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【第四章】――大魔王と白と黒――
フィオラと、時のオリジン
この場には、 『月』、『邪』、『死』の黒い現象核。
それに、『聖』の現象核が、静かに埋もれている。
私は。
その中から、『死』の現象核を。
白皇石から、『命』の現象核を。
それぞれ集め、『命』と『死』を一つ一つを融合させていく。
こうして普段は手にすることができない、『高次元属性現象核』を作り上げ、積み上げる。
そして、生と死を合わせて出来上がるのは。
『時』の現象核だ。
生から死へ。
始まりから、終わりへ。
進む速さだけが、時の流れを認識させるように。
時属性現象核、魔素、魔気で、時の魔力を練り上げる。
私は詠う。
「回れ回れ、残辣、無心の未知調――逆巻け、絡ませ、 因果の歪み、運命の残糸を解き解き、 いま、定めし、刹那に、立ち戻れ――……時程計測点検索――……」
師匠の身体が、まだ、無事だった瞬間を導き出す。
この部屋は知っているはずだ。
まだ元気だった時の、姿を――。
みつけた……!!
影響指定範囲を、ベッドだけに固定し、術式を起こす。
「――『復元』!!」
精神まで戻すことはもうできない。
心は、時間とは別の摂理の中にある。
霧散してしまった有意識をかき集めるには、もう遅すぎる。
生気……すなわち、生きたいという願いの強さ。
それがもう無い以上、肉体だけを復元しても蘇生は実現しない。
故に、できることは身体を復元する事だけだ。
無残な姿のままではなく。
綺麗な姿のまま、埋葬する。
それだけのために。
寝台にしみ込んだ、体液。
虫に、細菌に、食べられた血肉。
溶けて溢れた臓物。
流した血液、細胞外液、細胞内液、老廃物。
失った常在菌、ミトコンドリア。
破れた皮膚組織。
着ていた部屋着のワンピース。
こぼれて散ったパズルのピースが、勝手にはまって行くように。
ひとつひとつ、瞬く間に、時間とともに。
巻き戻り復元されていく。
そうして、ものの30秒ほどで、師匠の身体は生前の健康な状態――。
美しく、小柄な姿に戻った。
ただし、目は閉じたまま。
意志の宿らない生体人形のようなモノだ。
影響範囲にベットも含んでいたことから。
シーツも真っ白になった。
フィオラがまめに交換していたんだろう。
「す、すごい……これが、本当の魔法……。 まるで生き返ったみたい……」
フィオラは、歓喜と同時に、やや引いてしまったようだ。
「残念だけど、戻ったのは肉体だけよ」
「そう。なんだ……」
師匠の顔を覗き込むフィオラ。
そうして、掌でその頬に、そっと触れる。
ポタリ、ポタリ、と。
また、零れる水滴がシーツに染みを作って。
つめたい、と呟いて。
「でも、よかった……。綺麗でかわいい師匠にまた戻れて」
良かった。
そう言われて、私も救われた。
死体の復元というのは、私自身あまりいいとは思っていない。
きっと、良いと思う者はそんなにいないだろう、と私は思う。
けど、フィオラが納得してくれるならそれでいい。
難解な術式を施した甲斐もある。
少女は、お金の稼ぎ方は間違えていたが。
心はまだ、くすんではいない。
それどころか、どちらかと言えば純粋だろう。
なぜなら、この場には聖属性の現象核がある。
聖属性は、正しき心に触れた魔素が変化して出来るものだ。
つまり。
少なくとも、世界は。
少女の事を、悪だと思っていないのだ。
「ありがとう、白皇石。戻って構わないわ」
白皇石を元に戻し。
私は、師匠の身体を抱きかかえる。
小柄で、華奢だった。
病気で痩せていたのもあるだろう。
思ったよりも、とても軽い。
それに、私は魔法使いだし、背も小さいけど、非力ってわけでは無いのだ。
「さぁ、教会へ案内して」
「うん。スコップとか要る?」
「いらないわ。魔法で掘る」
「なにそれ」
少女は、目元をぬぐいながら、少しだけ笑った。
部屋を出ようかと言う所で。
「これ持って行っていい?」
フィオラは、懐に、大き目の木像を抱えた。
私は、最初から聞きたかったのだ。
その女性を象った像には、たくさんの聖属性が宿っている。
それに、デフォルメされているがとても上手い。
「そうそう、聞きたかったのだけど、それはなに?」
「女神像。私が作ったんだ。師匠が、良くなりますようにって――」
そうか。
だからこの部屋には、たくさん像が置かれているのだ。
よく見れば、上手いものも下手なものもある。
作るうちに、上手くなっていったのだろう。
「――上手じゃない。彫刻家になれそうね」
「ええ? やだ。魔法使いがいい。無理かな?」
「さぁ? それは、努力次第ね」
私たちは、そんな他愛の無い会話をしながら。
街はずれの廃教会を目指した。
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