87 / 138
第76話
しおりを挟む颯クン達と別れた後、書類を手渡しに十数箇所を回った。この学園は校舎も無駄に広いので1時間以上かかった。
そしてやっと、今目の前にある部屋で今日は最後だ。
19時を過ぎてしまっているが、まぁ目的の人物なら余裕でまだ此処にいるだろう。軽くワーカーホリックだし。
コンコン、コッココンッ
「委員長いる~?」
ノックに遊び心を持たせてみたりしながら、普段通りその人物を肩書きで呼ぶ。
「…誰だ」
「あ、生徒会会計の水無月で~す。というかぁ、委員長なら声で分かるでしょぉ?」
「…早く入れ」
「しっつれいしまぁすッ」
遠慮なく(気分的に)ガラガラと扉をスライドさせて内へ突入した。
久しぶりに見た風紀員室内は、副委員長のおかげで相変わらず清潔に保たれており、各委員の卓上に低めの書類等の束が積み重なっていた。
本当、今の生徒会室とは天と地な程違うな。色々な意味で。
「へぇ~、委員長だけなんだねぇ」
「最終下校時刻はとっくに過ぎているからな。俺はちょっとした残業だ。しかしどうした、お前が来るなんて珍しいな。しかもこんな時間に」
キーボード上で跳ねる指と画面へ向けた視線をそのままに、委員長は声のみを投げかけてくる。どうやら手の離せない作業中に訪ねてしまったらしい、かなり申し訳ない。
ならばより早く用を終わらせなければと、世間話もそこそこに切って今回の本題に入った。
「あはは~、今日の俺はお使いに駆り出されてるんだよ~。今の時期は特に忙しいからねぇ。ということで、はい、これにサクッと印鑑チョ~ダイ☆」
手元に残っていた本日最後の書類数枚をヘラヘラ笑顔と共に委員長に差し出す。
委員長はチラッとそれに視線をやると、視線の先を元に戻して指示を出してきた。
「…残り僅かでこれが終わる。それは此処に置いておけ。そしてお前はソファーにでも座って待っていろ。恐らくそう待たせないはずだ」
「ふぅ~ん…?じゃっ、オコトバに甘えてそうしとく~」
多少積み重なった書類の1番上へ目立つようにそれを置き、今までに何度か座ったことのある馴染みのソファーへ向かう。
「あ、そ~だ!隣部屋のを勝手に使って良かったらさぁ、委員長にコーヒー淹れたげよっかぁ~?俺が淹れるのは何でも美味しいってぇ、会長達のお墨付きなんだよねぇ~」
「そうか、ならば頼もうか」
「何か注文ある~?ミルク多めがいいとかぁ、ホットがいいとかぁ、シロップなしとかさぁ」
「そうだな…あぁ、お前は何が好みだ?」
「え、好みぃ?俺はホットのブラックが好きだけど~…」
何故なのかは分からない。その発言を耳にした瞬間の委員長の瞳には、優しさや安堵等の色が宿っていた。
今日は分からないことが沢山だ。それだけ人間と関わったということなのだろうか。
「なら、それで」
「おっけぇ~!」
新たな疑問をそのままに、一先ずいつも遅くまで頑張っている委員長ために美味しいコーヒーを淹れに行った。
60
あなたにおすすめの小説
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる