをするのでござるか?」
「お兄ちゃんはそう言ってたよ?」
「中々にディストピアでござるな」
納得したように頷くリンタロウお兄ちゃん。
「で、どうやって開放するのでござるか?正面から殴り込むでござるか?」
「それだと奴隷の子達を人質にされちゃう可能性があるの」
「なるほど、気付かれないように救い出す必要があるのでござるか」
リンタロウお兄ちゃんの言う通り、今回のおつかいは見つからない事が重要だ。
ホウリお兄ちゃんから、可能な限り無傷で救い出すように言われているし、何よりノエルが皆を救い出したい。大変かもしれないけど頑張ろう。
「これからどうするでござるか?」
「お兄ちゃんから内部の地図とか、見張りの時間とかは貰ってるから、作戦立てて買い出しかな?」
「まずは作戦会議でござるな。資料とやらを見せてくれぬか?」
「はいどうぞ」
ホウリお兄ちゃんから渡された資料をリンタロウお兄ちゃんに渡す。
リンタロウお兄ちゃんは資料をパラパラとめくると、すぐにノエルに返してきた。
「……文字が多すぎて頭が痛くなってきたでござる」
「フランお姉ちゃんみたいな事言ってるー」
ノエルは資料を受け取って、家で何回も見た資料をもう一回読む。
「この施設の名前はインセクト、おもちゃとか売っているお店だよ」
「表の顔と言う奴でござるな。拙者も話だけは聞いたことがあるでござる」
「そうそれ。夜は『ひごーほー』で奴隷を売っているお店になるんだって」
「この世界では奴隷の売買は非合法なのでござるか?」
「ダメだってお兄ちゃんは言ってた」
どんなことがあっても人をお金で買っちゃうのはいけない事だと思う。絶対に助けないと。
「内部はどうなっているでござるか?」
「おもちゃの倉庫の奥に、別の扉があるんだって。そこに奴隷の皆が入ってる檻があるんだって」
「目的は全員を助け出すことでござるか?」
「助け出した上で、憲兵さんに逮捕してもらう事が目的だよ」
「憲兵?警察のような物でござるか?」
「そうだよ」
ホウリお兄ちゃんが言ってた警察かな?確か憲兵と役割が同じなんだっけ。
「憲兵がいるのであれば全部任せておけばいいのでは?」
「お兄ちゃんが言うには、憲兵さんが突入すると奴隷の子達が怪我しちゃうかもなんだって」
「人質にされるかもしれぬしな。拙者達で助けた後で憲兵が突撃するのがベストでござるか」
「そう言う事」
次に資料にある写真をリンタロウお兄ちゃんに見せる。
「この髭が長いメガネのおじちゃんがリーダーさん。髪の長いお姉さんが右腕?なんだって」
「この2人を抑えれば話が早そうでござるな」
「お兄ちゃんもこの2人は絶対に捕まえるようにって言ってた」
首謀者の2人を捕まえれば何とかなるみたいだから、絶対に捕まえないと。
リンタロウお兄ちゃんは写真を見ながら口を曲げる。
「この2人を取り押さえつつ、奴隷を無傷で開放する。結構難しいでござるな」
「でも、ノエルはやりたい」
ノエルは真っすぐリンタロウお兄ちゃんを見つめる。
リンタロウお兄ちゃんはノエルを見つめ返すと、白い歯を見せながらニカッと笑った。
「拙者もノエル殿と同じ気持ちでござるよ。必ずや皆を救い出そうぞ」
「ありがとう!」
やっぱり、リンタロウお兄ちゃんに頼んでよかった。
あれ?そういえば、リンタロウお兄ちゃんに聞いてない事があったや。
「そういえば、リンタロウお兄ちゃんってステルス出来るの?」
「心配ござらん。元の世界でみっちり経験を積んでいるでござる。そう言うノエル殿はどうでござるか?」
「お兄ちゃんから色々と教わったから大丈夫!」
「そうでござったか。そういえば、ノエル殿に聞きたい事があったのでござった」
聞きたい事?なんだろう?
「なあに?」
「この世界にはステータスやスキルがあるのでござろう?」
「そうだよ」
「拙者にもスキルが使えるのでござろうか?」
「使えると思うよ?ステータスって念じたら見られるよ」
「では早速」
リンタロウお兄ちゃんは意気揚々と指を天井に向ける。
「ステータス!」
大声をあげたリンタロウお兄ちゃんはしきりに周りを見渡し始める。
「さあ!ステータスはどこでござるか!」
「目の前に出てくると思うけど?」
リンタロウお兄ちゃんは一通り周りを見渡して、不思議そうに首を傾げる。
「おかしいでござるな、それっぽい物は見当たらないでござる」
「そうなの?可笑しいなあ……」
ホウリお兄ちゃんも最初の人達もステータスあったし、地球の人もスキルを持っている筈。何がいけないんだろう?
ノエルも一緒に首を傾げていると、リンタロウお兄ちゃんが顔を伏せた。
「……拙者、スキル使えないでござるか?」
「ステータスが見られないからって使えないって決まった訳じゃないよ!何か手がある筈……」
落ち込んでいるリンタロウお兄ちゃんを励まして、ノエルは必死に頭を回す。
リンタロウお兄ちゃんはステータスじゃなくて、スキルが知りたい。だとしたら……
「そうだ!神殿に行けばスキルが分かるかも!」
「神殿?」
「うん!スキルって神殿で取れるんだけど、他人のスキルを確認出来る人もいると思う!」
「本当でござるか!?早速、行くでござる!」
リンタロウお兄ちゃんが部屋を飛び出していく。ノエルもその後を追って、部屋を飛び出したのだっ た。
リンタロウお兄ちゃんのスキルが分かると良いな。
☆ ☆ ☆ ☆
「申し訳ございません、こちらではスキルが分かりません」
神官さんがリンタロウお兄ちゃんが神殿で掛けた言葉はそれだった。
リンタロウお兄ちゃんが顔を引きつらせながら口を開ける。
「ど、どう言う事でござるか?」
「鑑定にてスキルを確認しましたが、どういう事か情報が全く出ません」
「スキル以外の情報も出ないの?」
「その通りです」
神官さんの言葉を聞いたノエルは、恐る恐るリンタロウお兄ちゃんの顔を見る。
完全に絶望しきったリンタロウお兄ちゃんは、軽く頭を下げると力なく神殿の出口へと歩く。ノエルは何て言っていいか分からず、リンタロウお兄ちゃんの後を付いて行く。
リンタロウお兄ちゃんは神殿を出ると、そのまま街の中を無言で歩き始めた。その足取りは少し押すだけで倒れてしまいそうな程に不安定だ。
えーっと、何か言わないと……、
「そうだ!リンタロウお兄ちゃん、お腹空かない?何か食べに行こうよ」
「………………」
「食べたいものはある?この辺りは王都の中心街だから美味しい物が沢山あるよ?」
「…………」
「ノエル、お金は多めに貰ってるから何でも食べられるよ?何かない?」
「……カレー」
リンタロウお兄ちゃんは生気のない顔をノエルに向けて力なく話す。
「この世界にカレーはあるでござるか?」
「ご飯に少し辛いルーが掛かってるアレ?」
「それでござる。あるのでござるな?」
「うん!ノエルも大好きだよ!」
ノエルは辺りを見渡してカレー屋さんを探す。
「あ!あそこにカレー屋さんがあるよ!行ってみようよ!」
リンタロウお兄ちゃんの手を引いてカレー屋さんの中へと入る。
店の内に入ると、独特なカレーの臭いが鼻孔をくすぐった。掛かっている音楽も独特で思わずカレーが食べたくなっちゃう。
適当な席についてメニューを広げる。
「ノエルはキーマカレーかな。リンタロウお兄ちゃんは?」
「……海鮮カレー、大盛り」
「了解!すみませーん!キーマカレーと海鮮カレー大盛り!」
ノエルは店員さんを呼んで注文を済ませる。
無言のまま数分の時間が流れる。周りにもお客さんはいない中、カレーの音楽だけがノエル達の間に流れる。
無言の時間に耐えかねて話題を探していると、店員さんがカレーを持ってきた。
「おまたせしました」
店員さんはテーブルにカレーを置くと、そのまま厨房まで下がっていった。
目の前には美味しそうに湯気を立てているキーマカレーと海鮮カレー、早く手を付けたくて仕方がない。
我慢できずにスプーンを持って手を合わせる。
「いただきまーす」
「……いただきます」
リンタロウお兄ちゃんも表情は暗いけど、スプーンを持ってカレーを食べ始めた。よかった、食欲はあるみたいだ。
安心したノエルは目の前のキーマカレーを口の中に入れる。
「うーん、おいしー!」
お肉の旨味とスパイスの香りがとても良く会っている。スプーンを動かす手が止まらない。
ノエルが夢中になって食べていると、向かいに座っているリンタロウお兄ちゃんの異変に気が付く。最初は少しずつゆっくりと食べていたが、徐々に早くなっている。
リンタロウお兄ちゃんはノエルよりも早く最後の一口を食べ終わる。
「はー、美味しかったでござる」
幸せそうにお腹を撫でるリンタロウお兄ちゃんを見て、ノエルは安心する。どうやら元気が出たみたいだ。
ノエルも最後の一口を食べ終わり、手を合わせる。
「ごちそうさまー。あー、美味しかった」
「ノエル殿、すまないでござる。気を使わせてしまったでござるな」
「別にいーよ。元気になってよかった」
「いつまでもクヨクヨしていてはノエル殿にも申し訳ないでござるしな。もう大丈夫でござる」
そう言うと、リンタロウお兄ちゃんが白い歯を見せながらニカッと笑った。よかった、いつものリンタロウお兄ちゃんだ。
「よし、元気もでたでござるし、準備を進めるでござる!」
「おー!」
美味しいご飯を堪能したノエルとリンタロウお兄ちゃんはカレー屋さんを後にする。
うーん、でもなんでリンタロウお兄ちゃんはスキルやステータスが見られないんだろう?まあ、終わってからホウリお兄ちゃんに相談すればいっか。
0
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
本条蒼依
ファンタジー
山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、
残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして
遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。
そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を
拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、
町から逃げ出すところから始まる。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる