よくわかる異世界魔法ー『マナの書』ー

日傘差すバイト

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【第五章】――大魔王と魔導人形――

ザトーと手合わせの行方


 溶岩地帯。
 しいては、建設途中のこの溶岩迷宮には『火属性現象核オリジン』と『熱属性現象核オリジン』が、潤沢に存在する。
 さらに、緋色の竜レッドドラゴンであるザトーは、自らの魔核からも、火の魔力を産出している。

 故に、火と熱の魔力を調達する速度と量は、並みの魔法使いの比ではない。

 そのうえ、魔核で作り出される魔力も、積み上げられた年齢や経験が、その質を高めている。
 ザトーの鞘に納められた剣の刀身に伝うのは、それらを集約する膨大な魔力、熱量だ。

 対する私の長柄武器ハルバードに伝うのは。
 生気アニマを練り上げて作り出す練気アニムス
 その練気アニムスを3個合成して作り出す、『闘気オーラ』と呼ぶもの。

 魔気オドを一つも使用しないどころか、全てを自己から産出するこのエネルギーは、私が今修練している、魔力とは別ベクトルの力だ。

 生命エネルギーを起点とするこのパワーは、決して魔力に引けを取るものではない。
 そしてこの力は、元々は人族の技術。

「生命力を鍛錬し、昇華された力――闘気オーラ……ですか。 ――ヒトの技術すらも吸収しようとするその勤勉さ。相変わらずですな、大魔王様」

「ええ、私は何であろうと学べるものは学ぶ。――それが私。研究と鍛錬こそが、私の唯一の暇つぶしで、その成果を一段づつ上る感覚が一番の楽しみなのだから」

 ふっ、とザトーは呆れたように苦笑する。
「以前のワシならば、一笑に付していたでしょうが。……今ならば少しは理解もできます――」
 
 互いの高め合う『力』が、渦巻き。

 地形と空気が震えあがり。
 砂利が溶解し、吹き上がる小片が弾け飛ぶ、この睨みあい。

 その第二ラウンド目――。

「――さて、ではどちらの真似事が、より上等なのか――」

 灼熱の岩盤を踏み砕き
 迫る長身から。
 
「――決めましょうぞ!」

 放たれる、一線の閃き。

 瞬きの間に。
 火炎に包まれ、赤熱した刃が振るわれ。

 本体ザトーよりも早く、
 業熱の波紋が、炎の荒波となって、向かい来る。

 対する私はその場で闘気オーラを纏うハルバードを軽く薙ぎ、弧を描いた。

「『活殺・霊衝波』!!」

 高波のように。
 床を割って。
 噴き昇る闘気の柱が、私を囲うように産まれ、まるで壁のように迸る。
 それは、防壁でもあるが。
 触れればエネルギーの奔流に吹き飛ばされる攻撃でもある。

 そも、2メートルの長柄からくりだされる波は、当然それ以上に遠くへ届く。
 
 それは、迫る炎の波をせき止め。
 呑み込み、ゆるやかに進み。

 剣を振り上げ。
 炎の波と共に強襲を試みたザトーへのカウンターとして機能を果たす。

「ぐぉ!?」

 ザトーの体躯が吹き飛ばされ舞い上がる。
 けれど。
 ザトーとて、それで終わるような凡夫ではなかった。
 そのまま剣を納め。
 魔力を籠め、私へ落ちてくる。
 
 唐竹からの。

 抜刀。

 瞬く間に迫る炎刃。
 
 それに、ぶち当てるかのように。
 ハルバードの柄で、その刃を受け止め。

 振り払う。

 それと同時に、爆発が起きた。
 ザトーが、武器と武器が交差する瞬間に、発生させたのだ。

 膂力、落下、重量、魔力、そして膨大な熱量。
 それに合わさる爆発の衝撃。

 その全てを受けた私のハルバードは、柄の中央から分断され、破壊された。
 
 けど。
「かはっ!!」
 その代償として、ザトーは私に打ち飛ばされて、フロアの壁に激突した。

 しかし。
 やはり、そこは竜だ。
 苦悶の表情は一瞬だけで、すぐに体勢を立て直し。
 再び迫ってくる。

 私が武器を失ったのこの機会を、逃すまいとするかのように。

 即座に、ゴミと化したハルバードの破片を投げ捨て。

「『青皇石メルクリエ』――」

 私は、即座に『七分封界セプティリス』の一つ。
 青色の正八面体を召喚する――。

 そのまま。
 闘気オーラを放出しつつ。

 私は詠う。
「儚き強さを得て愛は疎遠、孤独の御霊は、全てを屠る――」

 閃光のような速度で迫る曲剣を、躱し。

 続けざまに振るわれる縦横無尽の剣軌を。

 闘気オーラを籠めた手刀で弾き。
 回し蹴りで、刀身を蹴り飛ばし。
 剣を包む炎熱の魔力は。
 私の纏う突風のように吹きすさぶ闘気オーラと。
 我が魔法衣が耐え忍ぶ。
 
「――哀憐なる埋もれ木よ、意気やおこせ――」

 水の魔力を纏い。
 闘気オーラをない交ぜ。

 徒手空拳で防戦に徹しつつ。

 完成される術式の完全詠唱フルキャストを。

 名称宣言で、実行する。
 
「――『氷の剣コンヘラシオン』!!」 
 
 雲霞のごとき冷気が巻き起こり。
 わが手の中に、極寒の刃が、『大剣』となりて結実する。

 魔力には絶対的な規則がある。
 火は水に。
 熱は冷に。
 絶対に打ち勝てない。

「よもや、七分封界セプティリスとは――!」

 竜人から振るわれる、渾身の一撃。
 それに私は、両手で握る氷の大剣を叩きつける。

 確かに、ザトーの一撃は、パワーも魔力も桁違いの威力だ。

 されど。

 ザトーの刀剣に伝う膨大な炎は、水の魔力に消され。
 赤熱しあらゆるものを溶断する筈の熱は、冷の魔力に消され。

 甲高く。
 轟く音色は。

 ただの刀剣が、氷の刃を打ち付けるだけの音響。

 
 それでも、凄まじい速度と筋力で振るわれた片刃の曲剣は、私の闘気オーラごと氷剣を、硝子のように粉砕する。

 キラキラと破片が舞う、業熱のフロア。

 さすが竜。
 全詠唱で作り出した氷の魔剣さえも撃ち砕くとは。
 パラパラと散り。
 空を彩る無数の氷片が床に落ち。
 少しづつ魔術としての形を失って消えていく。

 そして。

 曲剣と。
 ギリギリで折れなかった氷の大剣。

 それらが交差し。

 両者、そこで固まった。

 これは手詰まりだ。

 私が、『青皇石メルクリエ』を呼んだという事は。
 火と熱を専門とするレッドドラゴンから。
 その利を奪う戦術だ。
 
 このまま私が『氷の剣』で戦い始めれば。
 ザトーに勝ち目はほとんど無い。

 だから。
 『青皇石メルクリエ』を見た長身の老兵は、
 乾いた笑みでこう言った。

「――それは、反則ですぞ?」――と。

 
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