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荒れた俺が叫ぶ声
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「今日は宗次郎がやれよ。」
拓人がスマホをこちらに向けながら、ニヤニヤと下卑た顔で俺に司令を放つ。
何でてめーに言われなきゃなんねぇんだよ。
一瞬頭に登った血を素早く抑え込み、俺も笑顔で答える。
「ま。良いけど。何すんの?」
拓人と友達が相変わらずのヘラ付いた顔で何か言葉を交わし合う。
「あのゲーセンでUFOキャッチャーやって、ガンガン揺らして景品取るっての。」
こいつバカじゃねぇの?
俺は軽く笑う。
「いや、ブザー鳴るし無理だろ。」
拓人が俺の肩に腕を絡ませる。
「わかってるって。だからブザー鳴らすことが目的なんだよ。鳴らして逃げる。もちろん景品はゲットしてな。それをアップすんのよ!」
どうしようもなくくだらない内容に、思わずため息が出そうになる。
俺はそれを隠して、冷静に言い放つ。
「ってか制服じゃん。やだよ。」
拓人はヘラ付いた笑顔を一瞬で能面の様に切り替え、あからさまに苛ついた口調で反論する。
「お前さ。ださ。チキンじゃん。親父は頭イカれたヤンキー野郎だってのに、息子はマジメちゃんですか。」
何かが俺の頭の奥で音を立てた。
何でここで親父が出てくる。
関係ないだろう。
どいつもこいつも。
どうして、俺をこうやって比較して査定するんだ。
「うるせぇな。やりゃ良いんだろ。」
拓人の能面フェイスは、俺の答えを聞くやいなや再び厭らしい笑顔を取り戻す。
「さっすが宗ちゃん。じゃあ俺と宗次郎でUFOキャッチャー揺らす役ね。タッちゃんが今日は撮影!店員来たら全力で逃げるから画面切れないように上手く撮ってちょうだいね。リョウちゃんは好きに騒いで盛り上げの音声入れて。」
素早く指示を飛ばして、それぞれの役割を決める拓人。
俺たちの中身のない動画は、こうやって簡単に決められていく。
思いつきだけの、バカ丸出し動画。
品性の欠片も何もない。
ただの自己満足だ。
こうやって、迷惑動画ってやつは生まれてるんだろう。
頭の悪いやつが何の目的もなく、ただ、自分たちの楽しいを押し付けるだけの行為。
でも。
俺だって、結局は同じだ。
こいつらと同じ。
頭が悪い、ただのつまらない人間なんだ。
本当に。
どうしようもない。
クソみたいな、人間だよ。
俺は。
親父に釘を刺されつつも、結局はこうやって流されてしまう。
凌につるむな、そう言われても切れない関係。
ここには何もないってわかっているのに。
気を抜くと俺を取り巻く巨大な孤独感は、こうやって俺を蝕んで決して取り逃さない。
まるで大蛇に絡め取られたかのように。
善悪よりも、独りじゃない満足感がまとわりつく。
だけど。
俺が欲しいものって、こんなものなのか?
ご機嫌に前を歩く拓人達の背中を見ながら、小さな疑問の炎はメラメラと音をたてて燃えたまま。
吹けば消えそうなのに。
その炎はしぶとく揺れ続けて俺を混乱させる。
そして。
俺はこの日を死ぬほど後悔することになる。
疑惑は確信となり。
己の身を焼き尽くす。
ここに。
こいつらとの間に。
俺が欲しいものなんてなかった。
どんなに望んでも。求めても。
こんなことじゃ、俺の乾きは潤せるはずなかったんだ。
じゃあ、俺は一体。
何を得られれば満足するっていうのだろう。
拓人がスマホをこちらに向けながら、ニヤニヤと下卑た顔で俺に司令を放つ。
何でてめーに言われなきゃなんねぇんだよ。
一瞬頭に登った血を素早く抑え込み、俺も笑顔で答える。
「ま。良いけど。何すんの?」
拓人と友達が相変わらずのヘラ付いた顔で何か言葉を交わし合う。
「あのゲーセンでUFOキャッチャーやって、ガンガン揺らして景品取るっての。」
こいつバカじゃねぇの?
俺は軽く笑う。
「いや、ブザー鳴るし無理だろ。」
拓人が俺の肩に腕を絡ませる。
「わかってるって。だからブザー鳴らすことが目的なんだよ。鳴らして逃げる。もちろん景品はゲットしてな。それをアップすんのよ!」
どうしようもなくくだらない内容に、思わずため息が出そうになる。
俺はそれを隠して、冷静に言い放つ。
「ってか制服じゃん。やだよ。」
拓人はヘラ付いた笑顔を一瞬で能面の様に切り替え、あからさまに苛ついた口調で反論する。
「お前さ。ださ。チキンじゃん。親父は頭イカれたヤンキー野郎だってのに、息子はマジメちゃんですか。」
何かが俺の頭の奥で音を立てた。
何でここで親父が出てくる。
関係ないだろう。
どいつもこいつも。
どうして、俺をこうやって比較して査定するんだ。
「うるせぇな。やりゃ良いんだろ。」
拓人の能面フェイスは、俺の答えを聞くやいなや再び厭らしい笑顔を取り戻す。
「さっすが宗ちゃん。じゃあ俺と宗次郎でUFOキャッチャー揺らす役ね。タッちゃんが今日は撮影!店員来たら全力で逃げるから画面切れないように上手く撮ってちょうだいね。リョウちゃんは好きに騒いで盛り上げの音声入れて。」
素早く指示を飛ばして、それぞれの役割を決める拓人。
俺たちの中身のない動画は、こうやって簡単に決められていく。
思いつきだけの、バカ丸出し動画。
品性の欠片も何もない。
ただの自己満足だ。
こうやって、迷惑動画ってやつは生まれてるんだろう。
頭の悪いやつが何の目的もなく、ただ、自分たちの楽しいを押し付けるだけの行為。
でも。
俺だって、結局は同じだ。
こいつらと同じ。
頭が悪い、ただのつまらない人間なんだ。
本当に。
どうしようもない。
クソみたいな、人間だよ。
俺は。
親父に釘を刺されつつも、結局はこうやって流されてしまう。
凌につるむな、そう言われても切れない関係。
ここには何もないってわかっているのに。
気を抜くと俺を取り巻く巨大な孤独感は、こうやって俺を蝕んで決して取り逃さない。
まるで大蛇に絡め取られたかのように。
善悪よりも、独りじゃない満足感がまとわりつく。
だけど。
俺が欲しいものって、こんなものなのか?
ご機嫌に前を歩く拓人達の背中を見ながら、小さな疑問の炎はメラメラと音をたてて燃えたまま。
吹けば消えそうなのに。
その炎はしぶとく揺れ続けて俺を混乱させる。
そして。
俺はこの日を死ぬほど後悔することになる。
疑惑は確信となり。
己の身を焼き尽くす。
ここに。
こいつらとの間に。
俺が欲しいものなんてなかった。
どんなに望んでも。求めても。
こんなことじゃ、俺の乾きは潤せるはずなかったんだ。
じゃあ、俺は一体。
何を得られれば満足するっていうのだろう。
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