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第3章・冒険者デビュー
え? 冒険者?②
しおりを挟む「実はアタシ、あと少しでBランクになれる、Cランク冒険者なのよ」
「本当? すごいね! あのね、ユリウスくんも、この間Cランクになったんだよ! じゃあ、二人とも次に目指すのはBランクだね! 早く上がれればいいね!」
きらきらした目で、サーチートはリュシーさんを見つめたけど、リュシーさんは首を横に振った。
「アタシ、Bランクには上がるつもりはないのよ。Bランク以上の冒険者となると、ギルドの依頼を強制的に受けなきゃいけない時があるからね。アタシは店もあるから、わざとBランクには上げてもらっていないのよ」
へぇ、そんなシステムになっているんだね。
ちらりと隣に居るユリウスを見ると、
「俺も絶対に上げないでおこう」
と呟いていた。
でも多分、ゴムレスさんが強引に上げようとするんじゃないかと思うんだけどね。
「だからアタシは、ギルドの依頼はあんまり受けずに、狩った魔物の解体や、自分が要らない素材だけを引き取ってもらってるんだよ。今、ちょうど新しい素材が欲しくてね、お金も貯めたいからさ。だから、暫くはこの店をガレアスさんたちに任せて冒険者稼業を復活させるよ」
新しい素材っていうのは、糸の事らしい。
アイアンスパイダーとか、スティールスパイダーとかシルクスパイダーとか……とりあえず蜘蛛の魔物から特殊な糸が採れるらしいんだけど、私は虫が苦手だから、ちょっと無理かも。
「あと、そろそろジルと結婚しようと思ってねぇ……」
「えー! おめでとうございます!」
「ありがと! でね、その資金を貯めたいんだよね」
リュシーさんは、ジルさんと結婚するにあたり、このスタイリッシュ・アーマーの近くに、家を買うか借りるかしたいらしい。
スタイリッシュ・アーマーはリュシーさんの店だけど、ここにはリュシーさんの他、ガレアスさんとソフィーさん夫婦も住んでいる。
ガレアスさんの足の事もあるし、リュシーさんが居ない間は二人に店を任せている関係で、自分がここを出て別の所で生活をする事を考えているのだそうだ。
「この事は、まだガレアスさんたちには内緒なんだ。気を遣わせちゃうしね、全部決まってから話そうと思ってる……。アンタたちも、内緒にしてよね!」
「わかりました!」
「ところでさ、ユリウス、アンタたち、アタシに付き合ってスパイダー狩るの、手伝ってくんない?」
「うーん、俺は別にいいけど……」
チラリと私を見るユリウス。
うーん……私は虫が駄目だけど……ユリウスが行くなら、ついて行くよ。
ただし、お手伝いはできないかもしれないけどね。
「今、ネーデの森は、ゴブリンが溢れてるぞ。リュシーが欲しいスパイダーって、どこにいるんだ?」
「ネーデでもゴヤでも、わりとどこにでもいるわよ。森の奥の方のでかい木のとことか、洞窟のとことかが多いわね」
「奥の方か……どうせいろいろ回るつもりだから、一緒に行くか。でもその前に、俺たち、行きたい所があるんだ」
「どこだい?」
「魔法屋。どの辺りにあるか、知っていたら教えてほしい」
「魔法屋かぁ~。OK、案内してあげるよ。アタシもちょっとクラウドさんに聞きたい事あるし」
魔法屋さんは、クラウドさんというらしい。
案内してくれると言うリュシーさんに連れられ、私たちは魔法屋を営むクラウドさんという人の元へと向かう事にした。
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