龍神咲磨の回顧録

白亜

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第一章 龍神誕生編

第6話 お人好し

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咲磨はその話を静かに聞いていた。先程のような動揺はもう感じなかった。


咲磨はゆっくりと口を開く。


「すみません、それでも俺は土地神には、龍神にはなれません。」


《…………》


「俺にとってそっちの世界は関係のないことです。話に聞く限り、命を狙われるくらいだし………。そんなになってまで他人のために行動するほど俺はお人好しじゃありません。」

(それに大切な人だっているし。)


母さんや錬、颯など咲磨にとってかけがえのない人達だ。その人達と別れろって言われても絶対無理な話である。




天玲は少し悲しそうな顔をした。妙な罪悪感に駆られるが、自分の主張は間違ってないと思う。



《そう、ですよね。私こそすみません。妖の世界の事なのに人間に頼むのは間違っていますよね。》


天玲はそう言ってうなだれた。 



沈黙の時間が続く。


(何か落ち着かない。)


咲磨はソワソワと体を動かす。自分には珍しくきつい言い方したせいか、どうも相手の反応が怖い。なんか落ち込んでるオーラ半端ない。龍だし、土地神だからもっとすぐに立ち直るかと思ったのに。






我慢できなくなってついに話しかけてしまった。


「他にあてはいるんですか?」


天玲は下を向いてくぐもった声で言う。


《いたら500年もこの場所にとどまりません。》



「そうですよねー、って、えっ、ウソ500年?そんなにここにいるの!?」


(マジカ。龍だしそうなのか。でもそんな長い時間ずっとここにいたって、寂しくなかったのか?俺だったら途中で諦めてるぞ。)



《龍にとっての500年はそれほど長くありません。》


「そうなんだ。」



天玲の表情は下を向いてて見えない。しかし『それほど長くない』と言いながら、声は落ち込んでいた。単に、咲磨が土地神になるのを断ったからかもしれないが、それでもなぜかほっとけないと思った。


初めて会ったのにそんな気持ちになるなんて、不思議な感じだ。これが親和力が高いということなのだろうか。


「なあ、俺ときどきここに来てもいいか?」

タメ口になっていた。


《え……?》


「土地神になることはできないけどさ、一緒にさがすことはできると思うんだ。もう残り短いんだろ?それなら一人でさがすより良いと思うし。」

 
天玲は心底驚いた顔をしていた。



この状況を第三者が見るとこう思うだろう。めちゃくちゃお人好しじゃないか、と。困っている人がいたら見捨てることができないのが咲磨の性だ。


《私にとってはとても有難いことですが、どうしてそこまでしてくれるのですか?》


貴方にとっては関係ないことなのに、と目で訴えているのがわかった。


咲磨は顔をポリポリかいて困ったように言った。


「いや、俺にも罪悪感があるし。関係ないとか言っときながら、やっぱ気になるんだよ。一度首を突っ込んだんだ、最後まで責任取ってくれよ?」


《……ありがとうございます。》


天玲は潤んだ声で言った。


「じゃあさ、あんたのこともっと聞かせてくれよ。」


《私のことですか?》


「うん、なんでもいいんだ。一番嬉しかったこととかさ、聞きたいんだ。」



《そう、ですね。一番嬉しいと感じたことは、ーーーーーーーーーーーーーーー









体感ととしては何時間も経ったと思ったのに、時計を見るとまだ一時間しか経っていない。


二人はたくさん喋った。天玲にとってはこんなに打ち解けた人間は初めてなのだろう。はじめこそ緊張してたがすぐに咲磨と仲良くなった。



咲磨はずっと見上げていたせいで首が痛くなっていた。


それに気づいた天玲は、すぐに人化した。


その姿は美しく長い銀髪に蒼い瞳でところどころ鱗が見える中性的な美青年だ。


咲磨はその姿にどことなく親近感を覚えた。しかしさすが龍神。オーラが違う。


眩しすぎて目を細めると、天玲が少し悲しそうにする。


「お前、絶対その顔他のやつに見せるなよ。」


罪深すぎるから、と心の中で思っておく。


1時間しか経っていないのに、完全に親友のような間柄になっていた。





「じゃあそろそろ帰るよ。」


流石に家族が心配しそうだ。


《はい、またいつでも来てくださいね。》


天玲は穏やかに言った。


咲磨はまたあの白い蛇に案内してもらい、家に帰った。








自分の部屋で咲磨は今日のことを思い出していた。


(明日も行こう。)


次の土地神を見つけるためにたくさん話したい。
 
(なんか眠いや。)


色々ありすぎたせいでベッドに入った瞬間に咲磨は眠りに落ちた。

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