僕らのカタチ

緋影 ナヅキ

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執着

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 執着という名の愛か、愛という名の執着か。
 

 “卵が先か鶏が先か”

 それはまるで、そんな何処かで聞いたような、正解のない問いで。この想いがどちらなのか、もはや自分自身にすら分からない。



 僕らは狂っている。


 この状態が、関係性が、気持ちが。
正常なモノで無いことぐらい、今の僕だって理解はしている。

 だが、今まで生きてきた十数年間のなかで、この状況が1番幸せだと感じるのだ。


 例え、愛しい彼が僕に手錠と足枷をしてきても。
 例え、この窓の無い部屋に監禁されているとしても。


 包丁を片手に、そんな僕に近づいて来ているとしても。

 仄暗い狂気の感じられるその瞳を見て「あぁ、彼は僕と無理心中する気だ」と、悟ったこの瞬間でも。



「君と2人きりで永遠に過ごせる方法を、この10日間ずっと考えていたんだ」

「そう…。それで、その方法は考えついたの?」

「あぁ、勿論だよ」

そう言って彼は微笑む。
それは、見る者誰もが見惚れるであろう甘く蕩けた笑みで。
それを僕1人が独占している事に、ひどく心が満たされる。

「君を俺の手で殺し、その後俺は君の手で殺される。そうすれば、お互い死んでも離れられないはずだ」

「えぇ、そうかもね。けれど、貴方に殺された後、僕はどうやって貴方を殺せばいい?僕は貴方の手によって、既に死んでるのにさ」

「大丈夫、一撃で殺すわけではないからな。痛みは長く続くことになるが、失血死にするつもりだ。それならば、君も俺のことを刺せるだろう」


 僕と彼は話す。
 いつもの何気ないやり取りの時のように笑い、会話を楽しみながら。

 思考の隅で、会話の内容と態度が酷く矛盾していると、もう1人の僕がそう指摘する。しかしそれを無視し、彼と最期の会話を続ける。


 あぁ、何時いつからだろうか。窒息死しそうな程重い、彼からの想いが丁度いいと思うようになったのは。

 きっと、それは僕がまだ“私”だった頃。


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