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最終章:国の終わり、そして始まり
65・家族との別れ
しおりを挟む一部の国民たちが傭兵たちと共に王都オフレンドを去ってから、三日が経った。
「東と西の森の砦から傭兵たちが居なくなっても、何も変わらないじゃないか」
「ここを出て行った奴らは、きっと傭兵たちに騙されたんだな! 馬鹿な奴らだ!」
普段通りの生活を送っていた王都オフレンドの国民たちは、そう言うと笑い合った。
オウンドーラ王が言う通り、傭兵たちが居なくなったとしても、まだ王立騎士団が居る。
王立騎士団が守っているのだから、この王都オフレンドは安全なのだ。
傭兵たちが出て行って一週間ほど経つと、誰もトマスの事を気にしなくなった。
それどころか、ギルベルト・ガンドールの方がトマスやコールド伯爵家を騙していて、それが明るみに出たから逃げたのではないかという話まで出始めた。
それを聞いたトマスは国民たちに話を合わせ、悪いのは全てギルベルトで、彼が自分にやってもいない罪を着せ、他の傭兵たちと共に、一部の国民たちを騙して出て行ったのだと言い回った。
「父さん、母さん、ウォルト兄さん、僕たちの疑いが晴れて良かったね!」
己の悪事の全てがギルベルト・ガンドールのものになった頃、トマスは両親と長男のウォルトに笑顔で言った。
「国民たちが、ギルベルトが全部悪んじゃないかって言い出したから、僕が補足してそういうふうに仕向けたんだよ。これで、もう僕らを悪く言う奴は居ないし、今まで通り穏やかに暮らしていけるね」
そう言ったトマスを、ウォルトは呆れたように見つめた。
「お前のその能天気さが羨ましいよ。でも、改めて思った……お前は本当に、今後この国がどうなっていくのかが、わかっていないんだな」
「ちゃんとわかっているさ。今まで通りに暮らしていけばいいんだよ。ほら、傭兵たちが居なくなっても、魔物たちは襲って来ないじゃないか。この国も僕らも、これまで通りなんだよ」
ただ、僕のそばには、愛するベルは居ないけれど。
トマスはその一言だけは口にしなかった。
ベルはあの馭者の男と共に王宮から姿を消して、それっきりだった。
だけど、トマスは待っていれば彼女は戻ってくるものと思っていた。
だって、これからは元のように暮らしていけるのだから。
「トマス、私たちは、アランの居る第二砦を手伝いに行く事に決めたよ。屋敷の使用人たちには、みんな退職金を支払って辞めてもらった。お前はどうする? 一緒に来るか? それとも、王都オフレンドで生きていくか?」
「え? どういう事? 手伝いって、父さんやウォルト兄さんだけじゃなく、母さんもなの?」
「えぇ、お母さんも行くつもりよ。あっちで雑用の手伝いをさせてもらうつもりなの」
「コールド伯爵夫人が、何故?」
トマスの反応に、エドモンドは深い息をついた。
「やはり、何も理解していないのだな」
「どういう事? 父さんが何を言っているのかはわからないけれど、僕はこの王都オフレンドで暮らしていくよ。あの屋敷で暮らす事にする」
「そうか、わかった。お前は自由に生きていけ」
「うん、そうするよ。じゃあ、アラン兄さんによろしくね」
トマスはそう言って、家族をアランがいる第二砦へと送り出した。
トマスは、家族はただアランの様子を見に行っただけで、すぐに戻ってくるものだと思っていたのだが、これは彼らの命を懸けた贖罪で、今のやりとりが家族との最後の会話になる事になるのだが、トマスはそれに最後まで気づく事はなかった。
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