78 / 126
第5章:闇
20・西園寺家ってどんなとこ?
しおりを挟むごはんを食べた後、私はゆう兄を連れて、自分の部屋に向かった。
多分、おじいちゃんもおばあちゃんも叔父さんも、ゆう兄から西園寺家での生活の事とかを聞きたかったんだろうけど、いい具合に昌央が邪魔をしてくれて、聞けなかったみたいだ。ちっちゃい子って、最強だと思う。
ゆう兄も西園寺家の事をおじいちゃんたちに言いにくそうな感じがしていたんだけど、私と二人になると、ほっと息をついた。
「ゆう兄、おじいちゃんたちに西園寺家の事を聞かれるの、嫌なの?」
小声でそっと聞いてみると、ゆう兄は苦笑しながら、うん、と頷いた。
「そうだね、嫌って言うか、困るかな。僕は確かに真中家の孫でもあるんだけど、西園寺家の人間だからね。西園寺側では、真中家に知られたくない事っていうか、真中家に知らせる必要がない事っていうか……そういう感じの事があるんだよ。だから言わない方がいいかなってね。まぁ、みんな考え方は違うから、こんなふうに思っているのは、僕だけかもしれないけど」
これって西園寺家で育った人の考え方なのかな、と思ったけれど、多分四家の人間としての考え方なんじゃないかなって思った。
四家にとってそれだけ真中家っていうのが特別って事なんだろうけど、ゆう兄は家族なのに、こういう考え方が染みついちゃってて、ちょっと寂しい。
おじいちゃんなんか、ちょっと怒ってたもんね。
西園寺のジジイって……おじいちゃんもジジイだよって、突っ込みそうになったよ。
「ゆう兄、あのね、私、いろいろと聞きたい事があるんだけど……教えられる範囲でいいから、私の知らない事を教えてくれないかな」
そうお願いすると、ゆう兄は少し首を傾げた。
「えっと……僕の教えられる範囲でいいのかい?」
「うん、それでいい。ちい兄も、大樹さんも、みんな私に何か隠している事があるみたい。多分、だから、ゆう兄の答えられる範囲でいいから、私の知りたい事を、教えてほしい」
私がそう言うと、わかった、とゆう兄は頷いた。
「じゃあね、西園寺のお家の事、教えてほしい。私、何にも知らないの」
「西園寺家の事か……そうだね、西園寺家は、周央学園の西にあるよ。すごく大きいお家でね、庭もとても大きい。地下には、トレーニングルームもあるんだよ」
「わぁ、本当にお金持ちなんだね」
「うん、そうだね。確かにお金持ちだと思うよ。どのくらいのお金が家にあるのかは、知らないけどね。あとね、四家は、周央学園を真ん中にして、東西南北にそれぞれの本家があるよ。分家も、だいたい本家の敷地内か、近くに住んでいるんだよ」
という事は、渚ちゃんちは、西園寺家の近くにあるっていう事なのかな。
「西園寺家の本家には、今は西園寺のおじい様と、僕、麗華、千隼が住んでいる」
「え? 大きなお家に、四人だけなの?」
「えーと、正確に言うと、今西園寺の本家に住んでいる人間が、四人だけって事。敷地内には分家の人たちが住んでるし、西園寺家で雇っているメイドさんやコックさんも住んでるよ。分家の人が僕らの身の回りの世話をしてくれているんだ。浦西の家は、西園寺家と同じ敷地内にあるんだよ。だから、七海や渚の事は、子供の頃から知っているんだ。あの子たちは、僕と麗華の幼馴染って事になるね」
「そうなんだ……って、ちょっと待って! あの人は、一緒に住んでいないの?」
「あの人?」
「お父さんだよ!」
西園寺の本家に、西園寺のおじいさんとゆう兄、麗華さん、ちい兄しか住んでいないって言うのなら、あの人――お父さんは、一体どこに住んでいるんだろう?
「お父さんはね、仕事が忙しいから、西園寺の本家を出て、会社近くのマンションに住んでいるんだよ。おかげで、全然会っていない。ものすごく忙しいんだろうね」
忙しいっていうよりも、それって西園寺家から自分一人だけ逃げ出しているって事なんじゃ、と思ってしまった。
だけどゆう兄はそうは思っていないようで、お父さんは忙しいんだ、お仕事を頑張っているんだよ、と何度も繰り返していた。
ちい兄と違って、お父さんの事を嫌っているわけじゃないみたい。
というか、ゆう兄ってすごく純真というか、騙されやすい人なんじゃない?
ちょっと心配になっちゃう。
「お母さんが亡くなった後、僕と麗華を育ててくれたのは、おじい様なんだ。まぁ、正確にはおじい様の命令を聞いた分家の人たちなんだけどね。僕も麗華も、浦西家の人たちにはとてもお世話になったんだ」
「あのね、西園寺のおじいさんって、どんな人? ものすごく怖い人なんでしょ?」
「そうだね、すごく……厳しい方だね。でも、優しい方でもあるんだよ」
「そうなの?」
すごく自分勝手で横暴な人だと思っていたんだけど、本当なのかな?
そんな気持ちでゆう兄を見つめると、本当だよ、と言ってゆう兄は苦笑した。
「確かにものすごく怖くて、麗華は西園寺のおじい様の事を大っ嫌いって言ってる……。でもね、おじい様は僕や麗華、千隼、お父さんを、そして西園寺家を、必死に守ってくれているんだよ。たくさん苦労もされているんだ」
ゆう兄はそう言ったけれど、私はすぐに信じる事ができなかった。
だって、跡継ぎの事にしろ、結婚の事にしろ、西園寺のおじいさんが何でも決めているんだよね。
ちい兄や麗華さんを……もしかするとゆう兄だって、西園寺のおじいさんにいろいろと苦しめられているんじゃないの?
1
あなたにおすすめの小説
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】“自称この家の後継者“がうちに来たので、遊んでやりました。
BBやっこ
恋愛
突然乗り込んできた、男。いえ、子供ね。
キンキラキンの服は、舞台に初めて上がったようだ。「初めまして、貴女の弟です。」と言い出した。
まるで舞台の上で、喜劇が始まるかのような笑顔で。
私の家で何をするつもりなのかしら?まあ遊んであげましょうか。私は執事に視線で伝えた。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる