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第五の不思議
どこかに潜む
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それから三日は、なにごともなく過ぎた。
鬼塚くんの提案をうけた私たちは、いまだ答えをだせずにいた。どっちでもいいと考える夏木くん以外やめるつもりはないにせよ、自分たちが無理を通そうとしていることがわかっていたから。
ただ、こうして迷っているあいだにも『犯人は後悔していて、もう二度とあんなことしないのでは』と淡い期待もうまれてきた。だとしたら続行一択。鬼塚くんを説得すればいいだけ。
けれども、願いむなしく四日めの朝。下駄箱をみて息をのんだ。真っ黒な封筒が校内用サンダルの上に乗せられていた。
うそ、なにこれ。危険物とか入ってないよね。大丈夫だよね。怖すぎて触りたくないんだけど。
「中垣もやられたか」
隣からの声でびくっと体が震える。いつのまにか、深刻な面もちの志倉くんがいた。
「おはよう。もしかして志倉くんも?」
「だけじゃない。全員だ」
呼応するように、下駄箱の陰から福谷さんと義井くんが登場。夏木くんはとくに気にせず、教室に行ってしまったらしい。どこまでも鋼の心臓。尊敬するよ、ほんと。
「中身を確認したい。開けてみてもいいか」
封筒を志倉くんにわたす。危険物などはなく、白い便箋が一枚。ただし赤いペンで書かれた〈嘘つき!〉の文字がびっしり。
「負のエネルギーすごそうです。恐ろしいです……」
「お焚きあげしとく? 僕、方法わかるよ」
「さすがオカルトマニアですね。ぜひお願いします」
怯える福谷さんを義井くんがいたわっていたら、
「だめだ、これは証拠の品だぞ。全員分、ひとまず俺が預かっておく」
志倉くんの声に予鈴が重なる。四人とも目配せ、急ぎそれぞれの教室へ。
「おはよ。ギリじゃん。もしかして変な手紙のせい?」
顔をあわせるなり響子から予想外の言葉がきた。
「なんで知ってるの」
「これ。情報まわってきた」
と、スマホを揺らす。
「すごいね。スピードに追いつけないよ」
「うちのばーちゃんみたいなこと言ってる」
「だって、さっきの今だよ」
「そういう時代ってことで」
笑みを浮かべつつ響子が、手早くスマホを操作。
「今のとこ目撃者とかいないみたい。つか、誰だか知らないけど、やり方が気にくわないよね。言いたいことあるなら、まわりくどいことせず直接くりゃいいのに」
それもそれで恐怖だけど、正体不明のままよりはマシなのかと思えてきた。この学園のどこかに、犯人が確実に存在する。この瞬間にも憎しみの炎を宿しながら、私たちを狙って虎視眈々と。
鬼塚くんの提案をうけた私たちは、いまだ答えをだせずにいた。どっちでもいいと考える夏木くん以外やめるつもりはないにせよ、自分たちが無理を通そうとしていることがわかっていたから。
ただ、こうして迷っているあいだにも『犯人は後悔していて、もう二度とあんなことしないのでは』と淡い期待もうまれてきた。だとしたら続行一択。鬼塚くんを説得すればいいだけ。
けれども、願いむなしく四日めの朝。下駄箱をみて息をのんだ。真っ黒な封筒が校内用サンダルの上に乗せられていた。
うそ、なにこれ。危険物とか入ってないよね。大丈夫だよね。怖すぎて触りたくないんだけど。
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封筒を志倉くんにわたす。危険物などはなく、白い便箋が一枚。ただし赤いペンで書かれた〈嘘つき!〉の文字がびっしり。
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「さすがオカルトマニアですね。ぜひお願いします」
怯える福谷さんを義井くんがいたわっていたら、
「だめだ、これは証拠の品だぞ。全員分、ひとまず俺が預かっておく」
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顔をあわせるなり響子から予想外の言葉がきた。
「なんで知ってるの」
「これ。情報まわってきた」
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「すごいね。スピードに追いつけないよ」
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笑みを浮かべつつ響子が、手早くスマホを操作。
「今のとこ目撃者とかいないみたい。つか、誰だか知らないけど、やり方が気にくわないよね。言いたいことあるなら、まわりくどいことせず直接くりゃいいのに」
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