死神×少女+2【続編】

桜咲かな

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第41話『再会、そして誕生』

(2)

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その時、亜矢の後ろからコランが駆け寄ってきた。

「あっ!お母さんだ~~!!おかえり~!!」
「ふふ。コラン、ただいま。いい子にしてた?」

コランは大喜びでアヤメに抱きつこうとしたが、赤ん坊を抱いているのに気付いた。
アヤメは屈んで、赤子のアイリをコランの目線の高さで、よく見せてあげた。
コランは目の前に差し出された赤ん坊を、不思議そうに目をパチパチとさせて見る。

「ほら、赤ちゃん生まれたの。コランの妹、アイリよ」
「オレの妹……アイリ……」

ようやく状況を理解したコランは目を輝かせた。

「アイリ、オレはコランだ!お前の兄ちゃんだぞ、頼っていいからな!これからもよろしくな!!」

「コランったら……」
「コランくんってば……」

『お兄ちゃん』になったコランを見て、アヤメも亜矢も同時に感動して目を潤ませている。

亜矢に挨拶を終えたアヤメは外に出ると、今度は右隣のドアへと向かう。
マンションの亜矢の部屋の右隣の部屋に住むのは、グリアだ。
アヤメがインターホンを押すと、すぐにドアが開いた。
そしてグリアは、ここでもアヤメを亜矢と見間違えた。
赤ん坊を抱いている亜矢……に見えて、目を見開いて驚いた。

「ほら、赤ちゃん、生まれたの」

アヤメは満面の笑顔で、目を丸くしたグリアに赤ん坊を見せつける。

「は?ま、マジか!?は、早すぎんだろ……!!」
「う~ん、やっぱり人間じゃないから、かなぁ?」

グリアは動揺しつつも、その赤ん坊の顔をよく見る。
これが、亜矢とオレの子供なのか……と、行き過ぎた勘違いは止まらない。

「……亜矢にそっくりだな」
「そうね、私に似てるから、亜矢さんにもそっくりよね」
「……ハ?」

亜矢にしては何か違和感のある反応に、グリアは何かがおかしいと気付いた。
グリアは注意深く、目の前の亜矢……と思われる人物を見る。
すると、見付けたのだ。
赤ん坊を抱いている左手の薬指に光る指輪を。

(指輪……って事は、コイツは……亜矢じゃねえ!!?)

そう。指輪の存在は、亜矢とアヤメを判別する唯一の方法。
指輪をしているのは、アヤメなのだ。
そこでようやく、グリアは全てに気付いた。
懐妊したのも、赤ん坊を産んだのも……全てはアヤメだった、という真実に。
あの時、学校で弁当と共に『受胎告知』を言い渡したのも亜矢ではなくて……。

お、オレ様とした事が……

単純に考えれば、簡単に気付くはずの事なのに。
これまでの勘違いの記憶が一気に脳内を巡り、パンクしそうだ。
放心したグリアの心を知らないアヤメは、純粋な瞳で赤ん坊を見せてくる。

「女の子なのよ。アイリっていうの。……あれ?グリアくん、どうしたの?」

……グリアは何も返せない。




だが唯一の救いは、勘違いをした事が、リョウ以外にはバレてないという事だろう。
死神のプライドは、ギリギリ保たれた……のかもしれない。
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