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【番外編】7.温かい食事
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人生とは何が起こるか分からない。
人間万事塞翁が馬。
本当に、この古きことわざがあるように、今、僕は実感している。
でもさ、でもさ。
「アーニャ? お腹空いてない?」
同じヒト族だけど! 隣でしろくま国王妃と並んでお食事なんて!
いけない。この豪華な王族様達に囲まれているせいで、圧倒的雰囲気に呑まれている。
「おっ、お腹はペコペコです! でもききき緊張してその・・・」
「緊張? あぁ! 今はプライベートな時間で、王族とか身分は関係無いの。アーニャは野菜好き?」
「へっ、あ、だい、大好きです。頂きます」
大好きな紫キャベツを口にいれた。カリコリのシャキシャキのこの歯ごたえに、味わったことのないマヨネーズベースのドレッシングが凄く美味しい。
「すっごく美味しい! っ、です!」
「そう、良かった」
そして向かいには何故かレディアンさんがいらっしゃる。何故か、というのはおかしいのかな。
「・・・・・・」
ゲームの家からずぅっと見られている気がするんだけども。
「レディアン」
「なんだレンよ」
「さっきから何? アーニャを見過ぎ」
「目の保養にするのはいいだろう」
「知ってる? そういうの、ストーカーって言うんだよ」
「しゅ、しゅと、かー?」
「エトは覚えなくていいんだよ~?」
「ぁい! んぐ、あぐ、んぐ」
エト王子もしっかりとお野菜を食べて偉い。
「私に取り入る者は沢山いても、私からの求愛をあぁもばっさりと断られたのは初めてだ。・・・何故だ?」
何故って。それを聞くのか。
「・・ぇと・・・」
「いいよアーニャ。思ってること、はっきり言わないと。俺もディランにどれだけ説教したか。ほんっと、獣人は俺達を甘く見てる。自分達の思い通りになるのがさも当然のようにね」
ディラン王とレン様のなり染め云々も聞きたいけれど。そうだ、僕なんかでも、百、一人目のハレム員になるのは無理だ。
「レディアン様」
「あぁ」
「今レディアン様のハレムの方々は、レディアン様に愛され、満足されていると存じます」
「当然だ」
「ということは、レディアン様は彼ら彼女達との将来を、真剣に考えていらっしゃらない。そういうことでございますね」
「将来?」
「はい。百人全員と婚姻され、お世継ぎを産ませるのでしょうか」
「いくら私でもそれは無理だな。せめて・・・うぅ~ん・・・五十・・・」
化け物か。
「馬鹿が。おまえがしろくまなら大賛成だが。・・・せめて三十人だ」
熊人って、皆こうなの?
「アーニャ、気にしないで。ちょっと思考がお花畑なだけだから」
「・・・あはは」
「それでアーニャ。私がどう答えたら正解なのだろうか」
「正解なんてありませんよ。ただ、僕と将来生涯を共にする”家族の在り方”の考え方が違うだけです」
「家族の在り方・・・」
「はい。僕はレン様のように誰か一人に愛し愛されたい、独り占めしたいそれだけです。一夫多妻のお思考をお持ちのレディアン様は、満遍なく好みの方々に平等に愛を送り、その方々に愛されたい。一対一の愛か、一対多数の愛が欲しいかの違いです。僕は前者なので、お断りさせて頂いた次第です」
「・・・価値観の相違、か」
「はい。こんな形になってしまいましたが、こんな僕をレディアン様のハレム百、一人目としてお誘い下さってありがとうございました。自分の人生の中で結構名誉がある方だと思うので、自分のお墓まで持って行こうと思います」
「ぶっ!」
隣でレン様が盛大に噴き出された。
「ぶぅ! きゃはははははは!」
エト王子が喜んでいる。
「あはははははは! 良かったねレディアン! お墓まで持って行ってくれる事案で良かった良かったあははははは!」
「きゃははははははぁ!」
レン様とエト王子が爆笑している。
はて? 変な言い方をしてしまったかな。
「んんんん~っ! 面白くない! 実に面白くないっ!」
バンバンとテーブルパンをするレディアンさん。
「おい行儀が悪いぞ元王が」
