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11話

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「落ちないようにしっかり掴まっていろよ」

白い猫はそう言うとものすごい勢いで南に向かい始めた。

人が歩けば1ヶ月はかかるであろう距離をわずか10分程度の時間で『天空山』の山頂までたどり着いた。

山頂は穏やかな心地よい風が吹き、草が波風を立てていた。

「もう少し歩けば王のところに着く。失礼のないように」

「わかった」

眼前には20メートルを超える白い猫というより虎の姿をした魔物が見えてきた。

「親父!こいつは俺の目を見えるようにしてくれたニンゲンだ!何か礼をしたいと思う」

「目が見えるだと!それは本当か!!」

「本当だ!」

「そうか・・・ニンゲンよ。息子の目を見えるようにしてくれて、まずは礼を言う。生後間もない息子の両目は白兎と名乗る者に奪われた。それからニンゲンは信用してはいない。だがお主はどこか違う感じを受ける。それに汚れた血の臭いがしない。お主はどうやって目を見えるようにした?」

俺は王に一通り説明をした。

「魔道具とやらではそのような事ができるのか。白兎は我らの目の事を『エア・イリス』や『風の虹彩』と呼んでいたが、お主はこれについて何かわかるか?」

「魔道具に関しては俺は詳しくはないからちょっとわからない。その目が魔道具に関係あるのであれば道具屋の人に聞けば何かわかるかもしれない」

「そうか、わかった。お主には礼として7日ネズミをくれてやろう。ニンゲンにとっては貴重な素材になるだろう」

Sクラスの魔物の素材がもらえる・・・それにこの辺りに生えている草も観察眼で見ると・・・

「ありがとうございます。後ここら辺に生えてる草ももらっていってもいいですか?『魔風草』という聞いた事のない草だから貴重な素材だと思うので!」

「草くらいであれば好きなだけ取るがよい!採取している間に7日ネズミは準備しておこう。息子よ、後は任せたぞ」

王が席を外すと俺は『魔風草』を採取し始めた。

しばらく採取していると息子と呼ばれた白い猫がやってきた。

「ネズミの準備は出来たぞ。お主もそろそろいいか?」

「あぁ、大丈夫だ」

俺はアイテム収納袋をしまい、指輪を渡す準備を始めた。

「そろそろ指輪を渡さないとな。魔道具の指輪はそのまま身につけてるのだと大変だと思って首に巻けるようにしておいたぞ」

俺は白い猫の首に《観察眼》の指輪を取り付けた。

「すまないな。何か見るというのは久しぶりだからか、魔道具が自分に馴染んでいないのかわからないが、ちょっと見にくい感じはあるな。だが久しぶりの景色は感動した。何か困った事があったらまた訪ねてくれ。力になるぞ」

「わかった。困った時はまた来るとしよう。そういえば名前をまだ名乗っていなかったな。俺の名前はトリスだ」

「我が名前はアルファだ。それではお主を街の近くまで送ってやろう」

「よろしく頼む」

俺はアルファの背中に乗り、毛皮をしっかり掴んだ。

「落ちないようにな」

アルファの移動はものすごい勢いで、15分程度で王都の近くにたどり着いた。
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