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第三章:それぞれの思惑
50・挨拶
しおりを挟む互いを見つめて笑い合う恋人たちを見て、オウンドーラ王は次の策を練り直さなければと考えていた。
フェンリルとベルが恋仲になっていたとは、想定外だった。
この展開では、先程考えたコールド伯爵家次男のアランとベルの結婚の件を、言い出す事ができない。
だが、ギルベルトは姪のベルをとても大切に想っている。
だからこそギルベルトは、ベルの身柄を危険な東の森の第一砦から、この王都オフレンドに移そうとしたのだ。
フェンリルは傭兵だ。つまり、彼のそばに居るという事は、ベルの身に危険が及ぶ事もあるだろう。
だから、いくらフェンリルとベルが好き合っていようが、ギルベルトがフェンリルとベルの仲を反対する可能性がある。
もしもギルベルトが二人の仲を反対すれば、改めてアランとベルの話を持ち掛けてみよう。
考えがまとまったオウンドーラ王は、ちらりと視線をトマスへと向けた。
貧弱なトマスはまだタイラーに床へと押し付けられたまま、じたばたと足をばたつかせる事しかできないらしい。
先程の言動から、オウンドーラ王は、トマスは本当にクズだと思った。
しかもおまけに体も貧弱で、大した仕事もしていない、役立たずだ。
だが、今となっては、それでいい。
トマスがクズで役立たずな分、兄であるアランの良さがより引き立つだろう。
「ギルベルトさん……」
フェンリルがギルベルトに声をかけた。
ギルベルトはずっと、フェンリルとベルを見つめていた。
「ギルベルトさん、頼みがある。俺は、ベルを愛している。だから、ベルを俺にくれ。何があっても、俺はベルを守って共に生きていくから」
「ギルベルトお父さん、私からもお願いします。私も、フェンリルさんを愛しています」
真剣なフェンリルとベルの言葉を聞いて、ギルベルトは二人を見つめたまま、黙って考え込んでいるようだった。
その様子を見ながら、オウンドーラ王は、拒め、拒め、と何度も思った。
「ベル、その男は傭兵だ。そばに居れば、危険な目に遭う可能性もあるぞ」
「構いません! だって私は、森の砦での生活が、大好きだから! それに、フェンリルさんと一緒に居られるのなら、私はどこででも生きます。この人のそばで、彼と共に生きていきたいの」
ベルの言葉を聞いて、ギルベルトはまた考え込んだようだった。
ベルはフェンリルを望んではいるが、やはりギルベルトは首を横に振るだろうとオウンドーラ王は思っていた。
だがーー。
「あぁ、わかった」
と、ギルベルトは頷いた。
オウンドーラ王は耳を疑い、目を見開いた。
「あぁ、わかった。フェンリル、ベル、私は二人を祝福しよう。ベルがフェンリルを望むのなら、私はその望みを、全力で叶えよう」
ギルベルトはフェンリルとベルを見つめ、そう言うと深く頷いた。
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