「五月蠅いのだ。つまりは私の愛を独り占めしたいと、そう申すのだな!?」
「え? いえ、別にそうは申し上げておりません。恋愛において、結婚において、生涯共にする旦那様はたった一人でいいとお伝えしているだけで、何もレディアン様に僕のそのたった一人の旦那様になって欲しいとは、一言も! 断じて一言も申し上げておりません」
しっかり、はっきりと伝えなければ。
「だ、旦那様・・・」
「はい。それに、レディアン様も、僕には敷居が高過ぎます。僕は一般人です、ゲーム実況でも、王族に媚びを売るなやらのアンチコメントが毎日鬼のように来ますし。でも言われなくても、僕自身がそれを痛感していることで、馴れ合いは出来かねます」
「だ、旦那、様・・・」
まだおっしゃっている。何をそんなに反芻しているのだろう。
「・・・アーニャ、俺はアーニャのこと、大事な友達と思っているよ?」
「レン様・・・」
「アーニャは? アーニャは違うの?」
「・・・友人なんて恐れ多い。これは、その、ビジネスですから」
嘘。
本当は凄く嬉しい。
「・・・アーニャ・・・」
でもどう誰が見ても、これは奇跡だ。
レン様にお声をかけて頂いたのは本当に奇跡だ。
「・・・・・・」
少し沈黙が流れた。さっきまで笑い声があったのに。やってしまった。
空気を悪くしてしまった。
「す、すいません。楽しいお食事の時間なのに。とても美味しかったです。お誘い頂き、大変ありがとうございました」
席を立った。
「え、アーニャ」
「空気を悪くしてしまってすいませんレン様、ディラン陛下。そしてレディアン様。ありがとうございました、お先に失礼致します」
深くお辞儀をして、この場を去った。
こんなに温かい食事なのに。
どうして逃げてしまうんだろう。
でも逃げてしまう。
こんな自分が大嫌いだ。
人間万事塞翁が馬。
本当に、この古きことわざがあるように、今、僕は実感している。
でもさ、でもさ。
「アーニャ? お腹空いてない?」
同じヒト族だけど! 隣でしろくま国王妃と並んでお食事なんて!
いけない。この豪華な王族様達に囲まれているせいで、圧倒的雰囲気に呑まれている。
「おっ、お腹はペコペコです! でもききき緊張してその・・・」
「緊張? あぁ! 今はプライベートな時間で、王族とか身分は関係無いの。アーニャは野菜好き?」
「へっ、あ、だい、大好きです。頂きます」
大好きな紫キャベツを口にいれた。カリコリのシャキシャキのこの歯ごたえに、味わったことのないマヨネーズベースのドレッシングが凄く美味しい。
「すっごく美味しい! っ、です!」
「そう、良かった」
そして向かいには何故かレディアンさんがいらっしゃる。何故か、というのはおかしいのかな。
「・・・・・・」
ゲームの家からずぅっと見られている気がするんだけども。
「レディアン」
「なんだレンよ」
「さっきから何? アーニャを見過ぎ」
「目の保養にするのはいいだろう」
「知ってる? そういうの、ストーカーって言うんだよ」
「しゅ、しゅと、かー?」
「エトは覚えなくていいんだよ~?」
「ぁい! んぐ、あぐ、んぐ」
エト王子もしっかりとお野菜を食べて偉い。
「私に取り入る者は沢山いても、私からの求愛をあぁもばっさりと断られたのは初めてだ。・・・何故だ?」
何故って。それを聞くのか。
「・・ぇと・・・」
「いいよアーニャ。思ってること、はっきり言わないと。俺もディランにどれだけ説教したか。ほんっと、獣人は俺達を甘く見てる。自分達の思い通りになるのがさも当然のようにね」
ディラン王とレン様のなり染め云々も聞きたいけれど。そうだ、僕なんかでも、百、一人目のハレム員になるのは無理だ。
「レディアン様」
「あぁ」
「今レディアン様のハレムの方々は、レディアン様に愛され、満足されていると存じます」
「当然だ」
「ということは、レディアン様は彼ら彼女達との将来を、真剣に考えていらっしゃらない。そういうことでございますね」
「将来?」
「はい。百人全員と婚姻され、お世継ぎを産ませるのでしょうか」
「いくら私でもそれは無理だな。せめて・・・うぅ~ん・・・五十・・・」
化け物か。
「馬鹿が。おまえがしろくまなら大賛成だが。・・・せめて三十人だ」
熊人って、皆こうなの?
