西園寺家の末娘

明衣令央

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第3章:四家と妖滅

5・守るべき者

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「どうして? 真中って、え? どういう事? 周央じゃないの?」

 私がそう言うと、亘先生は深く頷いた。

「そう、守るべきは、周央ではなく、中。もっと正確に言うと、君が育った家の事だよ」

「どうして? うちは、お金持ちじゃないよ? ただの定食屋なのに、どうして?」

「それは関係ないんだよ。周央は、真中の影。真中を守るための一族なんだ。昔から、ずっと大切に守ってる。小花の事も、生まれた時から知っていたよ。こっそり成長を見守ってた」

「そんな……」

 私は混乱した。守ってもらっていたとか、全く知らなかったし気づかなかった。

「今、俺たちがお守りしなければならないのは、現ご当主の昌幸様、次期ご当主の圭様、そして、圭様のご子息である、昌央様。千隼や小花も真中の血を引く子ではあるけど、今は西園寺側としてカウントして話を続けるね」

「あ、あの……」

 私は手を上げ、亘先生を見つめた。
 亘先生は優しい目で私を見つめ、何? と、首を傾げる。

「あ、あの、守らなきゃいけないのが、おじいちゃんたちって事は、おじいちゃんたちに、何か危険な事があるっていう事?」

 怖くて、がたがたと体が震えた。声も震えた。
 怖くて怖くて、もう何も聞きたくなかった。
 ここから逃げ出してしまいたかった。
 でも、聞きたくないけれど、聞かなきゃいけなかった。

「おじいちゃんたちが、何かに襲われちゃうっていう事なの?」

「小花っ! 落ち着けっ!」

 後ろの方に居たちい兄が駆け寄ってきて、震える体をぎゅっと抱きしめてくれた。
 私は体に回されたちい兄の腕をぎゅっと握り、亘先生を見上げる。

「そうだね……簡単に言うと、真中様は妖魔に狙われている。妖魔は真中の一族の者を、食べちゃいたいって思っているんだ」

 そう言った亘先生は、長い腕を伸ばし、私の頭に手を置いた。
 そしてくしゃくしゃと髪の毛が乱れるくらい、かき回すように撫でる。

「でもね、小花。不安になる事はないんだよ。真中様の事はみんなで守っているし、この特別授業は妖滅……つまり、妖魔と戦い倒すための力を得る事を目的とした授業だ。さて、ここで小花に質問です。小花はこれから、どうしたい?」

 どうしたい? そう聞かれて、私が思った事は、ただ一つだった。
 そして多分、その答えは亘先生だけでなく、ここに居る全員が望んでいるもの。

「私は、おじいちゃんたちを守るために、妖滅の事をたくさん勉強したいです!」

 もう一度手を上げてそう言うと、うん、そうだね、と亘先生は頷いた。
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