魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

文字の大きさ
283 / 472

第二百四十話 ヨシッ!

しおりを挟む
「うんしょ、うんしょ」


 旅から戻って来た次の日、ノエルはおっきなリュックを背負って登校していた。すると、後ろからひょっこりとコアコちゃんが顔を出した。


「あれ?ノエルちゃん?」
「コアコちゃん、おはよ」
「おはよう。凄い荷物だね」
「皆にお土産を買ったからね。持ってくるの大変だよ~」
「これ全部お土産なの?」
「うん」


 これだけ大荷物になるとは思ってなかったけど後悔はない。勿論、お小遣いでは足りなかったから、ホウリお兄ちゃんにお金を借りた。今度おつかいをしないとね。


「重そうだね。少し手伝おうか?」
「ノエルが全部持ちたいから大丈夫。ありがとね」


 アイテムボックスは全部使ってるし、このお土産は全部持っていくしかない。でも、これくらいなら魔装を使わなくても楽勝だ。


「ノエルちゃんって力持ちだよね」
「ホウリお兄ちゃんに鍛えられているからね」


 筋肉があれば魔装も維持しやすくなる。だから、特訓はわざと負荷が掛かる様にしているらしい。おかげで大きいリュックを持ててる。


「旅行に行ってたんだよね?どこに行ってたの?」
「ハイファイの街だよ」
「ハイファイ?」
「技術の街って言われてる街で、珍しいものがいっぱいあったよ」
「どんなものがあったの?」
「独りでに開くドアとか」
「えー?お化けじゃないのに、ドアが独りでに開くの?信じられないよ」
「お化けの方が信じられないと思うよ?」


 お喋りを楽しみながら登校していると、パンプ君が歩いているのが見えた。


「あ、パンプ君だ」
「ほんとだ。おーい」


 パンプ君はノエル達に気が付くと、笑顔で手を振って来た。


「ノエルとコアコじゃないか。おはよう」
「おはよー」
「パンプ君、おはよう」
「……何それ?」


 パンプ君がノエルが背負っているリュックを指さす。


「これ?皆へのお土産だよ?」
「なんでお土産がそこまで多いの?」
「多い方が皆も嬉しいでしょ?」
「無駄遣いに思えてヒヤヒヤする」
「そう?」


 パンプ君はリュックを渋い顔で見る。パンプ君は無駄遣いとかが嫌いみたい。ずっと節約していたからかな?


「それにしても、お話するの上手くなったね?」
「いっぱい練習したからね」
「それどころか性格も柔らかくなったよね?」
「だよね。前は、『誰も信じない』みたいな雰囲気だったのにね」
「あれは周りに汚い大人たちが多かったから、誰も信じられなくて……」
「ノエル達は信じてくれるってこと?」


 パンプ君が頬を染めて無言で頷く。それを見てノエルは自然と頬が緩む。頑張って良かった~。
 2人とお喋りしながら教室に向かう。


「おはよー!」


 元気よく教室の扉を開けると、既に教室にいる子達の視線が一斉にノエルに向いた。
 瞬間、皆が勢いよくノエルの元にやってきた。


「ノエル!急にいなくなって心配したんだぞ!」
「ごめんね。急にハイファイの街に行くことになってさ」
「ハイファイ!?どんな所なの!?」
「んーとね、珍しいものがいっぱいあったよ」
「珍しい物?」
「うん!水族館とか弓の展覧会とか!」


 ノエルは撮ってきた写真を取り出して、皆に旅の思い出を話す。
 こうして、ホームルームのチャイムが鳴るまで、ノエルはハイファイの街にについて話した。


☆   ☆   ☆   ☆


(キンコーンカーンコーン)
「終わったぁぁぁ!」
「ノエルさん、終了のチャイムが鳴るたびに叫ばないでください」


 最後の授業終了のチャイムが鳴り、いつも通りナマク先生がノエルを窘める。だけど、今回は落ち付くわけにはいかない。


「今からハイファイのお土産を配ります!」
「「「イエーイ!」」」


 皆の歓声を受けながら教室の後ろに置いておいたリュックを持ってくる。
 本当は朝のうちに渡しておきたかった。けど、ナマク先生が荷物になるだろうから放課後に回した方が良いって言われたから我慢した。


