孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ

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第66話

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 そういえば、彼らの近くに姿が見えないが、柳瀬クンと一緒にいたあの3人はどうしているのだろう。

 そう思い至って更に視線を左側へズラしていくと、横に広くなった席に着いて、食べかけだった残りの昼食を摂っている3人の姿があった。

 菜津種クンはガラの悪い顔を更に悪くして、時々柳瀬クンの方を見ては舌打ちらしきものをしている。甘衣クンは変わらずニッコリと微笑ほほえみ、そんな2人を見て、可哀そうなまでに顔色を悪くした輝所クンはビクビクと怯えていた。ご愁傷様です。

 

 まぁ、そんなことはどうでもいい。副会長の機嫌をこれ以上悪化させないために、柳瀬クンを食堂から教室へと追い出すという、重大なミッションをこなさなければならないのだから。


「ねぇねぇ~、5人でなぁに話してんの~?」

 スマホをカーディガンのポケットに仕舞い、そう言いながら近づくと、パッと柳瀬クンが真っ先に振り返った。
 俺の姿を認めた彼は口角を上げた。顔には元気そうな、にぱっとした笑顔(恐らく)が浮かぶ。

「あ!!!真琴!!!!!」

「あぁ、何だお前か」

「マコちゃんかー」

「マコちゃんだー」

「ま、こと…」

 酷くつまらなそうに一瞥いちべつして会長、少し遅れて楓と奏は、視線を柳瀬クンに戻す。慶と柳瀬クンは、何の用かと、近付いてくる俺を見ていた。


「なあなあ真琴、どうしたんだ??!!!!!!」

「ん~、あと10分ぐらいで昼休憩時間終わるよぉ~って言いに来ただけぇ。ほら柳瀬クンはさぁ、今日が転入初日じゃん?でぇ、初日から授業に遅れるわけにはいかないよねぇって」

「確かにそうだな!!!!!!!あ、そういえば真琴ってせふれってやつがいるんだろ!!!!!?龍雅たちが言ってたんだ!!!!!!!」

「会長達がぁ…?」

 どこまでも無邪気に、残酷に、柳瀬クンは告げる。

「うんそうだぞ!!!!!!!だからあまり仲良くしない方が良いって!!!!!!」

「そっ、かぁ…」

 動揺しながらも顔に貼り付けたヘラリとした軽薄な笑顔は、いつも通り完璧なものだった。

 そうか、会長達は本当に柳瀬クンを気に入ったのか。誰彼構わずに、ほぼ毎晩抱いているという噂のあるチャラ男会計を近付けたくないほどに。


「あ、あのな真琴!!!!!!そういうことは、好きな人としないといけないんだぞ!!!!!!!!だってそうじゃないと虚しいだけだろ!!!!!だから全部切ってしまえよ!!!!!!代わりにその分、オレが一緒にいてあげるんだぞ!!!!!!」

「…あはは~、そんなことよりさぁ、早く行かないとほんとぉに遅れちゃうよぉ~」

「あ!!!!!そうだった!!!!!!!!じゃあな!!!!!!」

 そう言い残して、一緒に帰るためだろう、菜津種クン達のところに行ってしまった。

 それからすぐに騒がしい彼は食堂から出ていった。
 更にうるさくなった周囲とは裏腹に、俺達の間には重苦しいほどの静寂が訪れる。

「(…そうだ、副会長に追い出したって、報告、しないと)」

 再びスマホを取り出し、メールの返信を送る。その間も会長達は、沈黙を保ったままじっと立っていた。


「ぁ…ね、真琴…。ほ、と…話題……な、に…?」

 耐えきれなくなったのだろう、沈黙を破る勇気を出した慶が何事もなかったかのように俺に話しかける。

「あ、やっぱり気が付いたぁ?さっすが慶~!副会長がさぁ、昼休憩時間が終わったらぜぇ~いん生徒会室に来いだって~」

 対する俺も、至って普段通りに振る舞う。
 
 何もなかった、聞かなかったことにする。それが、一瞬にして出された答えだった。


「あ?今日は午後授業出るってなってただろ?」

「しかもれいれいが言ったのに」

「食堂に行く条件って言ってたのに」

「「どーして何だろうねー」」

 だから会長達も、表面上は何もなかったように振る舞った。腹の中に何を抱えていようと、今はそれが最適解だから。


 わいわいといつも通りの会話をしながら、委員長達の真横を通り過ぎる。その刹那、俺にだけ聞こえるよう耳元にボソッと委員長の声が落とされた。
 動揺はなく、ただ了承を伝えるために小さく頷く。

 そんな応酬おうしゅうがあったことなんてまるで感じさせずにすれ違い、俺達生徒会は何も食べずに食堂を出ていった。


 



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