死神×少女+2【続編】

桜咲かな

文字の大きさ
上 下
19 / 129
第4話『小悪魔変身』

(1)

しおりを挟む
亜矢と一緒の部屋に住んでいる、小悪魔・コラン。
亜矢が学校へ行っている間、コランは部屋で一人。
時々、ディアがお世話に来てはくれるが、魔王に仕える彼は忙しい為、毎日という訳にはいかない。
お昼の時間、コランは亜矢が朝に作ってくれたお弁当を食べながら、テレビをじーっと見ていた。
食べ終わると、テーブルの上いっぱいにトランプのカードをばらまき、何をする訳でもなく掻き回して眺めていた。
そうしていると、玄関のドアが開く音がした。
コランはパっと明るい笑顔になって、トランプをまとめると手に持ち、玄関へと駆け出した。

「アヤ、お帰り~~!!」

いつものように、玄関先で元気よく亜矢の腰に抱きつく。
可愛い小悪魔のお出迎えに、亜矢も笑顔で抱き返す。

「ただいま、コランくん」

コランは、そのままで亜矢の顔を見上げる。

「アヤ、オレとトランプしようぜ!!今日は負けないぜ!」

だが、亜矢は微笑みながらも、どこか疲れている様子だ。

「うん。でも、明日は小テストがあるから、また今度ね」
「え~~~~!」

コランは聞き分けの悪い子ではないのでワガママは言わないが、それでも残念そうな声を上げた。

「待っててね、今から夕飯作るから」
「………うん」

コランは小さく返事を返した。
学業と家事の両立が大変な事だっていうのは、コランにだって分かる。
だが、亜矢と一緒に暮らしているのに、一緒にいられる時間が少ない気がする。
誰よりも、亜矢の近くにいるはずなのに。
亜矢と同じ学校に通う事が出来ないコランの心は、いつしか寂しさを募らせた。






そして数日後。
今日は土曜日。学校は休みで、亜矢は登校しない日だという事をコランはすでに覚えている。

「アヤ、今日はオレとトランプしようぜ!」

だが、亜矢は何やら出かける準備をしているようだ。

「どこかへ行くのか?」
「あ、うん。リョウくんの部屋に。お料理を教えてもらいに行くのよ」
「……………」

コランは口を閉ざした。大きく開いた赤色の瞳が、揺れている。
いつもらしくないコランに、亜矢はコランと同じ視線の高さになるまで膝を曲げた。

「コランくんも一緒に行く?」

優しい口調で問いかけるが、見返す事なくコランは少し目を伏せた。

「………いい。行かない」

力のない、小さく素っ気ない口調。
フイっと顔を横に向けると、コランは背中を向けて亜矢の部屋へと戻って行く。
亜矢は、ポカンとしてコランの背中を目で追っていた。
いつものコランなら、喜んで亜矢と一緒について行くのに。

(どうしちゃったのかしら、コランくん……)
しおりを挟む

処理中です...