73 / 138
第66話
しおりを挟むそういえば、彼らの近くに姿が見えないが、柳瀬クンと一緒にいたあの3人はどうしているのだろう。
そう思い至って更に視線を左側へズラしていくと、横に広くなった席に着いて、食べかけだった残りの昼食を摂っている3人の姿があった。
菜津種クンはガラの悪い顔を更に悪くして、時々柳瀬クンの方を見ては舌打ちらしきものをしている。甘衣クンは変わらずニッコリと微笑み、そんな2人を見て、可哀そうなまでに顔色を悪くした輝所クンはビクビクと怯えていた。ご愁傷様です。
まぁ、そんなことはどうでもいい。副会長の機嫌をこれ以上悪化させないために、柳瀬クンを食堂から教室へと追い出すという、重大なミッションをこなさなければならないのだから。
「ねぇねぇ~、5人で何話してんの~?」
スマホをカーディガンのポケットに仕舞い、そう言いながら近づくと、パッと柳瀬クンが真っ先に振り返った。
俺の姿を認めた彼は口角を上げた。顔には元気そうな、にぱっとした笑顔(恐らく)が浮かぶ。
「あ!!!真琴!!!!!」
「あぁ、何だお前か」
「マコちゃんかー」
「マコちゃんだー」
「ま、こと…」
酷くつまらなそうに一瞥して会長、少し遅れて楓と奏は、視線を柳瀬クンに戻す。慶と柳瀬クンは、何の用かと、近付いてくる俺を見ていた。
「なあなあ真琴、どうしたんだ??!!!!!!」
「ん~、あと10分ぐらいで昼休憩時間終わるよぉ~って言いに来ただけぇ。ほら柳瀬クンはさぁ、今日が転入初日じゃん?でぇ、初日から授業に遅れるわけにはいかないよねぇって」
「確かにそうだな!!!!!!!あ、そういえば真琴ってせふれってやつがいるんだろ!!!!!?龍雅たちが言ってたんだ!!!!!!!」
「会長達がぁ…?」
どこまでも無邪気に、残酷に、柳瀬クンは告げる。
「うんそうだぞ!!!!!!!だからあまり仲良くしない方が良いって!!!!!!」
「そっ、かぁ…」
動揺しながらも顔に貼り付けたヘラリとした軽薄な笑顔は、いつも通り完璧なものだった。
そうか、会長達は本当に柳瀬クンを気に入ったのか。誰彼構わずに、ほぼ毎晩抱いているという噂のあるチャラ男会計を近付けたくないほどに。
「あ、あのな真琴!!!!!!そういうことは、好きな人としないといけないんだぞ!!!!!!!!だってそうじゃないと虚しいだけだろ!!!!!だから全部切ってしまえよ!!!!!!代わりにその分、オレが一緒にいてあげるんだぞ!!!!!!」
「…あはは~、そんなことよりさぁ、早く行かないとほんとぉに遅れちゃうよぉ~」
「あ!!!!!そうだった!!!!!!!!じゃあな!!!!!!」
そう言い残して、一緒に帰るためだろう、菜津種クン達のところに行ってしまった。
それからすぐに騒がしい彼は食堂から出ていった。
更にうるさくなった周囲とは裏腹に、俺達の間には重苦しいほどの静寂が訪れる。
「(…そうだ、副会長に追い出したって、報告、しないと)」
再びスマホを取り出し、メールの返信を送る。その間も会長達は、沈黙を保ったままじっと立っていた。
「ぁ…ね、真琴…。ほ、と…話題……な、に…?」
耐えきれなくなったのだろう、沈黙を破る勇気を出した慶が何事もなかったかのように俺に話しかける。
「あ、やっぱり気が付いたぁ?さっすが慶~!副会長がさぁ、昼休憩時間が終わったらぜぇ~いん生徒会室に来いだって~」
対する俺も、至って普段通りに振る舞う。
何もなかった、聞かなかったことにする。それが、一瞬にして出された答えだった。
「あ?今日は午後授業出るってなってただろ?」
「しかもれいれいが言ったのに」
「食堂に行く条件って言ってたのに」
「「どーして何だろうねー」」
だから会長達も、表面上は何もなかったように振る舞った。腹の中に何を抱えていようと、今はそれが最適解だから。
わいわいといつも通りの会話をしながら、委員長達の真横を通り過ぎる。その刹那、俺にだけ聞こえるよう耳元にボソッと委員長の声が落とされた。
動揺はなく、ただ了承を伝えるために小さく頷く。
そんな応酬があったことなんてまるで感じさせずにすれ違い、俺達生徒会は何も食べずに食堂を出ていった。
69
あなたにおすすめの小説
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる