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わたちゃんからの説明
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「アメリアさん。アメリアさーん」
誰かの呼ぶ声がする。私はアメリアさんとやらじゃないけど、目をゆっくり開いて声のする方を見た。
淡い黄色の綿帽子がふわふわ浮いているだけである。周りをキョロキョロ見回しても何もない。白い空間がただ広がっているだけ。
なるほど。ここが天国なのか。
「違いますからね!」
「え?」
やっぱり綿帽子が喋っているような気がする。
「何が違うのわたちゃん」
「変な名前で呼ばないでください!」
「それじゃあ名前教えてよ」
「それは……わたちゃんでいいです」
勝った!
「アメリアさんあなた、順応早すぎますね」
だからそのアメリアさんって誰だ。
「私は山田ですけど」
何回言わせるんだ。ってあれ?
「ああ、そうでしたね。山田絵実さん」
私フルネームで名乗ったかな。それよりここは天国じゃなければどこなんだろう。私は階段から落ちて死んだのでは?
「気を失う前のことを覚えていますか?」
「ええと、階段を上りきる直前に用事を思い出して、振り返ったら頭から落ちた?」
わたちゃんが私のことをまるで出来の悪い子って叱るみたいに、ピカピカと光った。
「それはこちらに来る前の記憶です。人相の悪い男性に会ったでしょう?」
「あ!」
そうだ。品のいい病院に入院していて、看護師さんも先生も親切。鏡を見たら何故か美少女が映っていて、男性がいきなり近寄ってきてその顔が恐ろしく好みで。
「どういうことなの!?」
「山田さん。あなた男性の趣味が悪いって言われませんか」
わたちゃん失礼すぎる。確かに私の趣味は万人受けはしない。任侠映画やハードボイルドものが大好きで、男らしく厳つい顔がむちゃくちゃ好みなのである。
しかもそれプラス顔の濃い外国人ときた。そりゃ好み過ぎて気絶もするでしょうよ。ビバ顔面凶器!
「まあそのおかげで機会を頂けたので助かりましたが。階段を落ちた直後はタイミングが合いませんでしたので」
「なんのタイミング?」
「あなたにとって、この不可解な出来事を説明する為の時間です」
わたちゃんが言うにはこうだ。私はいま異世界に転移しているが、本当はこちらで生まれる筈だったらしい。そして私がいま入っているアメリアも、この世界の人間ではなかったらしいのだ。
「その、魂を扱うのは非常に調整が複雑で難しく、繊細な作業を伴うものd「間違えたの?」
わたちゃんは気まずそうに揺れている。
「ですからしてこの役職につけるのは一握りd「間違えたのね?」
「────ハイ」
変に饒舌になったと思ったらやっぱり間違えてたのね。
「山田さんは貴族令嬢であるアメリアさんとして生まれてくる筈でした。そこで元に戻す方法を考えていたところへちょうどお二人同時にハプニングが……」
絶対偶然じゃないような気がする。わたちゃんが何かしたに決まってる。私の勘がそう告げてる。
「おっほんともかく。このままでは暮らしていくのに不便ですので、アメリアさんの記憶を山田さんに入れ込みます」
「それはいいけどアメリアさんの方は大丈夫なの? ここよりめちゃくちゃな世界で苦労してない?」
「その点はご安心ください。アフターフォローは完璧でございます」
それなら一安心。でも私の魂が本来あるべきところに帰ってるってことは、元の世界には帰れないんだよねたぶん。彼氏……は別にどうでもいいけど一人残してきた母親が気になる。
「山田さんの体にはアメリアさんが入っておりますので、その点は大丈夫です」
「ちょっとどういうこと!?」
自分で言うのもなんだけど、会社はブラックだし彼氏は最低で、狭いアパートの一人暮らしに貴族令嬢が耐えられる訳がない。わたちゃんの胸倉らしきところを掴もうとしたが手が空を切った。
なんて乱暴な、と言いながらわたちゃんは揺れた。
「山田さんの生きてきた人生とは少し変わっておりますのでご安心を。これも調整の範囲です」
ドヤ顔してる。全然分からないけど絶対いまドヤ顔してる。
「それではもう時間もありませんので、この辺で。物語でよくあるチートなどはないですが、この先あなたの人生が幸せなものになりますよう祈りを捧げます」
誰かの呼ぶ声がする。私はアメリアさんとやらじゃないけど、目をゆっくり開いて声のする方を見た。
淡い黄色の綿帽子がふわふわ浮いているだけである。周りをキョロキョロ見回しても何もない。白い空間がただ広がっているだけ。
なるほど。ここが天国なのか。
「違いますからね!」
「え?」
やっぱり綿帽子が喋っているような気がする。
「何が違うのわたちゃん」
「変な名前で呼ばないでください!」
「それじゃあ名前教えてよ」
「それは……わたちゃんでいいです」
勝った!
