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第二百三十一話 おまわりさんこいつです
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ハイファイの街に来て2日目。僕は的当ての会場の脇にある待機場に立っていた。
会場は外に会って細長くて500m先まで的が配置できるようになっている。両端には観客席があって観戦ができるようになっている。
観客席には数人の観客しかおらず、いつもの的当てよりも寂しい。普通の時に参加したかったなぁ。
そんな風に思いながら、隣に視線を移す。僕の隣には弓を持った男の人が3人並んでいる。服には
弓を持っているけど、手に弓のタコが無い。あまり弓を使い込んでいる人達ではないみたいだ。
普通だったら勝てるでしょうが、今回は相手が細工しているみたいですし、一筋縄ではいかないでしょう。
「それでは、これより的当てを始めます。参加者の皆さんの入場です」
やる気の無いアナウンスが会場内に響く。どうにもやる気が起きないなぁ。まあ、勝てないと理不尽な利息が襲い掛かってくるから、全力で勝ちに行かないとね。
弓を持って待機場から出る。観客からの疎らな拍手を受けながら、ステージの上に立つ。
ステージには小太りでスーツを着た男の人がマイクを持っていた。この人が司会者なんでしょう。
「えー、それでは第61回的当てを始めます。初めて的当てをご覧になる方もいらっしゃるでしょうから、ルールを説明いたします。的当てとは──」
司会者が的当ての説明をしている間に、会場の様子を確認する。会場は外だから、風の影響は受ける。空に雲はあるけど、雨が降るほどじゃない。この条件なら狙撃するのに問題は無さそうだ。
あとはホウリさんが言っていた妨害に関してだ。どんな妨害が来るのかは聞いている。考えた対策で問題だ。
「───ルール説明は以上です。それでは、早速ですが始めていきます。まずは100mからです」
脇から出て来たスタッフの人が100mの所に的を立てる。あれくらいなら問題ないですね。
「まずは1番目の方からどうぞ」
1番目の人が弓を構える。傍から見てる限りだと、弓を押す手がブレているし、引き方もなっていない。やっぱり弓の扱いには長けていないみたいだ。妨害があるとはいえ、この方々にまけるとショックで3日は寝込みそうだ。
1番目の人は狙いを付けて矢を放つ。しかし、矢は的のすぐ横に目掛けて飛んでいく。
このまま行くと外れる、そう思った瞬間に矢は軌道を曲げて的に突き刺さった。
「1番目の方は命中です。次の方どうぞ」
ホウリさんに聞いていた通り、僕へ妨害だけではなく相手の補助もしているみたいだ。
2番目の人も矢の軌道を操る事により、的に命中させる。その次の人も同様に命中させる。これは長くなりそうだ。
「最後の方どうぞ」
僕の番になって、いつものように弓を構える。この距離なら外すことは無いけど、妨害がどう出て来るかな。
呼吸を整えて弓を放つ。矢は真っすぐと的のド真ん中に向かっていく。命中すると思った瞬間、矢は不自然に下に落ちた。
矢は的のギリギリを捉え、なんとか命中する。ホウリさんの言っていた通りだ。
僕は昨日ホウリさんに言われた事を思い出す。
『相手の妨害は矢の軌道操作だ』
『僕のスネッグアローみたいなものですか?』
『いや、相手は観客席から矢の軌道を操ってくる。相手の矢は当たりやすく、ロワの矢は当たりにくくなるだろう』
『どのくらい操作できるんでしょうか?』
『スネッグアローと同じと思えばいい』
『となると、的との距離が離れるほど操作できる幅は大きくなりますね。1㎞も離れてしまうと何処を狙っても当てられないですね』
『対策がいるな。っと、その顔はどうするかの目星は付いているみたいだな?』
