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第499:喪った活力
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「なんかさっきの兄さん、変じゃなかったか?
ボーッとしてたし、横にザベっさん居るのにも気付いてなかった様子だぜ」
「そうね…気のせいかしら?
見張りの人以外にも、村中の人たち全員沈んでるっていうか…」
入り口を通り、改めてドノヴァンの土を踏みしめた。
周りでは畑を耕したり、魔物の精肉を捌いていたりと、パッと見は以前の光景と変わりない。
「………なきゃ………しなきゃ」
「………次は………嫌だ……」
しかしフレイの言う通り、ほとんどのエルフ達の目に生気を感じられない。
まるで出勤途中の、激務サラリーマンみたいな死んだ目だ。
それに、セリーヌと無邪気に走り回っていたガキんちょどもの姿も見えないな。
「…まずは宿へ参りましょう」
ザベっさんがやや早足で先導を始めた。
その表情は固い。
「ザベ姉、どうしちゃったの?
ていうかさ、おっきなイベント控えてるわりには、ここの人たちなんか暗くない?」
ひょこっと、モネが車窓から顔を出してきた。
彼女も不穏な様子を察知したらしい。
「だよなぁ。月に一度の大試合なのに…」
「前に来た時はもっと活気があったわよね?」
たがいに顔を見合わせても疑問は解けないので、ひとまずザベっさんにしばらくついて行く。
そして…彼女は途中でピタリと立ち止まった。
「………あ………」
「どうしたザベ……なあっ!?」
「は!? なによあれ!?」
俺たちの視線の先に、今日泊まる予定の宿があった。
……その建物が、無惨に半壊していた。
「ミア!!!」
「あっ!? ちょっとエリザベス!」
ザベっさんが一目散に宿へ入っていく。
なんでこんなことになってやがる!?
まさか魔物にぶっ壊されたのか!?
「フレイ! 俺も行って状況を確認する!
お前らはバンを停めてから来てくれ!」
「わ、分かったわ!」
「待ってマミヤくん! ボクも行く!」
☆☆☆
「ひ、ひどい…。メチャクチャにされてる」
「う、受付のテーブルまでおしゃかだ。
あんなにお洒落な内装だったのに…」
車から降りてきたモネと一緒に宿へ入った。
最初、俺は魔物の襲撃を予想していたが、中の壊された具合を見て、すぐにその考えを否定した。
「壁になんか書かれてる…ラクガキか」
「えっと、『ドノヴァンの恥』だって。
もしかしなくてもこれって…?」
「ああ。この犯行は人の手によるもんだ。
なんとなく経緯の察しもつくが…。
モネ、こっちが食堂だ。話し声も聞こえる」
「あっ、待ってよ」
何度もご馳走になった食事処の扉を押し開ける。
そこには…
「ううっ……うっ……ああ……エリー!!」
「大丈夫ですよ、ミア。私はここにいます」
表と同じように、悪意をもって破壊された形跡が目立つお店の中で…二人のハイエルフが抱き合っていた。
ザベっさんが抱いている女の子は泣きべそをかいており、落ち着かせようと優しく頭を撫でている。
「ザベ姉、もしかしてその子が…」
「ラミレス様…はい。ミア、お客様ですよ」
「すびっ…!? あっ…ゴメンなさい!」
ババっとすごい勢いで姿勢を正した。
ザベっさんと同じ白い髪に三角巾を合わせた、ドノヴァン宿の看板娘…
「い、いらっしゃいま…あっ、レイト君も!」
「おっす、ミア。どうやらエラいことになってるみたいだな」
「へー? この子も愛称呼びなんだー。
ハイエルフには馴れ馴れしいんだねー?」
「いたたたたたやめろ、腕をつねるな」
モネがプクっと、頬を膨らませている。
そういうお前だってザベ姉呼びだろうに。
「あはは、私がそう呼ばせてるだけだから。
さっきはお見苦しいところをゴメンなさい。
はじめまして。ミュアヘッド・ナイセルよ。
あなたも気軽に『ミア』って呼んでね!」
すると、さっきまで号泣してたのが嘘のように、彼女の表情が明るくなった。
さすが民宿を回してるだけはある…プロ並みの接客だ。
「おっと、ご丁寧にどうもどうも。
ボクはモネ・ラミレス、占術士だよ。
何か占いたいことがあったら是非依頼してね」
「お前もお前ですぐ営業しようとすな!」
モネは自前の営業名刺をミアに手渡す。
どんなタイミングで渡してんだ!
