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第一章 龍神誕生編
第13話 約束事
しおりを挟む「おほんっ!それではこれから土地神及び神使における約束事について説明します。と言っても、ほとんど人間から妖なった者のために作られたものですが。」
わざとらしく咳払いをした八重を半目で見ながらも咲磨はお願いしますと言った。
八重の隣には八雲もいる。
一応あのあと、腹の音が限界に達し、朝食を食べた。昨日の晩ごはんを抜いてしまったので、それはもう大盛りの茶碗でご飯を3杯した。
そして少し時間が経過し、今に至る。
「兄様から簡単に説明を受けていると思いますが、もう一度確認いたします。咲磨、貴方はこの幻影の郷を治める長になりました。」
「質問なんだけどさ、土地神と龍神と双玉の蒼の違いってなんだ?」
「全部あなたのことよ。強いて言うなら、人間から見たら土地神、妖としては龍神、この幻影の郷からみたら双玉の蒼よ。」
八重は丁寧に教えてくれた。咲磨はそれを意外に思いながら納得する。
「疑問はとれたかしら。それじゃ本題にいくわ。仕事は兄様とか他の妖から適宜訊いて。私が説明するのはあくまで約束事だけだから。」
妙に言葉に棘があるように感じるなと思いながら咲磨は頷く。
「約束事その一、恋愛禁止。」
「………まじで……?」
「当たり前でしょう。神がある特定人物に肩入れしたら調和が取れないわ。」
咲磨は半ば絶望的にそれをきいた。生まれて16年、異性を好きになったことは、まあ何度があった。だが告白するたんびにいわれるのだ。
私より顔が可愛い男子に告白されても嬉しくない、と。
それを何度も経験して、咲磨は誓った。
俺の容姿ではなく、心に惹かれてくれる子をさがそう、と。
そう決意した日を境に、咲磨は誰も好きになっていない。そう、だからいま好きな人はいない、いないのだが……!
「永遠はきついよ……。」
「そう気にするな。100年もすれば慣れる。」
八雲はそう言って慰めた。
そこで咲磨はふと思い出す。
「あれ?じゃあ八重はそれをわかってて、天玲の事が好きだったの?」
八重がぴしっと動かなくなる。心なしか、体がワナワナ震えている。
ちょっとかわいそうだったので咲磨はすぐに撤回しようとした。
「ああ、いまのなsh………」
「ええ!そうですわ!!だって、恋愛できないのは天玲様であって、私はできるんですもの!私が誰を想っても問題ありませんわ!」
「あっそう……。」
ちゃんと答えてくれた。なるほどなんとなく、八重の性格がわかってきた。
「話を戻しますわよ!!約束事その二、人間から妖になる間、必ず、人間界で暮らすこと。」
「えっどういうこと?」
そこからは八雲が引き継いでくれた。
「咲磨、妖になれば、人間の家族と暮らすことはできない。それはわかるな?」
「……はい。」
「そうなれば、元の家族には、行方不明に見せるか、すべてを話して黙っててもらうかそのどちらかなのだ。どちらにしても、もう二度と家族にも、友人にもあうことはできない。」
「……はい。」
すべてわかっている。わかった上で自分はこの選択を受け入れた。だから、後悔は、ない。
「いわばその猶予期間。修行などいつでもできる。もちろん定期的にこちらに来て、仕事も出てくるだろうが。だが、普段の生活は人間のそれで良い。せめて、完全な龍神になるまでは、そなたは家族のもとで暮らし、友人とともに過ごし学校に行けば良い。」
「……いいんですか?」
「ああ、そして、そなたが望むのなら我らの存在を話しても良い。だが家族と、心の許せるものだけだ、良いな?」
「ありがとうございます!」
「なに、それならこの約束事を作ったものに言え。誰が作ったのかは私も知らんが。……もしかしたら、そなたと同じく人間だったものかもしれんな。」
そういって八雲は穏やかに微笑んだ。
「お二方、私の存在忘れていませんか。」
八重はそう言ってぶすっと顔をしかめていた。
「「あ」」
それから咲磨は色々な説明を受けた。だが一度に全部を詰め込むのは無理なので、また日を改めるということになった。
そんなこんなで、咲磨は人間界に帰ることにした。八雲との会話を思い出すと無性に家族に会いたくなった。
帰り際、八雲から小さな鈴を持たされる。
「そなた一人でも郷には入れるが、我々から緊急として呼ぶこともある。これはそれを知らせるものだ。肌見放さず持っておれ。」
「はい。」
「それと敬語もいらん。私はそなたの兄になるのだからな。」
「は、……うん」
「それとその瞳の色だが……、」
「あ、途中でカラコン買っていくよ。」
「そうか、手段があるなら大丈夫だな。くれぐれも気をつけよ。」
「うん、ありがとう!」
「しばしの別れだ。また会おう。」
そう言って咲磨と八雲は別れた。
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