その問いかけに、僕は笑顔で頷いたのだった。
今の落ち方から察するに、1㎞以上離れると当てられそうにない。けど、矢を操作するにしても、曲がりすぎると観客から不審に思われるだろうし、他の参加者が大きく外した場合は修正できないだろう。
とにかく、今は行けるところまで行くしかない。
「まずは全員成功です。では、200mにいきましょう」
的が200mのところに設置される。
その後も500mまでは誰も外さずに弓当ては進んでいく。そして600mになった時、それの時は来た。
「あーっと、2番の選手が外してしまったー」
2番目の人が外して脱落する。その人はあまり残念そうでもなくステージから降りていった。多分、雇われただけで、勝敗にそこまで執着がないんだろう。
その後、800mの段階で3番目の人が脱落し1番目の人との一騎打ちになる。
そして問題の1㎞となった。1番目の人は慎重に狙いをつけると、矢を放った。
矢は大きく左に逸れると、そのまま地面に突き刺さった。今回は矢を操作した様子はない。
「1番の方は外れです。残りは4番の方です。仮に4番の方が外した場合、今回の的当ては優勝者なしとさせていただきます」
司会者の言葉に観客がすこし騒めく。これまでの的当ては優勝者が決めるまで続けていた。急なルールの変更で驚いたんだろう。
ともかく、僕が外せば終わりって訳だ。やり直しは出来ないうえに妨害もある。結構プレッシャーがかかるなぁ。
そう思いつつ、昨日買った弓に持ち変える。
この1㎞の距離はいつもの弓だと無理だ。新しい弓で立ち向かおう。ちなみに、この弓の名前は『トリケラ』ってつけた。
「さあ、泣いても笑ってもラストです。張り切ってどうぞ」
司会者に促されるがまま弓を引く、そして弓にMPを込めて張りを強くしていく。このまま真っすぐ射るだけでは確実に外す。ならばどうするか。
「こうするんですよ!」
僕は弓に大きく角度を付けて空へと放つ。瞬間、観客席からさっきよりも大きなざわめきが起こる。
普通ならこれだけ角度をつければ場外に飛んで行ってしまうだろう。確かに生半可な弓だとその通りになるだろう。だが、トリケラのように強力な弓であれば……
(ズバン!)
かなりの角度を付けて射っても的に命中させることが出来る。
「な……へ?」
空から降って来た矢が的を射抜き、深々と突き刺さる。司会者は何が起こったか分からない様子で的を見つめる。
「あ、えっと……4番の方、命中?」
「なんで疑問形なんですか。ちゃんと当たってますよ」
矢を操作するスキルは距離が開き過ぎると効果が発揮されない。だから、そうだが出来ない空から的を狙う事で相手に妨害できないようにした。
MPで張りの強さが変わる弓だから、強さと狙いの調整が難しかったけど、何とかなってよかった。
「ゆ、優勝は4番のロワ・タタン選手です」
疎らな拍手を受けて、僕は軽くお辞儀をする。
「そ、それでは、優勝賞品の授与に移ります。ロワ選手は前にどうぞ」
僕は一歩前に踏み出す。すると、司会者が銀色に輝く弓を持ってきた。
「優勝賞品の白銀の弓です。おめでとうございます」
僕は弓を受け取って眺める。そして、周りに聞こえないように司会者に囁く。
「あの、これって本物じゃないですよね?本物は後で貰えるんですか?」
「へ?」
僕の言葉に司会者が目を泳がせる。
「ち、ちゃんと本物ですよ?」
「白銀の弓は全てが白銀で出来ています。だから、弦とのつなぎ目は分からないくらい精巧に作られています。僕は本物は見たことが無いですが、これは本物ではないことは断言できます」
受け取ったものは出来が荒いし、白銀で出来ているにしては軽い。本物ではないことは明白だろう。
「そ、それはその……」
僕の指摘に司会者の顔は青ざめていく。うーん?これはどういう事でしょうか?
