魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百二十七話 俺の必殺技!

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 スターダストの皆で夕ご飯を食べた後、折角だから手合わせをしようという事になった。なんでも、ノエルが新しい技を開発したらしい。
 そんな訳で、夜だがギルド本部の戦場に来ていた。


「私が相手でいいのか?」
「うん!」


 ナイフを両手に持ったノエルが頷く。ノエルが相手に選んだのは私だった。本当ならホウリが良かったらしいが、やることがあるらしく出かけてしまった。


「頑張れノエル~」
「ミエルさんも頑張ってくださ~い」


 少し離れたところにロワとフランが見守っている。軽く手を振って答えつつ、目の前のノエルに集中する。
 最近のノエルはかなり強くなってきている。本気で魔装を行えば、私にもダメージを通せることがあるくらいだ。



「私の装備はどうすればいい?」
「盾とか鎧は無くていいよ。武器は速度重視が良いかな」
「ならレイピアだな」


 レイピアを取り出して構える。刃が細い剣であるレイピアは、私が一番素早く攻撃できる武器だ。
 まあ、騎士の私がレイピアを持ったところで素早さは知れているが、いつもの大剣よりはマシだろう。


「いつでも良いぞ」
「おっけー、いっくよー!」


 ノエルが魔装を使って一気に距離を詰めて来た。
 ノエルが右手のナイフを突き出してきて、私はレイピアで受け止める。すると、左手のナイフで切り付けて来た。
 私はレイピアの柄でナイフを受け止めて、腹に蹴りを繰り出す。


「おっと」


 ノエルは後ろに跳んで威力を殺す。今のところ新しい技みたいなものは無い。
 私が考えていることが分かったのか、ノエルが不敵に笑う。


「ふっふっふ、新しい技はこれからだよ!」


 そう言うと、ノエルは両手のナイフを逆手で持ち直した。


「いくよ!」


 ノエルが思いっきり突撃してきて、飛び掛かって来た。


「せいや!」


 飛び掛かりながら両手のナイフを突き立てて来る。技と言うには普通だと思うが、とりあえず防御はしておこう。
 そう思いレイピアの刃でナイフを受け止める。ノエル程度の体重では、ナイフの振り下ろしの威力は低い。この程度では技とは呼べない───


「ジャノキバ!」


 そう思っていると、腹に強い衝撃を受けた。視線を下に向けると、ノエルの膝が私の腹に突き刺さっていた。


「ジャノキバ、ナイフの降りおろしと膝蹴りで上下から攻撃する技だよ」


 ジャノキバ……『蛇の牙ジャノキバ』か。蛇の噛みつきから着想を得たのだろう。


「良い技だ。だが、威力が足りないな」


 ノエルの膝を掴んでレイピアで切り付ける。


「くっ……」


 足から血を流しながら、ノエルは私の手を振りほどく。
 そして、出血していない方の足で後ろに跳んだ。


「ミエルお姉ちゃんって大剣じゃなくても強いんだね……」
「これでも騎士団の団長だからな」


 ノエルが傷を癒しながら笑う。レイピアでもノエルの魔装を貫通するだけのダメージは出せる。少しコツはいるのだがな。


「見せたい技って言うのは今のものか?」
「そうだけど、まだあるよ」


 そう言うと、ノエルはナイフをアイテムボックスに仕舞った。どうやら、必殺技は生身の技みたいだ。


「今のはただの技。今からやるのは必殺技だよ」
「必殺技?」


 表情を見るに、ノエルはかなり自信満々のようだ。これは私も気合を入れないとな。
 ノエルの一挙手一投足に注視しつつ、レイピアを構える。


「いっくよー!」


 ノエルが再び駆け出してくる。先ほどはここから飛び掛かって来たが、今度はどうするのか。


「せいや!」


 今度も飛び掛かって来た。まるで成長していない。


「くらえ!」


 鋭い飛び蹴りが飛んでくる。だが、流石に単調過ぎて、攻撃を回避することは容易だ。
 そう思いつつ、右に回避する。飛び蹴りは威力は高いが隙も大きい。ならば、その隙をついて攻撃を行うだけだ。
 空中のノエルに向かってレイピアを突き出す。すると、ノエルはニヤリと笑った。


「計画通り!」


 ノエルはレイピアの刃を素手で掴む。魔装をしているのか、レイピアを掴んでいる手から血は出ていない。


「しま──」


 ノエルが思いっきりレイピアを引っ張ってくる。
 しまった、罠だったか!ノエルが子供だって甘く見ていた!
 レイピアごと引き寄せられ、ノエルの射程内に入ってしまう。


「貰った!」
「まだだ!」


 ノエルは空中で反転して蹴りを繰り出してくる。私はレイピアから手を離し、右腕で蹴りを防御する。
 これくらいの蹴りなら、私の防御力でどうとでも────


「レインボーキック、藍色!」


 瞬間、右手に内側に響くような衝撃が加わる。


「な!?これは!?」


 鎧どおし!?ホウリのよりも威力は低いが、ノエルも使えるのか!?