「まずはカール君からね。はい、どーぞ」
「ありがとう」


 リュックから紙袋を取り出してカール君に渡す。


「開けていい?」
「いーよ」


 紙袋を開けると、真っ黒なエプロンが出て来た。胸元にはカール君の『M』をモチーフにした模様が入っている。


「料理が好きだって聞いたからね。汚れが付きにくいみたいだから、簡単に洗えるよ」
「ノエルちゃんありがとう!」
「ちょっと待ちなさい」


 カール君エプロンを掲げて喜んでいるのを見ていると、後ろからサルミちゃんに肩を掴まれた。


「なあに?もしかして、お土産が待ちきれなかった?」
「そうじゃないわよ。まさか、全員に個別に買ってきたの?」
「そうだよ」
「呆れた。こんなのは大入りのお菓子を買ってきて、全員で分けてで終わりでしょ?」
「皆に喜んで欲しいと思って。ダメだった?」
「ダメではないわよ。ただ、中身を丁寧に説明していると、日が暮れるわよ」


 サルミちゃんが言うことも一理ある。日が暮れたら遊ぶ時間が減っちゃう。早く渡さないと。
 ノエルは説明もそこそこに皆にお土産を配る。その甲斐もあって、30分後にはオカルト研究以外の子にお土産を配ることができた。


「はー、やっと終わりが見えたよー」
「お疲れ様」
「コアコ、自業自得なんだから労いの言葉はいらないわよ」
「サルミちゃんひどーい」
「酷くないわよ。で?私にはどんなお土産を買ってきたの?」


 そっぽを向きながらも、ソワソワと体を動かすサルミちゃん。口は悪くても、楽しみにしてくれてるんだ。
 嬉しくなったノエルはサルミちゃんにお土産を渡す。


「はい、どーぞ」
「ペンと消しゴム?」
「サルミちゃんってお勉強を頑張ってるでしょ?だから、書きやすいペンと消しゴムがあればいいかなって」
「まあまあね。貰ってあげてもいいわ」


 お土産がすぐさまアイテムボックスに仕舞われる。最近分かって来たけど、サルミちゃんのこの態度はとっても嬉しいって意味だ。よく見ると、頬がちょっと赤いし間違いない。


「次はコアコちゃんだね。はい」


 ノエルはコアコちゃんに分厚い本を渡す。


「ありがと。これは……え!?」


 笑顔で受け取ったコアコちゃんだったけど、題名を見て目を見開いた。


「『世界のオカルティズム100選』!?これってかなりレアだよ!?よく見つけたね!?」
「本屋さんに入ったら偶々あったからさ。コアコちゃん喜ぶかなーって」
「とっっっっっても嬉しい!ありがと!今度お礼するね!」
「えへへ、楽しみにしておくね」


 本を愛おしそうに抱きしめるコアコちゃん。これだけ喜んでくれるとノエルも嬉しくなっちゃうね。


「次はパンプ君」
「僕のもあるの?」
「勿論。はい、どーぞ」
「ありがとう」


 ノエルは家計簿とお財布を渡す。


「家計簿とお財布?」
『変わったチョイスだな』
「……これは!」
「どうしたの?」
『まさか価値があるものなのか?』
「普通の家計簿と財布だね」


 パンプ君の言葉に皆がズッコケる。


「リアクションと物の価値があってないのよ!」
「でも、丁度欲しかったものだよ。ありがとうノエル」
「でしょ?もっと褒めても良いんだよ?」
「調子に乗らないの」
「あ痛っ」