僕も困っていると、ステージの影に誰かがいるのが見えた。よく見てみると、ホウリさんだった。
ホウリさんは無言で指を曲げて僕に合図を送ってくる。あれは、『穏便に事を済ませろ』っていう意味の合図だ。
なんだか分からないけど、ここはホウリさんの言う通りにしておこう。
「すみません、僕の勘違いでした。これはいただきます」
「あ、ああ、そうでしたか」
歯切れが悪そうに司会者は顔を背ける。
僕が弓を笑顔で掲げると、会場から再び拍手が起こった。こうして、僕はホウリさんに言われた通り、弓当てで優勝できたのだった。
会場は外に会って細長くて500m先まで的が配置できるようになっている。両端には観客席があって観戦ができるようになっている。
観客席には数人の観客しかおらず、いつもの的当てよりも寂しい。普通の時に参加したかったなぁ。
そんな風に思いながら、隣に視線を移す。僕の隣には弓を持った男の人が3人並んでいる。服には
弓を持っているけど、手に弓のタコが無い。あまり弓を使い込んでいる人達ではないみたいだ。
普通だったら勝てるでしょうが、今回は相手が細工しているみたいですし、一筋縄ではいかないでしょう。
「それでは、これより的当てを始めます。参加者の皆さんの入場です」
やる気の無いアナウンスが会場内に響く。どうにもやる気が起きないなぁ。まあ、勝てないと理不尽な利息が襲い掛かってくるから、全力で勝ちに行かないとね。
弓を持って待機場から出る。観客からの疎らな拍手を受けながら、ステージの上に立つ。
ステージには小太りでスーツを着た男の人がマイクを持っていた。この人が司会者なんでしょう。
「えー、それでは第61回的当てを始めます。初めて的当てをご覧になる方もいらっしゃるでしょうから、ルールを説明いたします。的当てとは──」
司会者が的当ての説明をしている間に、会場の様子を確認する。会場は外だから、風の影響は受ける。空に雲はあるけど、雨が降るほどじゃない。この条件なら狙撃するのに問題は無さそうだ。
あとはホウリさんが言っていた妨害に関してだ。どんな妨害が来るのかは聞いている。考えた対策で問題だ。
「───ルール説明は以上です。それでは、早速ですが始めていきます。まずは100mからです」
脇から出て来たスタッフの人が100mの所に的を立てる。あれくらいなら問題ないですね。
「まずは1番目の方からどうぞ」
1番目の人が弓を構える。傍から見てる限りだと、弓を押す手がブレているし、引き方もなっていない。やっぱり弓の扱いには長けていないみたいだ。妨害があるとはいえ、この方々にまけるとショックで3日は寝込みそうだ。
1番目の人は狙いを付けて矢を放つ。しかし、矢は的のすぐ横に目掛けて飛んでいく。
このまま行くと外れる、そう思った瞬間に矢は軌道を曲げて的に突き刺さった。
「1番目の方は命中です。次の方どうぞ」
ホウリさんに聞いていた通り、僕へ妨害だけではなく相手の補助もしているみたいだ。
2番目の人も矢の軌道を操る事により、的に命中させる。その次の人も同様に命中させる。これは長くなりそうだ。
「最後の方どうぞ」
僕の番になって、いつものように弓を構える。この距離なら外すことは無いけど、妨害がどう出て来るかな。
呼吸を整えて弓を放つ。矢は真っすぐと的のド真ん中に向かっていく。命中すると思った瞬間、矢は不自然に下に落ちた。
矢は的のギリギリを捉え、なんとか命中する。ホウリさんの言っていた通りだ。
僕は昨日ホウリさんに言われた事を思い出す。
『相手の妨害は矢の軌道操作だ』
『僕のスネッグアローみたいなものですか?』
『いや、相手は観客席から矢の軌道を操ってくる。相手の矢は当たりやすく、ロワの矢は当たりにくくなるだろう』
『どのくらい操作できるんでしょうか?』
『スネッグアローと同じと思えばいい』
『となると、的との距離が離れるほど操作できる幅は大きくなりますね。1㎞も離れてしまうと何処を狙っても当てられないですね』
『対策がいるな。っと、その顔はどうするかの目星は付いているみたいだな?』
その問いかけに、僕は笑顔で頷いたのだった。
