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【第二章】――大魔王のおしごと――
第五の将 リプル
私は、次に青い髪をリボンでサイドポニーにしている少女の前に立つ。
この少女の名前は、リプル。
『水』と『冷』の神霊で、今は北方地方に聳え立つ氷の居城を拠点にしていたと記憶している。
そんなリプルの見た目は、儚く美しい雰囲気の戦士で。
手に、豪奢な装飾と見た目のハルバードを持ち、デザインにもこだわった軽量の鎧とドレスを纏う姿は、まるで戦乙女のようでもある。
そして、ふと気づく。
ティータと同じくリプルにも『紫魔抗石』のアクセサリーを進呈したはずだが、外見上では身に着けられていないように見える。
リプルは二種の属性を持つ珍しい神霊で、その分『紫系魔法』に対して絶対的に脆弱になっている。
恐らくそれはリプルも十二分に承知の上のはず。
私は、少し心配だ。
けど、人族も魔族も神霊も、それぞれに信念や思想や悩みがあるものだろう。
つけない理由が何かあるのかもしれない。
だから気にしないでおこう。
そしてそんなリプルには双子の兄が居る。
が、本日は姿が見えない。
「ペスタはお留守番?」
そう尋ねた瞬間、リプルは姿勢を正して畏まった。
ハッ、と癖のように、短い返事が発せられ。
仕草とは裏腹のダウナーでスロウリィな声質が奏でられる。
「その通りであります、大魔王様! テンペスタには、海竜と共に周辺海域の哨戒をお願いしております!」
「そう」
神霊二人の担当する北方大陸は、海に面している。
大きな島と考えると、海岸線の距離も途方もない長さだろう。
リプル達は、特に海からの上陸を最重要視して警戒しているらしく、近隣の海域を定期的に巡視していると聞いている。
さらには海域上には深い霧を発生させて、船を惑わし、氷山などでの座礁や転覆を誘っているので、人族から死の海だと恐れられているのだとか。
まぁ、不死者と化した船員の乗った船が、霧の中を漂っているのを見たら、そんな噂も立つでしょうね。それが抑止力として機能しているのだから、リプル達は上手くやっていると言えるのだけど……。
「まぁ、あまり、人族たちを虐めないようにね」
するとまたリプルは、毅然として。
「ハッ! 弄ぶような事が決して無いよう、我が部隊に徹底致します!」
「ええ」
意味が正しく伝わったか少し疑問だけれど。
海域に迷い込んだ人族達は、なるべく穏便に引き返していただいてほしいわ。
特に漁師なんかはね。
「ところで、二人の魔術の進捗はどう?」
「……そ、それは……」
急に、リプルの歯切れが悪くなった。
先ほどまでの、勢いや元気はどこへ行ったのやら。
「『天撃』ばかりに頼っていると、いずれ限界が来るわよ? ――と、いつも言っているはず。今日こそは、何か一つでも魔術を覚えてもらうわよ」
「ハ、ハッ!」
取り繕う返事は幾らか元気になったが。
言い渡していた宿題はやっていなさそうだ。
後で、みっちり面倒を見るとしましょう。
なにせ。
神霊は、自然の雷や、冷気を操れるが、それには一時的に生命力を消費する。
だから、この双子には、それよりも安全なコストで同じ成果をあげられるように、雷や冷の魔術を学んでもらいたい。
時間がある時に、ペスタの所にも家庭教師しようかしら。
そう考えつつ、私は次を見る。
少しオドオドした、真っ黒な外套姿を。
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