「まだまだ行くよ!」


 ノエルが着地して再び蹴りを繰り出してくる。鎧どおしなら食らう訳にはいかない。回避しないと……


「レインボーキック、青色!」


 瞬間、ノエルのつま先から魔装の刃が伸びてくる。後ろに回避しようとしたが、急に伸びた刃が頬を掠める。
 魔装は込め方を変えるだけで、刃のようにすることも可能だ。使い方によっては素手で物を切ることも可能だ。


「この一瞬でここまでの魔装ができるのか」
「凄いでしょ?頑張って練習したんだ」


 足で切り付けてきながら、ノエルが誇らしげにする。確かに凄いが、鎧どおしじゃないのであれば脅威じゃない。タイミングを見て捨てられているレイピアを拾って反撃しよう。
 ノエルの後ろにあるレイピアまでの距離を測る。あの距離なら5歩でレイピアの元まで行ける。何とか隙を突かないと。


「どんどん行くよ!」

 
 ノエルが足を引いて蹴りの姿勢を取る。よし、ここで蹴りを耐えて脇を抜けてレイピアを取りに───


「レインボーキック、赤色!」


 瞬間、ノエルの足が消えた。いや、正確には消えたように見えるほどの速さで、蹴りを繰り出してく来た。


「くっ!?」


 手の防御力を上げて何とか蹴りを受け止める。速度は速いが威力は無いみたいだ。防御力を上げてなくてもダメージは低かっただろう。


「貰った!」
「あ!」


 蹴りを受け止めた私はノエルの脇を抜けてレイピアに飛びつく。
 転がりながらレイピアを拾って、そのまま立ち上がる


「流石はミエルお姉ちゃん。一筋縄じゃいかないね」
「ノエルも凄いぞ。同じ姿勢の蹴りであれだけのバリエーションの攻撃ができるなんてな」
「えへへ、ありがと」


 見た感じ、レインボーキックの優れている点は攻撃の動作が変わらないことだ。高速の攻撃や切り裂く攻撃が同じ姿勢で繰りだされる。つまり、どんな攻撃なのかが予想しにくいということだ。
 レインボーキック、という名称から察するに攻撃は7種類あるのだろう。これはかなり秀逸な発想だ。


「まだまだレインボーキックの種類があるんだろう?」
「うん!」
「ならば」


 私はレイピアを構える。


「全て試してくれ」
「うん!ありがと!それじゃ、いっくよー!」


 ノエルが一気に距離を詰めてきて、蹴りを繰り出してくる。
 下手に受ければレイピアが破壊されるかもしれない。素手で防御するか、回避していく方がよいだろう。
 この蹴りの速度は普通。防御してカウンターを叩き込むのが良いか。
 蹴りを腕で防御しつつ、レイピアでノエルの足を切りにいく。すると、ノエルの目がキラリと光った。


「レインボーキック、橙色!」


 ノエルが足をねじって袖を絡み取る。


「せいや!」


 ノエルは地面に手をついて、逆立ちの要領で足を空中に投げ出す。すると、袖が足に巻き込まれた私は空中に放り投げられる。これってつまり……


「蹴りで投げ技!?」


 地面が頭上に近づいてくるのを見ながら私は叫ぶ。これは完全に予想外だ、完全に虚を突かれてしまった。
 だが、この程度ならどうという事も無い。私はノエルの足をレイピアで切り付けながら、受け身の体勢を取る。


「痛っ!」


 ノエルが痛みから足を少しだけ引く。そして、ノエルの足に巻き込まれた袖が解放される。
 解放された私は何とか空中で体勢を立て直し、地面に着地する。


「くぅ、今の決まらないのかぁ」
「いや、かなり危なかった。あと少しでも反応が遅れていたら頭から着地することになっていただろう」
「そう?」
「ああ。普通の者なら決まっていただろう」
「えへへ、嬉しい」


 ノエルが照れたように頭を掻き、足の傷を治す。こう見ると普通の少女なのだがな。一見して苛烈な攻撃をして来る子には見えない。


「ねぇねぇ、レインボーキックはまだあるんだけど……」
「全部試したいのだろう?遠慮しないで全て試すと良い」
「やったー!」


 ノエルが欲しい玩具を買ってもらったようにはしゃぐ。
 こうして、ノエルと一緒に必殺技のお試しをしたのだった。ちなみに、このお試しの中で、私はダメージを2回負ったのだった。
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