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1:異国に来た薬師の少年
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アヒムは生まれ故郷をはなれて、美しい河がめぐるラニス国にやってきた。
外套の頭巾を脱いで荘厳な城を見上げる。
ここに足を踏み入れてはいけない。そう戒め再び頭巾をかぶり立ち去った。
外套からのぞくアヒムの容貌は、十七、八歳といった、大人になりきれずまだ微かに幼さを残す不完全さを伴ったものであった。
少し長い髪は琥珀を太陽で溶かしたようで、鼻筋はすらりと通っており少し薄めの唇は愛らしさがある。碧色の瞳の奥は神秘的に星々を散らしたように輝いていた。
彼の顔を形作るパーツの一つ一つはまるで巨匠が端正込めてしたてた彫刻のように整っている。
しかし、彼のもっとも注目されるべき所はその肌である。日に焼けたことなどないかのように白く、女よりもきめ細かい。誰もがその肌に触れたいと羨望するだろう。
この国でどうやって生計を立てようかと宿屋で腰を休めた。
「薬師でもやろうかな」
アヒムの前職は錬金術師だった。パトロンのもと金の錬成や不老長寿の薬の開発を行っていた。
だからこそ薬剤の分野には詳しく、薬師となるに申し分はない。
そうして新たな生活を始めたアヒムは自由と理想の生活を謳歌していた。
「アヒムちゃん、これ。あまりものだけどもらって」
近所の気前のよいパン屋のおばさんがアヒムにバスケットいっぱいのパンをさしだした。
「ありがとうございます」
「いいのよ。若いのに懸命に働いて偉いわ。うちの息子ったら騎士になるーっていったり、錬金術師になるーっていったりもうめちゃくちゃよ」
アヒムは錬金術ということばにびくりと反応した。それはいささか敏感になりすぎていると自ら思う程であった。
「ジークには色んな夢があっていいじゃないですか。羨ましい」
アヒムは幼い頃からその才能をかわれ、研究室をあたえられ日々実験や論文を書く日々を過ごしていた。
それは自らが望んだ生活ではなく、両親や国王に望まれたものであり、窮屈で湖沼に沈んだように息苦しかった。
だからこそ、金をうみだせない事に痺れを切らした国王がアヒムを追い出してくれたお陰で異郷の地で自由に過ごすことができている。
「そうだ、もうすぐお祭りがあるのよ。アヒムちゃんは初めてでしょ。ぜひ楽しんでちょうだい」
「お祭りですか? 故郷でも参加したことがないので楽しみです。マナーがあったりするんですか?」
故郷にいたころは家と城の研究室の行き来しかなく、お祭りのような楽しげな催だけでなく人との交流さえほとんどなかった。
「そんなのないわよ。あんたの故郷はどんな所なんだか」
パン屋のおばさんは少しあきれたように言った。
この国の人々はあたたかく、よそ者のアヒムにも気さくに接した。彼の過去を聞き出すこともなければ掘り下げることもなかった。
だから彼らはアヒムが金の卵を産むかもしれない鵞鳥であることを知らないのだ。
「うちの子に案内させるわ。アヒムちゃん一人だと何かと心配だからね」
パン屋のおばさんは豪快に笑って言いたいことだけ言って去っていった。
どこか呑気なアヒムはまあいいかと本日分の注文を確認した。
外套の頭巾を脱いで荘厳な城を見上げる。
ここに足を踏み入れてはいけない。そう戒め再び頭巾をかぶり立ち去った。
外套からのぞくアヒムの容貌は、十七、八歳といった、大人になりきれずまだ微かに幼さを残す不完全さを伴ったものであった。
少し長い髪は琥珀を太陽で溶かしたようで、鼻筋はすらりと通っており少し薄めの唇は愛らしさがある。碧色の瞳の奥は神秘的に星々を散らしたように輝いていた。
彼の顔を形作るパーツの一つ一つはまるで巨匠が端正込めてしたてた彫刻のように整っている。
しかし、彼のもっとも注目されるべき所はその肌である。日に焼けたことなどないかのように白く、女よりもきめ細かい。誰もがその肌に触れたいと羨望するだろう。
この国でどうやって生計を立てようかと宿屋で腰を休めた。
「薬師でもやろうかな」
アヒムの前職は錬金術師だった。パトロンのもと金の錬成や不老長寿の薬の開発を行っていた。
だからこそ薬剤の分野には詳しく、薬師となるに申し分はない。
そうして新たな生活を始めたアヒムは自由と理想の生活を謳歌していた。
「アヒムちゃん、これ。あまりものだけどもらって」
近所の気前のよいパン屋のおばさんがアヒムにバスケットいっぱいのパンをさしだした。
「ありがとうございます」
「いいのよ。若いのに懸命に働いて偉いわ。うちの息子ったら騎士になるーっていったり、錬金術師になるーっていったりもうめちゃくちゃよ」
アヒムは錬金術ということばにびくりと反応した。それはいささか敏感になりすぎていると自ら思う程であった。
「ジークには色んな夢があっていいじゃないですか。羨ましい」
アヒムは幼い頃からその才能をかわれ、研究室をあたえられ日々実験や論文を書く日々を過ごしていた。
それは自らが望んだ生活ではなく、両親や国王に望まれたものであり、窮屈で湖沼に沈んだように息苦しかった。
だからこそ、金をうみだせない事に痺れを切らした国王がアヒムを追い出してくれたお陰で異郷の地で自由に過ごすことができている。
「そうだ、もうすぐお祭りがあるのよ。アヒムちゃんは初めてでしょ。ぜひ楽しんでちょうだい」
「お祭りですか? 故郷でも参加したことがないので楽しみです。マナーがあったりするんですか?」
故郷にいたころは家と城の研究室の行き来しかなく、お祭りのような楽しげな催だけでなく人との交流さえほとんどなかった。
「そんなのないわよ。あんたの故郷はどんな所なんだか」
パン屋のおばさんは少しあきれたように言った。
この国の人々はあたたかく、よそ者のアヒムにも気さくに接した。彼の過去を聞き出すこともなければ掘り下げることもなかった。
だから彼らはアヒムが金の卵を産むかもしれない鵞鳥であることを知らないのだ。
「うちの子に案内させるわ。アヒムちゃん一人だと何かと心配だからね」
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