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第3章:四家と妖滅
3・A班メンバー
しおりを挟む「千隼、これから小花にいろいろと教えようと思ってるんだけど、どうしよう? 千隼から説明してくれる?」
そう言った亘先生に、ちい兄は少し考え込んで、首を横に振った。
「それは、やっぱ教師の仕事なんじゃねぇの?」
「そう? じゃあ、やっぱり俺から説明しようか。その前に、みんなの自己紹介とかしとく?」
私への説明というのは、亘先生からされるようだった。
その前の自己紹介っていうのは、ちい兄たち三年生と二年生の先輩方の事みたいなんだけど、これも知らないのは私だけみたいだった。
「小花、三年のA班は、俺とこいつ……北御門俊秀の二人だ。北御門は、四家だな。で、二年は全員分家で、東野亜紀と、浦西七海、南条明奈と、北見伸彦の四人だ」
「小花、俺が北御門俊秀だ! 千隼とはとても仲良くしているぞ! だから小花も俺と仲良くしような!」
と、一人だけ自ら名乗った男の先輩は、さわやかな好青年タイプの人だった。
北御門さん……四家の人たちは互いをライバル視しているって言っていたけど、この人は本当にちい兄と仲良くしてくれているみたいだ。
ちい兄と話している時の表情を見ればわかる。
「うちのちい兄がお世話になっております。こちらこそ、よろしくお願いします」
立ち上がってぺこりとお辞儀をして挨拶をすると、
「あぁ、よろしく! 小花は千隼が言っていた通り、小さくて可愛いな!」
なんて、言われた。この人、いきなり何を言い出すのか。
驚いたのと照れたので、熱くなった顔を冷ますように頬に手を当てると、私は自分がこの場に居る全員から見つめられている事に気が付いた。
みんな優しい表情をしているけど、なんか恥ずかしい。
「小花ちゃん、二年の分家は、私たちの兄姉になります」
真紀ちゃんの説明に、私は頷いた。
二年生の先輩たちの苗字、全員聞いた事がある苗字だと思ったんだよね。
東野、浦西、南条、北見……。
二年生の先輩たちは、真紀ちゃんと渚ちゃんのお姉さんと、厚くんと武くんのお兄さんだ。
「あ、あの、みんなにはいつも良くしてもらっています。私、すっごくお世話になっています」
そう言って二年生の先輩たちに頭を下げると、またみんなから優しい表情で見つめられた。
もしかしてこの視線、みんなで小動物を眺めてる的な感じじゃない?
北御門俊秀って人も、小さくて可愛いって言っていたし、私、やっぱり小動物的な扱いをされてる?
「はーい、自己紹介終わり!」
パンパン、と亘先生が手を叩いた。それから先生は、ちい兄や先輩たちに空いている席に適当に座るように指示すると、正面に座っている私を見つめ、言った。
「小花、この自己紹介で気づいた事、言ってみて?」
「え? それは……AクラスのA班は、全員、四家の人と、分家の人って事?」
「うん、そうだね」
「でも、分家って他の班の子もそうなんだよね? 東西南北のどれかが苗字についている人は、四家の分家じゃなかったっけ?」
「うん、そうだね。それで合ってるよ。でも、分家も能力的に分かれていてね、東野、浦西、南条、北見は、四家のサポートができるような戦闘値が高い分家なんだ」
「戦闘値? 何それ?」
自己紹介までは理解できたけど、またわからない話になってきた。
まぁ、それをこれから亘先生が説明をしてくれるんだろうけど、私は今から聞かされる事を理解できるだろうかと、少し不安になってしまった。
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