魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

文字の大きさ
337 / 472

第二百八十三話 木っ端微塵に消し飛ばしてやる!

しおりを挟む
 ホウリさんからの説明を受けて、僕らは城門を抜ける。説明と言っても、『前に出過ぎないように』だったり、『決められた位置で戦うように』だったり、『死ぬな』だったり、難しい事はなかった。
 城壁を出ると、目に飛び込んできたのは地平線を覆いつくすほどの魔物の群だった。


「うわぁ、アレを相手にするんですか」
「ゴブリンにガーゴイル、レッドスライム、ブロンズウルフ。レベルは低いが、とにかく数が多すぎるな」
「レベルが低いのも最初だけだ。後から襲ってくる魔物ほど、レベルが高く強くなっていく。更に厄介になっていくぞ」


 ホウリさんが僕の隣で話します。確かに貰った資料には、シルバーウルフとかグリーンドラゴンとかも書いてあった。
 B級冒険者でようやく倒せるような強敵が何万体も迫ってくる。考えただけでも恐ろしい。


「本当に守り切れるんでしょうか?」
「俺がなんとかする。お前らは全力で戦ってこい」


 ホウリさんが自信満々に言い放つ。今はその自信が心強い。
 ホウリさんなら何とかしてくれる、そう思うと何でも出来そうだ。


「魔物は約2時間ほどで到達する。今の内に配置についてくれ」


 ホウリさんの言葉に冒険者の皆さんが街を囲むように配置についていく。
 街は壁に囲まれているとはいえ、攻撃を何度も与えられると守り切れない。出来るだけ街に近づけずに倒さないと。


「さてと、俺はそろそろ戻る。やる事が山積みなんでな」
「分かりました。後で宿で会いましょう」
「ここは私達に任せてくれ」
「頼りにしてるぜ」


 そう言ってホウリさんが街の門へと歩いていく。すると、ホウリさんが開ける前に街の門が独りでに開いた。
 そして、中から数十人の冒険者がぞろぞろと出て来た。その冒険者たちを率いているのは見知った顔の人だった。


「兄貴!?」
「ナップ?」


 僕の叫びに兄貴が手を上げて笑顔で答える。


「よう」
「どうしてここに!?王都にいるはずでは!?」
「ピンチに駆けつけるのは主人公の特権だろ?」


 そう言って白い歯を見せて微笑む。


「その後ろの人達は?」
「俺の伝手で連れて来た奴らだ。腕は俺が保証するぜ?」
「それは心強いですね!」


 兄貴の後ろにいる冒険者の人達も各々の武器を掲げ、自身の力を誇示する。見ただけで分かる、この人たちは相当の実力者だ。僕の何倍もの戦闘経験を積んできたに違いない。
 A級冒険者の兄貴とその兄貴が認めた冒険者。これは心強い援軍だ。


「良かったですね、ホウリさん」
「別にいいが、ちゃんという事を聞けよ?」
「はっ、無用な心配だな」
「そうか。じゃあ、先にこの魔物一覧を確認してくれ。次に討伐の注意点だが……」
「そんなの必要ねぇな!いくぞお前ら!」
「「「「おおおおおお!!!」」」」


 兄貴と冒険者の方々が地平線から向かってくる魔物に突撃していく。


「兄貴!?」
「おい!止まれ!」
「バカ!勝手な真似するなって言っただろうが!」


 僕とホウリさん、ミエルさんで突撃していく皆さんを止めようと叫ぶ。けど、冒険者の皆さんは全く聞かずに突撃する。


「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」
「さっさと止まれ!その先には────」


 ホウリさんはスキルの『加速』で敏捷性を上げながら叫ぶ。



「うおおおおお……へ?」


 兄貴が間の抜けた声を上げる。瞬間、足元でスイッチが押されるような音がして……


(ドガアアアアアアン!)


