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第1章:二度目の恋と初恋と
7・ハイスペックの恋敵
しおりを挟む「古城、大丈夫か?」
と彼女に声をかけて、尊は目の前の細身の青年を睨みつける。
尊と同じように、青年も尊を睨みつけていた。
「誰だ、お前は」
「俺は、あ……古城の担任の先生だよ! お前こそ、誰だ!」
そう言いながらも、この青年が聡言っていた男なのだろうと尊は思った。
目の前の細身の青年は品の良いスーツ――おそらく有名ブランドなのだろう――を見事に着こなしている。
多分、王子様系と呼ばれる美形なのではないだろうか。
だが、灯里は見るからにこの青年に怯え、拒絶していた。
「僕は、安藤当麻……いずれ灯里の夫となる男だ」
「夫?」
どういう事だと、尊は灯里を振り返る。
灯里は尊を見上げたまま、必死に首を横に振った。
「あのお話は、父からそちらのお父様へと正式にお断りしたはずです! あのお話は終わったはずです!」
「あぁ、断られてしまったね。だけど僕は、どうしても君を諦めきれないんだ。僕という人間をちゃんと知ってもらえれば、君は必ず僕を選ぶはず……だから今日、僕という人間を君に知ってもらうために、君をデートに誘いに来たんじゃないか」
「だから、もうお断りした話なのにっ!」
二人の会話から、正式に灯里の父親が断った事により、当麻の求婚の話は終わっているはずだが、当麻だけが灯里を諦めきれずに彼女の元へと現れたという事を尊は理解した。
そして灯里が嫌がっている以上、当麻の存在が彼女にとって良くないものだと認識する。
「古城は嫌がってるぞ。アンタもいい大人なんだから、しつこく言い寄るのはやめろよ」
「安月給の教師ごときが何を言う。灯里と僕は結ばれる運命にあるんだ。身分も家柄も、互いに申し分のない最高のカップル……いや、僕達は最高の夫婦になるんだ……」
「い、嫌ですっ……私は、私にはっ……」
震えながら尊のシャツを掴み、灯里が言った。
振り返ると、彼女は俯いて必死に首を横に振り続けていて、泣いているのだろう、ぱらぱらと雫がアスファルトに落ちる。
尊は当麻に視線を戻すと、灯里の姿を当麻から完全に隠すように立ち、言った。
「コイツ泣いてるからよ……とりあえずアンタ、今日は帰ってくんねぇか」
本当なら二度と灯里に近づくなと言ってやりたかった。
だが、尊はそれを堪え、なるべく冷静に言葉を発した。
二度と灯里に近づくなと言って、逆上されたら堪らない。
灯里に対するこの男の行動がさらにエスカレートする可能性だってあるのだ。
「わかった。では、今日のところは引き下がろう。じゃあね、灯里」
当麻はそう言うと、運転手付きで待たせていた車に乗って、大人しく帰って行った。
当麻が乗って去っていった車を見つめながら、もしも自分が近くに居なければ、灯里は無理やりあの車に連れ込まれていたのではないかと思い、尊はゾッとした。
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