今の落ち方から察するに、1㎞以上離れると当てられそうにない。けど、矢を操作するにしても、曲がりすぎると観客から不審に思われるだろうし、他の参加者が大きく外した場合は修正できないだろう。
とにかく、今は行けるところまで行くしかない。
「まずは全員成功です。では、200mにいきましょう」
的が200mのところに設置される。
その後も500mまでは誰も外さずに弓当ては進んでいく。そして600mになった時、それの時は来た。
「あーっと、2番の選手が外してしまったー」
2番目の人が外して脱落する。その人はあまり残念そうでもなくステージから降りていった。多分、雇われただけで、勝敗にそこまで執着がないんだろう。
その後、800mの段階で3番目の人が脱落し1番目の人との一騎打ちになる。
そして問題の1㎞となった。1番目の人は慎重に狙いをつけると、矢を放った。
矢は大きく左に逸れると、そのまま地面に突き刺さった。今回は矢を操作した様子はない。
「1番の方は外れです。残りは4番の方です。仮に4番の方が外した場合、今回の的当ては優勝者なしとさせていただきます」
司会者の言葉に観客がすこし騒めく。これまでの的当ては優勝者が決めるまで続けていた。急なルールの変更で驚いたんだろう。
ともかく、僕が外せば終わりって訳だ。やり直しは出来ないうえに妨害もある。結構プレッシャーがかかるなぁ。
そう思いつつ、昨日買った弓に持ち変える。
この1㎞の距離はいつもの弓だと無理だ。新しい弓で立ち向かおう。ちなみに、この弓の名前は『トリケラ』ってつけた。
「さあ、泣いても笑ってもラストです。張り切ってどうぞ」
司会者に促されるがまま弓を引く、そして弓にMPを込めて張りを強くしていく。このまま真っすぐ射るだけでは確実に外す。ならばどうするか。
「こうするんですよ!」
僕は弓に大きく角度を付けて空へと放つ。瞬間、観客席からさっきよりも大きなざわめきが起こる。
普通ならこれだけ角度をつければ場外に飛んで行ってしまうだろう。確かに生半可な弓だとその通りになるだろう。だが、トリケラのように強力な弓であれば……
(ズバン!)
かなりの角度を付けて射っても的に命中させることが出来る。
「な……へ?」
空から降って来た矢が的を射抜き、深々と突き刺さる。司会者は何が起こったか分からない様子で的を見つめる。
「あ、えっと……4番の方、命中?」
「なんで疑問形なんですか。ちゃんと当たってますよ」
矢を操作するスキルは距離が開き過ぎると効果が発揮されない。だから、そうだが出来ない空から的を狙う事で相手に妨害できないようにした。
MPで張りの強さが変わる弓だから、強さと狙いの調整が難しかったけど、何とかなってよかった。
「ゆ、優勝は4番のロワ・タタン選手です」
疎らな拍手を受けて、僕は軽くお辞儀をする。
「そ、それでは、優勝賞品の授与に移ります。ロワ選手は前にどうぞ」
僕は一歩前に踏み出す。すると、司会者が銀色に輝く弓を持ってきた。
「優勝賞品の白銀の弓です。おめでとうございます」
僕は弓を受け取って眺める。そして、周りに聞こえないように司会者に囁く。
「あの、これって本物じゃないですよね?本物は後で貰えるんですか?」
「へ?」
僕の言葉に司会者が目を泳がせる。
「ち、ちゃんと本物ですよ?」
「白銀の弓は全てが白銀で出来ています。だから、弦とのつなぎ目は分からないくらい精巧に作られています。僕は本物は見たことが無いですが、これは本物ではないことは断言できます」
受け取ったものは出来が荒いし、白銀で出来ているにしては軽い。本物ではないことは明白だろう。
「そ、それはその……」
僕の指摘に司会者の顔は青ざめていく。うーん?これはどういう事でしょうか?
僕も困っていると、ステージの影に誰かがいるのが見えた。よく見てみると、ホウリさんだった。
ホウリさんは無言で指を曲げて僕に合図を送ってくる。あれは、『穏便に事を済ませろ』っていう意味の合図だ。
なんだか分からないけど、ここはホウリさんの言う通りにしておこう。
「すみません、僕の勘違いでした。これはいただきます」
「あ、ああ、そうでしたか」
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