 冒険者の方々を巻き込むように地雷が作動する。


「うおおおおお!?」


 兄貴たちが爆破を諸に受ける。大丈夫かと思ってヒールシュートを構えていると、黒煙の中からアフロになった兄貴たちが出て来た。


「な、なんだこれは!?」
「対魔物用の地雷だ」
「こんなの仕掛けているなら先に言え!」
「言う前に駆け出したのはお前らだろうが!」


 掴みかからんばかりの迫力の兄貴に、ホウリさんが怒声で答える。これに関してはホウリさんの言う事を聞かなかった兄貴が悪いだろう。
 そう言う思いを飲み込み、僕は弓を構えなおす。


「怪我はないですか?HPが減ってればヒールシュートで治しますよ?」
「事前に防御力を上げてたから平気だ」
「怪我しててもほっておけ。自業自得だ」
「そんな言い方はないだろ?」
「注意を聞かずに怪我をする奴に掛ける情けはない。ポーションでも飲んで大人しくしてろ」


 ホウリさんがMPポーションを兄貴に投げる。兄貴はギリギリのところでキャッチして、ホウリさんを睨みながら飲む。


「そのまま注意事項を聞け。後ろの奴らもちゃんと聞けよ?聞かない奴は魔物の群に放り込むからな?」


 ホウリさんが軽く殺気を放ちながら、皆さんを睨みつけます。その効果もあり、皆さんはホウリさんの言葉を大人しく聞きます。


「───以上だ。お前らは午前0時に交代だから、それまで気張れよ」
「午前0時……あと12時間くらいか?」
「今は人数が足りてないからな。ただし、無理だと思ったら引けよ?」
「分かってるさ。俺はA級冒険者だぜ?」


 そう言って兄貴が胸を張る。冒険者に大切なものは引き際を見極める力と言われる程、状況判断は大事だ。
 どれだけ強くても、調子に乗りすぎては早死するからね。
 ちなみに、ホウリさんに僕が一番欠けているって言われているのが、状況判断能力だったりする。……なんだか悲しくなってきた。


「今度こそ俺は行く。期待してるぜ、A級冒険者さん?」


 そう言って、ホウリさんは街への門へと歩いていく。


「おう!魔物なんか全員ぶっ潰してやるぜ」


 兄貴の言葉にホウリさんは振り向かずに手を振るだけで答える。なんだかクールでカッコイイ。


「それじゃ、僕も行きますね」
「ロワは戦わないのか?」
「戦いますよ?」
「じゃあ、どこに行くんだ?」
「街の壁の上です」


 僕は遠距離からの攻撃が得意だ。3㎞までなら僕の射程内だし、ピンチなところに矢を射れる壁の上にいるのが一番都合が良い。


「敵を射抜くことも、回復することもできますので、安心して戦ってくださいね」
「頼もしいな」
「当たり前だ。スターダストの遠距離の要だぞ?」


 なぜかミエルさんが胸を張る。けど、ミエルさんのような実力者に褒められると悪い気はしないかな。


「けどよ、あんな高い所にどうやって行くんだ?」


 兄貴は街を囲む壁を見上げる。街を守るためだけあって、30mは優に超えるほどの高さだ。高すぎて普通に登るのは無理そうなのは一目でわかる。


「普通に登るのは無理です。なら、普通に登らなければいいんですよ」
「何をする気だ?」
「これを使うんですよ」


 僕はワープアローを取りだす。刺さった場所にワープできるコレなら、苦労なく登ることが出来る。しかも、降りるときにも使えば怪我をしなくて済む。


「ワープアローか。貴重なもの持ってるんだな。というか、こんなに貴重な矢を簡単に使っていいのか?」


 兄貴がワープアローを手に取って空に掲げる。


「え?貴重?」
「これって1本10万Gくらいはするだろ?」
「へ?」
「へ?」


 僕と兄貴が揃って首を傾げる。なんだか話がかみ合っていないような?