 サルミちゃんからチョップを受ける。なんでか、サルミちゃんのチョップって痛いんだよね。


「さっさとマカダにお土産を渡しちゃいなさい」
「はーい」


 すっかりと軽くなったバッグからトマト缶くらいの缶を3つ取り出す。


『マカダ君どーぞ』
『これはプロテイン?』
「なんでプロテインなのよ。今までで一番変よ?」
「ホウリお兄ちゃんから聞いたんだけど、最近鍛えてるんでしょ?」
『まあな』
「だからノエルもお手伝いできないかなって」


 ホウリお兄ちゃん曰く、毎日死ぬほど頑張ってるみたい。ノエルが直接手伝う事は出来ないみたいだから、これくらいはしてあげたい。


『どう?気に入らないんだったら、他のお土産に取り換えようか?』
『いや、かなり気に入った。大切に飲ませてもらおう』
『良かった~』


 受け取ってもらえてホッと胸を撫でおろすと、パンプ君がリュックを持ち上げた。


「ん?」


 違和感を覚えたのか、パンプ君が首をかしげる。


「どうしたの?」
「まだ入ってるみたいだけど、他に誰かにあげるの?」
「あ、忘れてた」


 あの子には最後に渡そうと思ってたんだった。忘れる所だった。


「誰へのお土産なの?」
「秘密。ちょっと行ってくるね」
「え?ノエルちゃん?」


 ノエルはリュックを背負って廊下に飛び出す。この時間だと、校門から帰っている筈だ。
 そう思って校門に行くと、予想通りお目当ての子、フロランちゃんとお友達のトウキちゃん、サイテンちゃんを見つけた。
 3人が学校を出る前にノエルは大きく手を振る。


「おーい」


 大きな声で叫ぶと3人がこっちを向いた。


「あんたは……」
「よかったー、完全に帰っちゃう前でよかったよ」
「何か用かしら?」


 トウキちゃんとサイテンちゃんが、フロランちゃんを隠すようにノエルに立ちふさがる。フロランちゃんもノエルを睨んでる。
 やっぱり嫌われているみたいだ。どうにかしてお友達になれないかな。
 気を持ち直して、ノエルはお土産を取り出す。


「あのね、ハイファイの街に行ったからお土産を買って来たんだ。3人の分も買ってきたから渡しておこうと思って」
「そんなのいらないわよ」
「さっさと何処かに行きなさい」


 お土産さえ見て貰えずに、トウキちゃんとサイテンちゃんに追い返されそうになる。
 まだだ!まだあきらめない!


「せめてどんなのかだけでも見てよ」


 ノエルはお土産を押し付けるように渡す。


「トウキちゃんとサイテンちゃんには可愛くて美味しい金平糖。はい、どーぞ」


 半透明で可愛らしい瓶に入った金平糖をトウキちゃんとサイテンちゃんに渡す。トウキちゃんとサイテンちゃんは受け取った金平糖を食い入るように見る。よかった、気に入ってもらったみたい。


「フロランちゃんには、良い匂いのするタオルね。剣の特訓の後に使うと気持ちいいよ。洗っても1年は香りが続くからね」
「そんなのいらないわよ」
「少しで良いから使ってみてよ。いらなかったらノエルの机の上に置いてくれたらいいからね。トウキちゃんとサイテンちゃんも、いらなかったら机においといてね」
「……はっ!こ、こんなのいらないわよ」
「そ、そうよ!」


 金平糖を眺めていたトウキちゃんとサイテンちゃんは慌てたようにソッポを向く。似たような反応をどこかで見たような?ま、いっか。


「じゃあね!バイバーイ!」


 お土産を押し付けたノエルは、皆の元に走って帰る。よし、全部配れたかな。
 次の日、ノエルの机にはフロランちゃんに上げたタオルだけが置かれていた。残念だけど、金平糖は無かったし良しとしよう。
 次は受け取って貰えるように頑張らなくちゃ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

処理中です...