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第1章・異世界転移と異世界転生
それはとても素敵な事①
しおりを挟む「ユリウスくん、オリエちゃんの事が好きなの?」
「え?」
突然何を言い出すのかと私は驚いたが、質問されたユリウスも同じだったのだろう、見上げた彼は一目でわかるくらい赤面し、「あぁ、好きだよ」と頷いた。
いつの間にか、私たちの周りに村の人たちが集まってきていて、ユリウスの言葉を聞いて、「おおっ!」と声を上げる。
「オリエちゃんはどう? オリエちゃんも、ユリウスくんの事が好きなの?」
みんなの注目を集めて恥ずかしくなった私は、もう止めてと叫びそうになった。
だけど、こんなに周りに大勢の人たちがいるというのに、子供なのか、空気が読めないのか、サーチートは止まらなかった。
「私も、ユリウスの事が好きだよ」
私が頷くと、サーチートは目を輝かせ、
「なんて素敵なんだろう!」
と叫ぶように言った。
「オリエちゃん、これはとても素敵な事だよ! ぼくが言っている事、わかる?」
「サーチート、それは、後から聞いちゃダメかな? 今じゃないとダメなのかな?」
この子は、とんでもない事を口走るのではないだろうか。
口を塞いで止めようと思ったけれど、今サーチートはアルバトスさんの腕の中で、私には止める事ができなかった。
「オリエちゃん、前のオリエちゃんには、愛する人が居なかったでしょ。だからオリエちゃんは清らかなまま、強い魔力を持ってこちらの世界に来る事ができたんだ」
「ちょっ……サーチート!」
ドコが清らかなのかは言ってはいないけれど、大勢の人たちに注目されて、恥ずかしくて仕方がない。
だけど、私の恥ずかしい気持ちに気付く事ができないサーチートは、さらに続ける。
「でもね、オリエちゃんに愛する人ができて、オリエちゃんとその人が結ばれたとしたら……それはオリエちゃんの力を、もっともっと強くするんだ。愛の力って、とってもすごいんだよ。だから、オリエちゃんに好きな人ができた事が、ぼくは本当に嬉しいし、素敵な事だと思っているんだよ」
「サーチート……」
いろいろとぶちまけられちゃった気分でもあるけれど、サーチートは私とユリウスを祝福してくれているだけのようだ。
それなら今、私がサーチートに言うべき事はお礼かなと思って、
「ありがとう、サーチート」
と言うと、ユリウスが私の腰を優しく引き寄せ、言った。
「サーチート、オリエを必ず幸せにするからね」
「うん、ユリウスくん、オリエちゃんをよろしくね!」
感極まったのか、サーチートはつぶらな黒い瞳を潤ませていた。
なんとなく、「お嬢さんを僕にください」みたいな感じになっている気がする。
でもまぁ、サーチートは私の家族みたいなものだもんね。
この流れだと、私はアルバトスさんに何かを言うべきなのかもしれない。
アルバトスさんへと視線を向けると、アルバトスさんはサーチートを抱っこしたまま、穏やかに微笑みながら私たちを見つめていた。
何も言わなくてもいい、わかっている、と言ってもらっているようだった。
「ユリウス様、オリエ様、とってもお似合いですよ!」
「えぇ、お二人とも、とても素敵だわ!」
「おめでとう、良かったですね!」
大勢の人に祝福されて、幸せだなぁと思った。
自分の隣に誰かが居て、私を大切にするって言ってもらえて、それを大勢の人に祝福してもらえる日が自分に来るなんて、信じられないような事だった。
「あ、ありがとうっ……」
思わず私は涙ぐんでしまった。
それを見たサーチートが、名案を思い付いたと目を輝かせる。
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