「これって買ったんだろ?」
「いえ、僕が作ってます」
「はぁ!?作った!?」
「はい。矢のエンチャントならなんでも付与できますよ」
「なんでも?」
「はい。弓神のエンチャントです。知りませんでしたか?」
「初耳だ」


 そういえば、兄貴には弓神のことは話してなかったかも?
 僕の言葉を聞いた兄貴が顎に手を当てて考え事をする。


「どうしました?」
「なあ、実は何本か矢が必要なんだ。いくつか分けてくれないか?」
「え?兄貴って弓は使わないですよね?」
「あ、いや……俺じゃなくて銀の閃光で使うんだよ」
「銀の閃光には弓使いはいないだろう?」
「その……えっと……」


 ミエルさんの指摘に兄貴がしどろもどろになる。


「どうした?ただ理由を言うだけだぞ?」
「いや……えっと……」


 ミエルさんの追及に兄貴の目が泳ぎまくる。そんな兄貴を見たミエルさんの目は更に鋭くなる。


「まさか、ロワを金儲けに使おうとしている訳では無いだろうな?」
「そんなまさか……」


 目を反らせる兄貴にミエルさんの目力が更に強まる。


「言っておくが、ロワを金儲けに使おうとするのは許さないぞ?」
「少しくらい良いじゃねえか」
「ごめんなさい、エンチャント職人の方に悪いのでお断ります」


 エンチャントは使える人が極端に少ないスキルだ。しかも、1つ作るのに使うMPも高くて、1日に数本しか作れない。だから、エンチャントは需要に対しての供給が少なく、価値はいつの時代も高い。
 だから、僕がエンチャントを量産すると市場のエンチャントの価値が下がってしまい、職人の方に迷惑をかけてしまう。
 ちなみに、実は神級スキルのエンチャントは消費MPが99%減っている。スキル説明には何も書いてなかったけど、ホウリさん曰く『あのバカが書き忘れた』らしい。


「ちぇ、ダメか?」
「どうしてもって言うなら、ホウリさんを説得してください」
「無茶言うなよ」


 それ以上は無駄だと判断したのか、兄貴はそれ以上は何も話さなかった。


「そろそろ上に行きますね」
「ああ」
「頼りにしているぞ、ロワ」
「はい」


 ミエルさんと兄貴に見守られながら、僕は壁の上に向かって矢を引き絞る。
 そして、壁の頂点付近に狙いを付けて放つ。ワープアローが壁の側面に刺さり、僕と矢の位置が一瞬で入れ替わる。


「よっと」


 僕は壁の頂点に手を掛けて、一気に登る。登ってみて初めて分かってけど、この壁はかなり分厚い。幅が5mはありそうだ。
 これなら矢を置いておいても問題ないかな。
 アイテムボックスのアイテムを全部取り出して、壁の上に広げる。
 用意した矢は約500本。考えも無く射続けたら、すぐに矢が尽きちゃう。射るべきところを見極めないと。
 壁の上から地平線を眺める。魔物の軍勢がさっきよりも近づいている。あと30分もすれば、冒険者の人達と激突するだろう。
 街の下を見ると、街を囲むように冒険者の人達が配置されている。ミエルさんなどの前衛が前に、魔術師などの後衛は後ろにいる。オーソドックスな布陣だ。いくらミエルさんや兄貴がいるとはいえ、ずっと抑え込むのは厳しいだろう。だからこそ、危ないところは僕が援護しないと。
 とはいえ、まだ時間はある。何かしておくことはないだろうか?矢でも複製しておこうかな?
 そう思って、僕は矢筒から矢を取り出そうとして、傍にあるアタッシュケースに気が付く。


「そういえば、トリシューラって何本あったっけ?」


 ヤマタノオロチ相手に2本は使った記憶はある。あれから補給してないから8本はあるはずだ。
 アタッシュケースを開けると、ちゃんと8本あった。けど、下手にトリシューラを使ったら冒険者の人達まで巻き添えにしそうだ。考えて使わないと。
 そう思いつつ、矢の複製を始める。やれることはやっておかないとね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

処理中です...