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第1章・異世界転移と異世界転生
二人のオリエ①
しおりを挟む「これ、どういう事?」
タップしたスマホ画面に映し出されたのは、ベッドで眠っている私の姿だった。
スマホ画面に映る私は、体にいろんな管をつけられ、包帯を巻かれて眠っていた。
この場所はどこ? 病院ぽい?
でも、本当に一体どういう事?
私、こんな怪我した覚えないんだけど?
「これは、君?」
ユリアナ王女の問いに、私は頷いた。
「そう、みたいですね」
「君は今、ここに居るのに?」
「そう、ですよねぇ」
私は今、この異世界に居るというのに、スマホ画面に写っている私は、病院らしきところで、包帯を巻かれて眠っている。
「サーチートくんのお腹の黒い板は、どういう仕組みなんだろう? 占い師の水晶玉みたいな物なのだろうか?」
アルバトスさんがそう言って、サーチートの小さな手足をチョンチョンと突いている。
私はアルバトスさんに、
「そうです。占い師の水晶玉みたいに、いろんなものを映し出してくれるものです」
と説明をした。
適当だけど、いろんなものを映し出してくれるから、なんとなく合ってるんじゃないかな。
「これはね、元の世界のオリエちゃんの、今の姿なんだよ」
ひっくり返ってお腹のスマホを見せたまま、サーチートが言った。
「どゆこと?」
「あのね、オリエちゃんは今、元の世界とこの世界の両方に存在しているんだよ。ただ、元の世界のオリエちゃんは、大怪我をして、意識不明の重体みたい」
「え? 私、生きてるの? でも、この世界に召喚される条件って、元の世界での死なんじゃ……」
そう言ったのは、あのジュニアス王子の側近の男だ。
確か、赤茶の髪に薄い水色の瞳をした、魔法使いっていうか、賢者っぽい人で、召喚の儀式の術者で責任者らしかった。
その彼が召喚される条件が元居た世界での死なのだから、私は元の世界には戻れないと言い切ったのだ。
「その辺りは、ぼくはまだよくわからないけど、元の世界のオリエちゃんは、まだ生きているよ」
「じゃあ、元の世界に戻れるの?」
そう尋ねると、サーチートは困り顔になった。わからない、と言う。
「ごめんね、オリエちゃん。ぼくにはまだ、オリエちゃんを元の世界に戻してあげる方法がわからないんだ」
「そうなの?」
「うん。でも、こちらの世界で動けるようになったから、いろいろと調べてみる。オリエちゃんが元の世界に戻りたいっていうのなら、その方法を探すよ」
「サーチート、ありがとう!」
健気なサーチートに、私は心から感謝した。
彼の小さな体へと手を伸ばし、ぎゅっと、抱きしめる。
私が抱きしめると、ふわふわのふいぐるみの感触になるのだから、この子はとても不思議だ。だけど、可愛くてとても良い子だ。
サーチートは自分も私へとすり寄ってきた。そして私の腕の中で、でもね、と言葉を続けた。
「でもね、オリエちゃん。ちょっと辛い事を言うんだけど、オリエちゃんは、すごい怪我をしているから、いつ死んでもおかしくないのかもしれないんだ。ぼく、頑張ってオリエちゃんが元の世界に戻れる方法を探すけど、その事は、ちょっと頭の中に入れておいてほしいんだ」
私は先程サーチートのスマホに映し出された、包帯だらけの自分の姿を思い出した。
確かに、見るからに重傷だった。いつ死んでもおかしくないのかもしれない。
つまり、サーチートは元の世界に帰る方法を探してくれると言っているけれど、間に合わない可能性があるという事だ。
例え間に合わなくても、頑張ると言ってくれたサーチートの一生懸命な気持ちが嬉しかった。
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