「アメリアさんあなた、順応早すぎますね」
だからそのアメリアさんって誰だ。
「私は山田ですけど」
何回言わせるんだ。ってあれ?
「ああ、そうでしたね。山田絵実さん」
私フルネームで名乗ったかな。それよりここは天国じゃなければどこなんだろう。私は階段から落ちて死んだのでは?
「気を失う前のことを覚えていますか?」
「ええと、階段を上りきる直前に用事を思い出して、振り返ったら頭から落ちた?」
わたちゃんが私のことをまるで出来の悪い子って叱るみたいに、ピカピカと光った。
「それはこちらに来る前の記憶です。人相の悪い男性に会ったでしょう?」
「あ!」
そうだ。品のいい病院に入院していて、看護師さんも先生も親切。鏡を見たら何故か美少女が映っていて、男性がいきなり近寄ってきてその顔が恐ろしく好みで。
「どういうことなの!?」
「山田さん。あなた男性の趣味が悪いって言われませんか」
わたちゃん失礼すぎる。確かに私の趣味は万人受けはしない。任侠映画やハードボイルドものが大好きで、男らしく厳つい顔がむちゃくちゃ好みなのである。
しかもそれプラス顔の濃い外国人ときた。そりゃ好み過ぎて気絶もするでしょうよ。ビバ顔面凶器!
「まあそのおかげで機会を頂けたので助かりましたが。階段を落ちた直後はタイミングが合いませんでしたので」
「なんのタイミング?」
「あなたにとって、この不可解な出来事を説明する為の時間です」
わたちゃんが言うにはこうだ。私はいま異世界に転移しているが、本当はこちらで生まれる筈だったらしい。そして私がいま入っているアメリアも、この世界の人間ではなかったらしいのだ。
「その、魂を扱うのは非常に調整が複雑で難しく、繊細な作業を伴うものd「間違えたの?」
わたちゃんは気まずそうに揺れている。
「ですからしてこの役職につけるのは一握りd「間違えたのね?」
「────ハイ」
変に饒舌になったと思ったらやっぱり間違えてたのね。
「山田さんは貴族令嬢であるアメリアさんとして生まれてくる筈でした。そこで元に戻す方法を考えていたところへちょうどお二人同時にハプニングが……」
絶対偶然じゃないような気がする。わたちゃんが何かしたに決まってる。私の勘がそう告げてる。
「おっほんともかく。このままでは暮らしていくのに不便ですので、アメリアさんの記憶を山田さんに入れ込みます」
「それはいいけどアメリアさんの方は大丈夫なの? ここよりめちゃくちゃな世界で苦労してない?」
「その点はご安心ください。アフターフォローは完璧でございます」
それなら一安心。でも私の魂が本来あるべきところに帰ってるってことは、元の世界には帰れないんだよねたぶん。彼氏……は別にどうでもいいけど一人残してきた母親が気になる。
「山田さんの体にはアメリアさんが入っておりますので、その点は大丈夫です」
「ちょっとどういうこと!?」
自分で言うのもなんだけど、会社はブラックだし彼氏は最低で、狭いアパートの一人暮らしに貴族令嬢が耐えられる訳がない。わたちゃんの胸倉らしきところを掴もうとしたが手が空を切った。
なんて乱暴な、と言いながらわたちゃんは揺れた。
「山田さんの生きてきた人生とは少し変わっておりますのでご安心を。これも調整の範囲です」
ドヤ顔してる。全然分からないけど絶対いまドヤ顔してる。
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