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第1章・異世界転移と異世界転生

魔結晶②

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「手のひらに魔力を集中させて、形をイメージして、魔力を凝縮して固めるんだ……」

 魔結晶作りのユーリの説明は、それだけだった。
 説明ってそれだけ? て、思わず心の中で突っ込んだけど、多分ユーリは説明が下手なタイプなのだろう。

「試しに作ってみるから、見てて」

 そう言ったユーリの褐色の手のひらを見つめていると、その手のひらに、ぽわんと淡い緑色の光が灯ったように見えた。
 それから淡い緑の光はどんどん色が濃くなっていって、ユーリの手の中で高さ三センチくらいの三角錐の結晶体になった。これが、魔結晶らしい。

「緑色なんだね」

 と言うと、

「私は、風魔法が得意だからね。風属性の色が出たのだと思う」

 とユーリは言った。

「得意な属性ってあるの?」

「あぁ、あるよ。私は炎も地の呪文も得意な方かな。伯父上は、水と風、地の属性が得意だし」

「そうかぁ」

 私にも、得意な属性っていうのがあるのかな。
 そんな事を思いながら、ユーリに言われた通り、魔結晶を作る。
 すると、小さいけれど案外簡単にできてしまった。
 もしかして私、すごいんじゃない? と興奮気味に言うと、すごいね、とユーリも驚いているようだった。

「でも、色がないねぇ」

 私が作った魔結晶は、無色透明の三角錐だった。

「本当だ……魔結晶は、色が濃いほど上質って言われているんだけど、オリエ
のは色がないね」

「じゃあ、もしかして、失敗作って事? 使えない?」

 ユーリは少し考え込み、私の作った魔結晶をまじまじと見つめ、首を横に振った。

「いや、違う……とても上質な物だと思うよ。色がついていないのは、聖女の魔力のせいじゃないかな。その……穢れてなく透き通っていて、とても綺麗な魔結晶だ……」

「穢れてない……」

 以前のサーチートの会話を思い出し、少し複雑な気持ちになる。
 でも、上質な物ができているのなら、安心した。

「魔結晶の種類にはこだわらなくてもいいの?」

「あぁ、構わない。今回は戦闘に使うわけでもないからね。種類にはこだわらなくていいから、量が必要なんだ」

「うん、わかった」

 どのくらいの魔結晶が必要なのかはわからないけれど、今の私は魔結晶を山ほど作ればいいという事なのだろう。
 ステータスによれば、私の魔力は無限なのだそうだ。
 それなら、たくさん作れるはずだ。

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