「え!? 占い屋さんがうちに来たの初めて!
すごいわね、私と年齢は変わらなさそうなのに…ねえ、どんなこと占ってくれるの!?」
「健康運、仕事運、恋愛運、金運…消えたペットの行方からいま買っておくべき銘柄まで、ほぼなんでも占えるよ~」
「わあ~! たまに行商さんから情報誌買って、運勢コーナーはよく見てるんだけど…。
うーん、迷うわね…どれにしようかしら!」
「あはは。キミなかなか気持ち良い反応だね!
今回は初回だし特別割引で占ってあげるよ」
「わっ、ホント!? ありがとう!」
「「…………」」
あれ…なんかこの二人、意気投合してる?
さっきまでの悲壮感が消え失せた気が…。
俺とザベっさんは顔を見合わせ、ゴホンと咳払いをした。
「おほん。あーその、お二人さん?
さっそく仲良くなってくれて嬉しいんだけど、そろそろ状況を説明してくれないか?」
「あっ、やだ、私ったらはしゃいじゃって…。
ごめんね、当然これは気になるわよね」
「フフ、構いませんよミア。
笑ってくれたので私もひと安心しました」
恥ずかしそうに服の裾を整えるミア。
…そういや、あの男は居ないのか?
「もう気づいてると思うけど…私の宿を勝手に模様替えしたのは〝身内〟の人間。
明日、あなたが闘う〝暫定派〟の仕業よ!」
ボーッとしてたし、横にザベっさん居るのにも気付いてなかった様子だぜ」
「そうね…気のせいかしら?
見張りの人以外にも、村中の人たち全員沈んでるっていうか…」
入り口を通り、改めてドノヴァンの土を踏みしめた。
周りでは畑を耕したり、魔物の精肉を捌いていたりと、パッと見は以前の光景と変わりない。
「………なきゃ………しなきゃ」
「………次は………嫌だ……」
しかしフレイの言う通り、ほとんどのエルフ達の目に生気を感じられない。
まるで出勤途中の、激務サラリーマンみたいな死んだ目だ。
それに、セリーヌと無邪気に走り回っていたガキんちょどもの姿も見えないな。
「…まずは宿へ参りましょう」
ザベっさんがやや早足で先導を始めた。
その表情は固い。
「ザベ姉、どうしちゃったの?
ていうかさ、おっきなイベント控えてるわりには、ここの人たちなんか暗くない?」
ひょこっと、モネが車窓から顔を出してきた。
彼女も不穏な様子を察知したらしい。
「だよなぁ。月に一度の大試合なのに…」
「前に来た時はもっと活気があったわよね?」
たがいに顔を見合わせても疑問は解けないので、ひとまずザベっさんにしばらくついて行く。
そして…彼女は途中でピタリと立ち止まった。
「………あ………」
「どうしたザベ……なあっ!?」
「は!? なによあれ!?」
俺たちの視線の先に、今日泊まる予定の宿があった。
……その建物が、無惨に半壊していた。
「ミア!!!」
「あっ!? ちょっとエリザベス!」
ザベっさんが一目散に宿へ入っていく。
なんでこんなことになってやがる!?
まさか魔物にぶっ壊されたのか!?
「フレイ! 俺も行って状況を確認する!
お前らはバンを停めてから来てくれ!」
「わ、分かったわ!」
「待ってマミヤくん! ボクも行く!」
☆☆☆
「ひ、ひどい…。メチャクチャにされてる」
「う、受付のテーブルまでおしゃかだ。
あんなにお洒落な内装だったのに…」
車から降りてきたモネと一緒に宿へ入った。
最初、俺は魔物の襲撃を予想していたが、中の壊された具合を見て、すぐにその考えを否定した。
「壁になんか書かれてる…ラクガキか」
「えっと、『ドノヴァンの恥』だって。
もしかしなくてもこれって…?」
「ああ。この犯行は人の手によるもんだ。
なんとなく経緯の察しもつくが…。
モネ、こっちが食堂だ。話し声も聞こえる」
「あっ、待ってよ」
何度もご馳走になった食事処の扉を押し開ける。
そこには…
「ううっ……うっ……ああ……エリー!!」
「大丈夫ですよ、ミア。私はここにいます」
表と同じように、悪意をもって破壊された形跡が目立つお店の中で…二人のハイエルフが抱き合っていた。
ザベっさんが抱いている女の子は泣きべそをかいており、落ち着かせようと優しく頭を撫でている。
「ザベ姉、もしかしてその子が…」
「ラミレス様…はい。ミア、お客様ですよ」
「すびっ…!? あっ…ゴメンなさい!」
ババっとすごい勢いで姿勢を正した。
ザベっさんと同じ白い髪に三角巾を合わせた、ドノヴァン宿の看板娘…
「い、いらっしゃいま…あっ、レイト君も!」
「おっす、ミア。どうやらエラいことになってるみたいだな」
「へー? この子も愛称呼びなんだー。
ハイエルフには馴れ馴れしいんだねー?」
「いたたたたたやめろ、腕をつねるな」
モネがプクっと、頬を膨らませている。
そういうお前だってザベ姉呼びだろうに。
「あはは、私がそう呼ばせてるだけだから。
さっきはお見苦しいところをゴメンなさい。
はじめまして。ミュアヘッド・ナイセルよ。
あなたも気軽に『ミア』って呼んでね!」
すると、さっきまで号泣してたのが嘘のように、彼女の表情が明るくなった。
さすが民宿を回してるだけはある…プロ並みの接客だ。
「おっと、ご丁寧にどうもどうも。
ボクはモネ・ラミレス、占術士だよ。
何か占いたいことがあったら是非依頼してね」
「お前もお前ですぐ営業しようとすな!」
モネは自前の営業名刺をミアに手渡す。
どんなタイミングで渡してんだ!
「え!? 占い屋さんがうちに来たの初めて!
すごいわね、私と年齢は変わらなさそうなのに…ねえ、どんなこと占ってくれるの!?」
「健康運、仕事運、恋愛運、金運…消えたペットの行方からいま買っておくべき銘柄まで、ほぼなんでも占えるよ~」
「わあ~! たまに行商さんから情報誌買って、運勢コーナーはよく見てるんだけど…。
うーん、迷うわね…どれにしようかしら!」
「あはは。キミなかなか気持ち良い反応だね!
今回は初回だし特別割引で占ってあげるよ」
「わっ、ホント!? ありがとう!」
「「…………」」
あれ…なんかこの二人、意気投合してる?
さっきまでの悲壮感が消え失せた気が…。
俺とザベっさんは顔を見合わせ、ゴホンと咳払いをした。
「おほん。あーその、お二人さん?
さっそく仲良くなってくれて嬉しいんだけど、そろそろ状況を説明してくれないか?」
「あっ、やだ、私ったらはしゃいじゃって…。
ごめんね、当然これは気になるわよね」
「フフ、構いませんよミア。
笑ってくれたので私もひと安心しました」
恥ずかしそうに服の裾を整えるミア。
…そういや、あの男は居ないのか?
「もう気づいてると思うけど…私の宿を勝手に模様替えしたのは〝身内〟の人間。
明日、あなたが闘う〝暫定派〟の仕業よ!」
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