よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第三章】――大魔王のおでかけ――

――大魔王のおでかけ――

 私は今、地下遺跡の入り口に居た。
 大きな両開きの扉のその前で。
 時折吹きすさぶ砂塵に、いつもの真っ黒な魔法衣を弄ばれながら。

 目前の門番に食い下がる。

「――だから、私は関係者なのだけど……!」

「知らヌ。オマエのようなチビが、ここに出入りシテいる所は見たコトが無イ。不用意にヴィヴィアン殿の名ヲ語る愚か者メ。立チ去るが良イ」


 通せんぼしている巨大な、牛頭人身の怪物ミノタウロスは、幾ら言っても取り合ってくれない。
 しまいには、ガシンガシンと、その巨体に匹敵する斧を地面に打ち鳴らし、「カエレ」と威嚇される始末だ。

「どうしようかしら」

 魔導書の執筆も行き詰っているし。
 大魔王の仕事もしたくない。
 なので視察ということにして、出てきたのだけど。
 困った。
 一番人族の侵攻度が高いと聞いたので、とりあえず視察領域は、ヴィヴィアンのところにしたけど――。

「だいじょうぶ、マナさま?」

 傍に控えている、純白の少女――ミラに心配されてしまう。
 まさか門前払いを食らうとはね。
 眼の前の門番はヴィヴィアンの部下でしょうから、力づくで押し通るような乱暴な真似をする訳にもいかないし。
 別件の目的のついでに、寄っただけだし。
 もう諦めようかしら?
 それとも――。

 私は空を見上げる。
 遺跡の外。
 砂漠地帯の上空に広がる真っ青な空を――。


 しかし、私の集積可能な範囲内に在るひかり現象核オリジンやみ現象核オリジンの量は、おそらく、今想定する術式に足りていない。
 つまり地下遺跡の内部まで、空間転移する作戦は難しそうだ。
 かといって、七分封界セプティリスを起動する程の事でも無いでしょう。

 悩んだ結果。

 やっぱり諦めた。

「仕方ないわね。本来の予定通り、人族の街でも見に行きましょうか」

「うん」

 ミラの返事が聞こえる。

 私が行こうと思っていたのは、大都市圏だったが、ふと思い出す。

「そういえば、確か、砂漠にも一つ都市があったわよね? まずそっちに行ってみましょ。数十年前の記憶だけど、ここからずっと南に行ったところだった筈だわ」
 まぁ、ずいぶん前に見た地図に載ってたってだけの記憶なのだけどね。

「そうなんですか?」
 ミラは首をかしげるが、ミラも知っているはずのない情報だから当然でしょう。

「ええ。ヴィヴィアンに合うのはまた今度ね」

「わかりました、マナさま」

 そう言って、私達は遺跡の入り口から立ち去った。
 砂地に咲く一本のサボテンをしり目に――。



 ⌛⌛⌛⌛⌛


 それが、半刻ほど前のことだった。
 
 私たちはひたすら歩いていた。


 照り付ける太陽も。
 灼熱の気温も。
 熱されて陽炎を放つ、一面の砂も。

 世界樹の精霊と、鏡の化身に、不快をもたらすようなことは無い。
 そもそもの存在、身体の在り方が違うからだ。

 たまに襲ってくる弱小の魔物たちも、ミラが相手をしてくれるので、あっという間にカタがつくし、肉体疲労とは無縁なので、歩き続けるのも苦ではない。
 
 だがその分、退屈ではあった。

 街はまだ見えず。
 大きな砂丘をいくつも越えた。

 そんな途中。


「マナ様!!!」

 後方から、叫ぶような声がした。
 私はその声に聞き覚えがある。


 振り返ると。
 少し前に越えた砂丘の頂上に、人影が見えていた。

 目を凝らす。
 丘を滑り降り、全力ダッシュで近づいてくるその影。
 
 その少女は――。


 太腿、おへそ、肩、背中。
 小麦色の肌が見え隠れする、露出度多めの衣装は、言わば踊り子風の出で立ちで。

 大きな蝙蝠のような黒翼に、槍のような尾。
 頭に2本の悪魔角を持つ少女は、生粋の魔族。
 というよりも悪魔か、夢魔サキュバスか。
 
 ライトグレーの長いツインテールと。
 頭の豪華なヴェールと、腰からぶらさがる大きな二つの輪っか。
 煌びやかなストールを振り乱すその姿。

 それが、私の目の前で、息せき切って急停止する。

「やっと、追いつきました……、マナ様!」

「ヴィヴィアンさま……」

 ミラが呼ぶ通り。
 その小悪魔な見た目の少女は、第三拠点を守護する八輝将の一人、ヴィヴィアンだった。
 
 
 

 


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