「アーニャ、気にしないで。ちょっと思考がお花畑なだけだから」
「・・・あはは」
「それでアーニャ。私がどう答えたら正解なのだろうか」
「正解なんてありませんよ。ただ、僕と将来生涯を共にする”家族の在り方”の考え方が違うだけです」
「家族の在り方・・・」
「はい。僕はレン様のように誰か一人に愛し愛されたい、独り占めしたいそれだけです。一夫多妻のお思考をお持ちのレディアン様は、満遍なく好みの方々に平等に愛を送り、その方々に愛されたい。一対一の愛か、一対多数の愛が欲しいかの違いです。僕は前者なので、お断りさせて頂いた次第です」
「・・・価値観の相違、か」
「はい。こんな形になってしまいましたが、こんな僕をレディアン様のハレム百、一人目としてお誘い下さってありがとうございました。自分の人生の中で結構名誉がある方だと思うので、自分のお墓まで持って行こうと思います」
「ぶっ!」
隣でレン様が盛大に噴き出された。
「ぶぅ! きゃはははははは!」
エト王子が喜んでいる。
「あはははははは! 良かったねレディアン! お墓まで持って行ってくれる事案で良かった良かったあははははは!」
「きゃははははははぁ!」
レン様とエト王子が爆笑している。
はて? 変な言い方をしてしまったかな。
「んんんん~っ! 面白くない! 実に面白くないっ!」
バンバンとテーブルパンをするレディアンさん。
「おい行儀が悪いぞ元王が」
「五月蠅いのだ。つまりは私の愛を独り占めしたいと、そう申すのだな!?」
「え? いえ、別にそうは申し上げておりません。恋愛において、結婚において、生涯共にする旦那様はたった一人でいいとお伝えしているだけで、何もレディアン様に僕のそのたった一人の旦那様になって欲しいとは、一言も! 断じて一言も申し上げておりません」
しっかり、はっきりと伝えなければ。
「だ、旦那様・・・」
「はい。それに、レディアン様も、僕には敷居が高過ぎます。僕は一般人です、ゲーム実況でも、王族に媚びを売るなやらのアンチコメントが毎日鬼のように来ますし。でも言われなくても、僕自身がそれを痛感していることで、馴れ合いは出来かねます」
「だ、旦那、様・・・」
まだおっしゃっている。何をそんなに反芻しているのだろう。
「・・・アーニャ、俺はアーニャのこと、大事な友達と思っているよ?」
「レン様・・・」
「アーニャは? アーニャは違うの?」
「・・・友人なんて恐れ多い。これは、その、ビジネスですから」
嘘。
本当は凄く嬉しい。
「・・・アーニャ・・・」
でもどう誰が見ても、これは奇跡だ。
レン様にお声をかけて頂いたのは本当に奇跡だ。
「・・・・・・」
少し沈黙が流れた。さっきまで笑い声があったのに。やってしまった。
空気を悪くしてしまった。
「す、すいません。楽しいお食事の時間なのに。とても美味しかったです。お誘い頂き、大変ありがとうございました」
席を立った。
「え、アーニャ」
「空気を悪くしてしまってすいませんレン様、ディラン陛下。そしてレディアン様。ありがとうございました、お先に失礼致します」
深くお辞儀をして、この場を去った。
こんなに温かい食事なのに。
どうして逃げてしまうんだろう。
でも逃げてしまう。
こんな自分が大嫌いだ。
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