魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百六十話 あ・・・・ありがてえっ・・・・・・!

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 カスケットを仕留めた次の日の昼、ノエル、ロワ、ミエルはベッドから出られずにいた。


「うう……体が重い……」
「何か食べたい……」
「指が一本も動かせないや……」
「疲労しきっておるのう」


 全員が疲れからか寝具の上から動けずにいる。それほどに激闘だったのじゃろう。


「体が熱い……」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです……」


 ロワが顔を真っ赤にしながら弱々しく呟く。他の2人も似たようなものじゃ。


「明日が勝負じゃとホウリは言っておったが、本当に大丈夫なのか?」
「勝負?なんのことだ?」
「今は気にせんで良い」


 余計なことを考えさせるよりも、今は休ませた方が良いじゃろう。


「何か欲しいものはあるか?」
「ゼリー食べたい」
「僕はおかゆが欲しいです」
「私はパンケーキが食べたい」
「分かった。買ってくるから待っておれ」


 3人を残して、わしは部屋から出る。ホウリの奴は後処理に忙しいらしいので、わしで3人の世話をしておるわけじゃ。


「ゼリーとおかゆとパンケーキか。他にも何か買っていくか」


 ゼリーとおかゆは既製品で良いとしても、パンケーキは難しいのう。ディーヌに作って貰うか。
 ロワの奴はパスタをよく頼んでおったな。カルボナーラでも作ってもらうか。ノエルはハンバーグ、ミエルはオムライスでも作ってもらおうか。


「こういう時に、劣化しないアイテムボックスを使えるのは良いのう」


 熱々のまま料理を仕舞えるのはありがたいのう。
 他に何が必要なのかを考えつつ、わしは宿を出る。すると、宿に入ろうとしていた者とぶつかりそうになった。


「あっ!」
「おっと!」


 ぶつかる前に紙一重で回避する。


「すみません……あれ?フランさん?」
「なんじゃ、ラビか」


 誰かと思ったらスーツ姿のラビじゃった。見た感じ、検察の仕事の途中で抜けて来たんじゃろうか。


「どうした?憲兵の仕事で忙しいのではないのか?」
「オダリムの襲撃が一段落したと聞きまして。あと、お三方がベッドの上で動けないとのことなので、差し入れを持ってきました」


 ラビが紙袋をアイテムボックスから取り出す。


「昨日の出来事なのによく知っておるのう?」
「ホウリさん経由で知りました」
「ホウリの奴か」


 ホウリなら親しい者には伝えておっても可笑しくないか。


「何を持ってきてくれたんじゃ?」
「フルーツジュースです。前に疲れた時にホウリさんから貰って美味しかったので」
「わざわざありがとうのう。そうじゃ、すまぬがわしは買い物に行ってくるから、3人の面倒を見てくれんか?」
「少しなら時間もありますし良いですよ」
「助かる」
「301号じゃ。ホウリの名前を出せば入れるじゃろう」
「分かりました。それではまた後で」
 

 ラビが軽く会釈をして宿の中へと入っていく。早めに帰るためにスキルで高速移動をしようと思っていたが、その必要も無さそうじゃな。


「まずはディーヌの宿に行くか」


 宿でゼリーとおかゆも帰れば楽なんじゃがな。
 高速移動することなく、わしはディーヌの宿に向かって歩く。歩いている中、わしは他に買う物が無いのかを探す。
 果物でも買うか?じゃが、ラビがフルーツジュースを持っていったし果物は買わんくてもよいか。
 食べ物以外に着替えとかも買っていくか?ノエルのサイズが分かるが、ロワとミエルが曖昧じゃな。適当にサイズを買って、会うものを着せるか。
 そんなことを考えていると、またしても見知った顔を見つけた。


「あれはジルとラッカか?」


 八百屋の前でロワの友人のジルと、ミエルの友人のラッカが一緒におった。珍しい組み合わせじゃな。


「おーい!」
「うん?フランか?」
「あ、本当にゃ」


 2人もわしに気が付いたのか、手を振っている。わしも手を振り返しつつ、2人の元へと向かう。


「どうしたんじゃ?ジルはともかく、ラッカは魔国にいた筈じゃろ?」
「特別措置として魔法陣でワープしてきたニャ」
「特別措置?わしは何も聞いておらんが?」
「メリゼ魔王補佐にお願いしたら許してくれたニャ」
「あやつか」


 メリゼにはわしの権限のほとんどを渡しておる。それでワープを許可された訳か。


「ワープするほどの用とはなんじゃ?」
「魔国の被害状況と攻めて来た魔物の情報を人国に伝えることニャ」
「思ったよりも真面目な役目じゃな。てっきり、オダリムに遊びに来る口実かと思ったが」
「それもあるニャ」
「あるんかい」


