8 / 138
第2話
しおりを挟む生徒会室を後にして少し経った頃。無駄に広く綺麗な校庭(もはやちょっとした草原)を進んで行くと、まるでどこぞの屋敷のように豪華な建物が見えてきた。
これは学園生徒が暮らす白薔薇寮。白薔薇とあるように、全体的に白を基調とした美しい建物だ。
1階には食堂とスーパー、大浴場があり、2、3階には1~3年のC組が、4、5階には同じく1~3年のB組、6、7階には1~3年のA組、8、9階には1~3年のS組、最上階の10階には役持ちが住む。
基本2人一部屋なのだが、最上階に住む役持ちの生徒は広い部屋を1人で使える。どこの部屋にもキッチンやダイニング、リビング、脱衣所や浴室、各寝室…等々がついており、下手なマンションの一室よりも充実している。
因みに俺は生徒会会計なので、勿論最上階の住人だ。
また補足だが、白薔薇寮から少し離れた(とはいっても徒歩15分はある)場所には教師達が暮らす黒薔薇寮がある。そこも基本的な構造は白薔薇寮と変わらない、らしい。
閑話休題。
さっさと寮内に入り、専用エレベータで最上階へと向かう。驚くほど静かなエレベーターは、数十秒もしないうちに目的地へ到着した。そこから廊下の最奥に位置する自室へと歩く。
1020室─それが俺に与えられた部屋だ。
一応部屋番号を確認してから、万能な生徒カードをドアに翳す。ピッと機械的な音が鳴り、ロックが解除された。速やかにドアを開け、スルリと内側へ入り込む。
施錠音がした途端、俺は常に浮かべていた笑みを消した。
外にいると、常に笑顔を貼り付けていないといけない。そのため、本来デフォが無表情な俺としては結構疲れる。
まぁ、嫌われないためにはしょうが無いがな。そのままの俺を好きになってくれる人なんて、もうこの世に決して存在しないのだから。
……さぁてと、仕事するか。
私用のパソコン(学園用)の電源を入れ、作業に集中し始めた。
要らぬこの感傷を振り切るために。
カタカタカタッ
作業が一段落し、何気に時計を見るとあれから3時間経っていて、もう8時になっていた。
まだ夕飯は食べていないが、食堂はもうすぐで閉まる時間だ。仕方ないので、自室にあるキッチンで簡単なものを作ることにした。俺も名家に生まれたが、乳母に仕込まれているので、ある程度の家事は普通の同年代の人よりも出来る方だからだ。
冷蔵庫を覗くと、卵と鶏肉があった。丁度消費期限が近づいてるので、玉ねぎがないが今日はこれを使って親子丼にしよう。あぁ、カサ増しに豆腐もいれるか。
そうと決まれば後は簡単だ。鶏肉に火を通し、豆腐と溶き卵をいれて炒め、感覚で味を付ける。食べるのは俺だけなので、どんな味になっても、生焼けでも、何なら素材そのままでも構いやしない。食べることさえ出来ればいいのだから。まぁ流石に肉類は危ないので、一応1度火は通すが。
そういえば、俺がそう言うと乳母は悲しそうな顔をしてたっけ。だからせめて、料理という形はとっている。
あの人は今頃どうしているだろう。俺のせいで、何か困ってないだろうか。─きっと、大丈夫だよな。だって、あそこには弟がいるのだから。
おっと、考え込みすぎた。
俺は慌ててIHのスイッチを切った。良かった、煮込みすぎてあと少しで吹きこぼれるところだった。
出来上がったのを米の上に乗せ、パソコンの置いてある机に持って行く。マナーは悪いが、作業をしながら夕食をとった。
データ上でもこんなに多いのに、生徒会室にもまだまだ書類があったはずだ。早く片付けないと、更に大変なことになる。今夜は徹夜決定だな…。
思わず遠い目をし、俺はそっとため息をついた。
70
あなたにおすすめの小説
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
和を以て貴しと為す
雨宿り
BL
"山奥に閉ざされた男子校"に入学した平凡な高校生の蓮水和は、周囲の異質さと距離を保ちながらもそれなりの日々を送っていた。
しかし、ひとつの事件に巻き込まれたことを境にその環境は一変する。
問題児の"転校生"と同室になり、クラスの"学級委員"に世話を焼かれ、"生徒会役員"と関わりができ、挙句"風紀委員"に目をつけられてしまう。
乗り越えたい過去と、目まぐるしい今に向き合いながら、和は様々な愛情を向けられるようになり...?
・
非王道学園を目指しながらも、数多の美形たちに振り回されたり振り回したりするひとりの平凡によってお送りするぐちゃぐちゃとした群像劇をお楽しみいただけたらな、という感じのお話。
長くなる予定ですがのんびり更新して行きますので、気に入って頂けたら嬉しいです。
初投稿の為、なにか不備がありましたら申し訳ございません。
2026.01.21▶10話を更新。次は和の視点に戻ります。個人的にとても好きな朔間兄弟を出せてうきうきが止まりません。2章を終えたら近況ボートを書いてみようなどと思っている次第ですが、終わり所を正直まだ悩んでおります。11話も個人的に好きなキャラクターが初登場なんですよね。楽しみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる