西園寺家の末娘

明衣令央

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第3章:四家と妖滅

13・武器

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「それ、何?」

 どこからか戻ってきたみんなは、それぞれ武器のようなものを持っていた。
 私の問いに答えてくれたのは、渚ちゃんだった。

「これは、お借りした訓練用の得物……えっと、つまり、武器です」

「武器? 得物って、武器の事だったの」

「はい、そうです。この武器は、霊力が通りやすい造りになっています」

「霊力が通りやすい造り?」

 一体どんな仕組みなんだろうと思ったけれど、きっと術式がどうのとかいう感じなんだろうなぁ。

「小花、さっき使った水鉄砲があるだろ? 水鉄砲は、水の方――霊水って言うんだけど、それを吹きかけることによって、妖気浄化を行っているんだ。この場合、水の方に霊力が込められているから、妖気浄化の霊力がないものでも、妖気浄化を行う事ができる」

 亘先生の説明に、私は頷いた。今の説明は、なんとなく理解できた。でも、

「水鉄砲は、妖気浄化ができる霊力を持つ者が使うと、通常よりも強い効果を得る事ができる。だから、A班での妖気浄化のアイテムにもなっているわけなんだけど、得物……武器の方は、得物に霊力を通す事により、水鉄砲で霊水を吹きかける浄化と同じ効果が得られるんだ」

 こっちの説明はよくわからなかった。
 亘先生が説明してくれたけど、私は首を傾げるばかり。
 とりあえず、得物と霊力があれば、零水って水がなくても、妖気を浄化できるって事でいいのかな?

「霊力って、どうやって使うの? 私も出来るようになりたい!」

「それは……人それぞれだからな。小花は結構高い霊力を持っているから、あとはそれの引き出し方とコントロールだ。焦らずに訓練していこう」

 私にも、高い霊力は、あるのか。
 でも、そんな自覚は全くないわけで、引き出し方とかコントロールとか言われても、どうすればいいのかと不安になるだけだった。
 すがるように隣に立つちい兄を見たけど、ちい兄は私から目をそらし、

「感覚かな」

 とだけ、小さな声で言う。どうやら上手く説明ができないらしい。
 
「得物かぁ~。どんなの?」

「はい、これです。私は、手裏剣と苦無をお借りしてきました」

 そう言って渚ちゃんが見せてくれたのは、時代劇に出てくる忍者が投げるような手裏剣と、細長い両刃のナイフみたいなものだった。
 他のみんなは、真紀ちゃんが薙刀、茉莉花ちゃんが弓、武くんが、ナックルっていうらしい、指輪が繋がったようなもの、厚くんがバットを選んでいた。
 バットも武器なの? と心の中で突っ込んだんだけど、厚くんは茉莉花ちゃんのそばで、野球少年のように普通に素振りをしている。

「いいなぁ。私も使ってみたいなぁ~」

「駄目だ! 使った事ないやつが使ったら、怪我するだけだ!」

 やはり、ちい兄は許可してくれなかった。

「渚たちは、ガキの頃から得物を扱う訓練を受けてるんだよ。お前は、武器ななんて触った事ないだろ? 興味本位で触って、怪我するだけだ!」

「え~……」

 私が得物を使うには、本当にちい兄の許可が必要なのだろうか?
 ちらりと亘先生を見ると、亘先生は困ったように笑い、言った。

「まぁまぁ、小花は千隼の言う通り、武器なんて使った事ないだろ? 今回は、みんながやるのを見学しておいたらどうだい?」

 亘先生がそう言って、多分宥めようとしてくれたんだと思うけどーー今の私には、残念ながら、それは逆効果だった。
 亘先生の言葉は、ちょっと、いや、かなりショックだったのだ。
 だけど私は、亘先生が言った通り、みんなが得物ーー武器を持って妖気浄化をするのを見る事にした。
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