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【第五章】――大魔王と魔導人形――
アリスと温泉宿②
髪を結いあげてから頭にタオルをターバンのように巻き。
身体にもタオルを巻き。
同じような恰好の三人は浴場に足を踏み入れる。
アリスは、人型に仕立ててあるとはいえ、さすがに関節部や各所はつなぎ目が目立つ。
それは致し方が無い事だ。
ボディのメンテナンスをするためには、各部の表面を外せるようにしておく必要があるのだから。
そしてそもそもヒトの裸体とは明らかに違うのは一目で解るだろう。
だからやはりちょっと目立つようだった。
今はタオルと、もくもくと充満する湯気で概ね隠されているが、三人分の髪を結ったり、服を脱いで預けたり、脱衣場での私たちはそれなりに気にされていたように思う。
早く出たほうが良いかもしれないな。
一時はそう思ったが、それではワザワザここまで来た意味も無くなってしまうので、何かあればその時はそのときだろうと、半ばあきらめている。
まぁ、時間帯の影響か、時期的な問題なのか。
客はまばらだったのは幸いだった。
沐浴のためにお湯をためてある区画。
その周囲の岩盤を平らに削った床と、身体を洗浄するための設備を備えた一画。
そこで、受付で買ったスポンジと洗剤で、アリスを泡だらけにしながら――。
それよりも、私はアリスを磨いている途中で耳に入ってきた女性客同士の会話を気にかけていた。
それは、この街にある大きな冷属性結晶のレプリカについてだ。
「この街って、田舎なのに魔法技術高くない?」
「あぁ、確か近くに有名な魔法使いが住んでるらしいわ。その所為じゃない?」
「へぇ、なんていう名前の人?」
「なんだったかなぁ、ラーティ……なんとかだったと思うけど」
「聞いたことないかも。そんなに有名なんだ?」
「魔法を道具として使えるようにするような発明をした人だよ、たしか」
「ガチ!? ヤバじゃん」
どこからかそんな会話が聞こえてくる。
有名な魔法使い? 人族の?
ちょっと気になる。
――いや、かなり気になるわ。
「マナさま、マナさま……!」
パタパタ浴場を駆け寄ってきた全裸なちんちくりんが、私に何かを訴える。
「なに?」
「アリスさまが……」
「あ」
泡だらけで雪だるまみたいになってしまっていた。
気もそぞろだったせいだ。
真面目に磨き上げなければ。
――そうして、1時間程の後に、私たちは風呂屋をチェックアウトする。
その受付に、借りていた物を返した時。
店番のおじさんに声を掛けられる。
「まいど。またのご来店お待ちしております」
「ええ、気が向いたらね」
「今度は、男湯と女湯間違えるなよ?」
うるさいなぁ。
どっちでもいいじゃないのそんなの。
「それより、この街の近くに、魔法使いが住んでいるの?」
「ああ、ラルティスのジジィの事か?」
ラルティス? ジジィ?
「ヒュム族? 何処に居るの? そのお爺さん」
「ああ、280歳のヒュムだよ。ここから近くの塔に引きこもってるが」
塔? 塔ね。
なるほど。
「ありがとう」
「おう、またな」
――有名な魔法使い。
しかもヒュムの平均年齢よりも2倍以上の長寿だわ。
公務なんてしてる場合じゃないわね。
身体にもタオルを巻き。
同じような恰好の三人は浴場に足を踏み入れる。
アリスは、人型に仕立ててあるとはいえ、さすがに関節部や各所はつなぎ目が目立つ。
それは致し方が無い事だ。
ボディのメンテナンスをするためには、各部の表面を外せるようにしておく必要があるのだから。
そしてそもそもヒトの裸体とは明らかに違うのは一目で解るだろう。
だからやはりちょっと目立つようだった。
今はタオルと、もくもくと充満する湯気で概ね隠されているが、三人分の髪を結ったり、服を脱いで預けたり、脱衣場での私たちはそれなりに気にされていたように思う。
早く出たほうが良いかもしれないな。
一時はそう思ったが、それではワザワザここまで来た意味も無くなってしまうので、何かあればその時はそのときだろうと、半ばあきらめている。
まぁ、時間帯の影響か、時期的な問題なのか。
客はまばらだったのは幸いだった。
沐浴のためにお湯をためてある区画。
その周囲の岩盤を平らに削った床と、身体を洗浄するための設備を備えた一画。
そこで、受付で買ったスポンジと洗剤で、アリスを泡だらけにしながら――。
それよりも、私はアリスを磨いている途中で耳に入ってきた女性客同士の会話を気にかけていた。
それは、この街にある大きな冷属性結晶のレプリカについてだ。
「この街って、田舎なのに魔法技術高くない?」
「あぁ、確か近くに有名な魔法使いが住んでるらしいわ。その所為じゃない?」
「へぇ、なんていう名前の人?」
「なんだったかなぁ、ラーティ……なんとかだったと思うけど」
「聞いたことないかも。そんなに有名なんだ?」
「魔法を道具として使えるようにするような発明をした人だよ、たしか」
「ガチ!? ヤバじゃん」
どこからかそんな会話が聞こえてくる。
有名な魔法使い? 人族の?
ちょっと気になる。
――いや、かなり気になるわ。
「マナさま、マナさま……!」
パタパタ浴場を駆け寄ってきた全裸なちんちくりんが、私に何かを訴える。
「なに?」
「アリスさまが……」
「あ」
泡だらけで雪だるまみたいになってしまっていた。
気もそぞろだったせいだ。
真面目に磨き上げなければ。
――そうして、1時間程の後に、私たちは風呂屋をチェックアウトする。
その受付に、借りていた物を返した時。
店番のおじさんに声を掛けられる。
「まいど。またのご来店お待ちしております」
「ええ、気が向いたらね」
「今度は、男湯と女湯間違えるなよ?」
うるさいなぁ。
どっちでもいいじゃないのそんなの。
「それより、この街の近くに、魔法使いが住んでいるの?」
「ああ、ラルティスのジジィの事か?」
ラルティス? ジジィ?
「ヒュム族? 何処に居るの? そのお爺さん」
「ああ、280歳のヒュムだよ。ここから近くの塔に引きこもってるが」
塔? 塔ね。
なるほど。
「ありがとう」
「おう、またな」
――有名な魔法使い。
しかもヒュムの平均年齢よりも2倍以上の長寿だわ。
公務なんてしてる場合じゃないわね。
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