 ラッカがニャハハと豪快に笑う。この猫は適当で気分屋なところがあるが、内偵の腕は確かなんじゃよな。これで性格が真面目ならいうこと無しなんじゃがな。


「まあ良い。それで、なんでお主らが一緒におるんじゃ?面識あったのか?」
「今初めて会ったさ。ロワに差し入れしようと思ってたら、ミエルに差し入れしようとした奴がいたから声を掛けたんだよ」
「その通りニャ」
「お主らも差し入れを?」
「俺達以外にも差し入れをした奴がいるのか?」
「ラビという奴じゃな」
「ふーん。お前らって人望があるんだな」
「まあのう」


 この2人とラビは面識が無かったか。まあ、憲兵と知り合えるなんて早々ないか。


「お主らは何を差し入れるつもりなんじゃ?」
「それを決めているところだ。果物とかが良いかと思ったんだが、中々決まらなくてな」
「ラッカも同じ感じニャ」
「ならば服が良いと思うぞ?」
「服?」


 わしは3人の様子とラビの差し入れの事を伝える。


「そういう訳で食べ物よりも、着替えの方が良いと思ってのう。疲れて汗もかいておるじゃろうしな」
「成程な」
「お主らなら、ロワとミエルの服のサイズが分かるのではないか?」
「分かるな」
「分かるニャ」
「ならばピッタリじゃな」


 ノエルの服はわしが用意するし、これで着替えは十分か。


「良ければ宿まで直接渡しに行ってくれないかのう?」
「元からそのつもりだ」
「場所はホウリ君から聞いてるから問題無いニャよ」
「やはりホウリか」


 あえて聞かんかったがホウリから聞いておったんじゃな。


「わしは別の買い物があるから、服は任せたぞ」
「分かった」
「任されたニャ」


 そんな感じで、着替えの服はジルとラッカに任せることにして、わしはディーヌの宿に向かう事にした。
 なんだんかんだで、必要なものは揃ってきたのう。他に必要なものは……


「エアコンかのう?」


 最近、暑くなってきたし寝苦しいかもしれん。快適に休むにはエアコンが必要かもしれん。


「わしの力では寒くなりすぎるかもしれんしな」


 わしの力は強力すぎて良い感じに冷やすという事がしにくい。エアコンがあれば楽に空調の調整ができるじゃろう。


「エアコンか。少し遠いが最新のエアコンを売っている店があった筈」


 寄り道がてらエアコンを買いに行く算段を立てておると、またしても見知った顔がやってくるのが見えた。


「……今度はミントとラミスか」


 今日はよく知り合いに会う日じゃな。今度は声を掛ける前にラミスがわしに気付いた。


「フランさーん!」


 手を振るラミスに手を振り返す。


「どうしたんですか?」
「こっちのセリフじゃ。お主らは襲撃の後始末で忙しいのではないか?」
「ロワとミエルが倒れたと聞いた。だから、少し様子を見にきただけだ」
「お主らもか」
「え?あたし達以外にも様子を見に行ってる人がいるの?」


 わしはラビとジル、ラッカのことを伝える。


「へぇ、色んな人がお見舞いに行っているんだ」
「なら負ける訳には行かないな」
「お見舞いは勝ち負けなのか?」
「他よりもショボいものを持って行ってはメンツが立たないだろう?」


 言わんとしていることは分かるが、競うようなものじゃろうか?


「お主らは何を持っていくつもりなんじゃ?」
「特に決まってないわね。元々は顔を出すだけのつもりだったし」
「ならばエアコンを買ってきてはくれぬか?」
「エアコン?」


 わしの言葉にミントが眉を顰める。わしはさっきまでの考えをミントに伝えた。


「そういう訳じゃから、エアコンを買ってきてくれんか?金は後で渡す」
「気に入らないな」
「何がじゃ?」
「俺に機械を買ってくるように依頼することがだ」


 ミントが不機嫌そうに懐から機械を取り出す。


「俺は発明家だぞ?買ってくださいではなく、発明してくださいと頼むべきだ」
「もしや、それがエアコンか?」
「その通りだ」


 ミントが持っている機械は手のひらサイズの直方体じゃ。これでエアコンの役割が持てるとは甚だ疑問じゃ。


「安心して。一応、実験も済んでいて安全性も実用性も確認しているわ」
「ラミスが言うなら間違いないか?」
「俺の言う事は信じられないのか?」
「まあのう」


 発明バカよりも、しっかり者を信じる。何も可笑しいところは無い。


「ならば話は早い。その発明品を数日貸してくれないか?」
「お前たちには世話になってるからな。許可しよう」
「いちいち偉そうにしないでよ」


 そんな事を話しながら、ミントとラミスは宿の方へと向かった。
 これだけあれば休むに困らんじゃろう。あとはディーヌの宿に食事を買いに行くだけじゃな。
 そんなこんなで、人との関わりの暖かさを感じつつ、わしは買い物をするのじゃった。
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